性欲には抗えない


***


「…俺って、尻軽だと思う?」

「はぁ?」


カフェオレをストローで吸いながら投げた言葉に、友人が目を見開いた。


「え、何で?伊藤のことすげー大事にしてんじゃん」

「んー、と、思う、んだけど…」

「前も一生懸命デートプラン考えて、二人でピースしてる写真まで送ってきただろ。お前で尻軽だったら、他どうよって話」


俺の恋人が男だと唯一知っている人間であり、良き相談相手。

…なんだが、今の返事は効いた。主に俺の心臓にモロダメージを食らわしてきた。


――――――――――――


目が、覚める。

肌に触れるシーツのような感触と、背中に回されている腕。


「おはよ。智」

「…っ、」


裸のままにこりと笑って見上げてくるのは、俺の恋人ではない。
下半身に残る甘さと疲労感。昨日の快楽。快感。感触。

――――完全に、事後だ。


(…また、やっちまった…)

頭痛を覚え、額に手を当てる。頭を抱えたい。

どうしてこうも性の欲求に抗えないんだろうと思う。

だめだとわかっているのに、首に腕を回され下腹部に触れられ、キスをされてしまえば…もうそこからは言うまでもない。

別にこの目の前の人間に愛情が芽生えたからでもない。

…結局、気持ち良いことがしたかっただけだ。あの瞬間、何でもいいから快感を味わいたくて、それができるのであれば誰でも良かった。


「…あー…、また、」


最低だ。
酷く嫌悪している。こんな自分を心底嫌悪しているのに、いざとなるとどうにも本能に従ってしまう。


『智、大好きだよ』


脳裏に浮かぶ朝陽の笑顔に…ずっと避けていた未来を考え、泣きそうになった。

Fine top Fine
index