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オレとさっくんは家族だ。
執事って枠を越えて、ずっと昔から一緒にいる大切な人だ。
たとえ執事じゃなくなっても、大切な家族だということに変わりはない。
だから、さっくんが幸せなら、それをオレがどうこうできる権利はないんだ。
むしろ、正孝の言う通り、元主人としても、家族としても、全力で喜ぶべきだろう。
「…どうすれば、オレがさっくんに幸せになってほしいって思ってるって伝えられるかな」
むむ、と眉を寄せる。
…さっくんがいなくなったら、ひとりでどうやって生活していこうとかそういうオレだけが困る悩みは後で考えよう。…うん。
「相手が望んでることを言ってやればいいんじゃねーの?」
「…さっくんが、望んでること?」
「そうだ。多分あの執事のことだ。もし桃井の執事を続けたいって思ったとしても、お前に遠慮して言えないかもしれない」
…考えてたことをぴたりと指摘され、う、と怯む。
それから、ふむ。頷いた。
……さっくんなら、確かにオレに黙って悩みを抱え込んでしまいそうだ。
「だから、先にお前から言ってやるってのはどうだ?」
「…オレから?」
「ああ」
あっさりと肯定する頭。
「でも、何を言えば…」
「…例えば、『明日からも一緒にいたいなら、桃井の執事を続けてもいい』…って言う、とか…」
「……っ」
ドキリ、心臓が嫌な音を立てて跳ねた。
「…ぁ、いや。違うな」
「…まさたか?」
黙りこみ、俯いてしまった正孝を、遠慮がちに覗き込む。
ぱちり、
至近距離で目があった。
「……もっと、強めの言い方の方がいいかもしれない」
首を傾げるオレに、不意に思いつめたような表情を浮かべた。
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