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自分より大きくて、少し骨ばった男らしい手。
ほのかに光を帯びているようにその肌は白く、まるで彫刻のように滑らかで、指先は優雅に伸びている。

…それがすんなりとふにゃちんを包み込む感覚に、ひくん、と腰がびくついた。

けど、それ以上に自分がまだまだ子どもなんだということを思い知らされる。

…悔しい。


「…自分で、できる」

「…本当にご自分でできますか?」

「……やれる」


心配そうに、疑わしそうに僅かに低くなる声に、む、と眉尻が上がる。

結局さっくんにしてもらったらいつもと変わらないではないか。
それでは意味がないのだ。



「…さっきはあんなにやってもできなかったのに?」

「…っ、ぅ…」


その言葉に思い出し、悔しさに涙が滲んだ。
きゅ、と唇を噛んで俯くと、慰めるようによしよしと頭を撫でられる。


「申し訳ありません。責めているわけではないのです」

「…っ、うん…それは、わかってる…」


目を伏せ、長い睫毛で瞳に影を作ってしゅんと落ち込むさっくんに、オレも少しだけ素直になって頷いた。


「俺なら…未熟なこの身ですが、実技等により夏空様の御役に立たせていただくことができるかもしれないのに…と、…さみしく…なってしまって…」

「寂しい…?」


後ろから肩を抱き寄せるようにしてぎゅっとしてくるさっくんを見上げながら、どうして、と首を傾げた。


「はい。いつだって俺は…貴方の御役に立つことで、至上の幸福を感じられるのですから」

「…っ、…っ、」


前髪を手で気遣うように上にあげられる。

そこに唇を落としながら柔らかく笑う彼に、…オレは顔を真っ赤にしてこくん、と声もなく頷いたのだった。
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