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テレビをつけると、…恋人らしい二人の男女が映る。
仲睦まじげな様子に、視線を逸らし、睫毛を伏せた。

…すぐに消し、自己嫌悪と下がる気分に唇の端を噛む。


(なんでこのタイミングで、)


「夏空様、…?」


テレビを見るためにここまで運ばせたくせに数秒でやめたオレに対し、ソファーの傍で立っているさっくんが戸惑い、窺うような声音を出す。

熱い身体。
言葉を作ろうとして、喉から変な音と一緒に咳が飛び出てくる。
すう、と難しい呼吸で息を吸い、ゆっくりと吐き出した。


「明日から、命令追加」


大きな真っ黒いテレビ画面を睨むように見据え、その液晶に見える弱々しい自分に苛立ちが募る。さっくんの方は、見ない。


「オレ以外との不必要な会話、接触を禁止とする」


明日は学校がある。
保健室勤務とはいっても、さっくんには不特定多数の人間と対話する機会があるはずだ。


「優しくするのも、笑いかけるのも、甘やかすのもだめだ」


さっくんは男女問わず綿飴みたいに甘くて優しい。
外見だけでも惚れさせやすいのに、同年代の男じゃ考えつかないような気遣いもするから余計に女子達が燃え上がって本気になる。そういう話を何度も何度も耳が痛くなるほど聞いた。


「ちなみに、期限は無期限だからな」


言われる前にまくしたてるように投げる。
見ずに言ったのは、自分の言葉の意味を、それに対する彼の素直な反応を知りたくなかったからだ。

(…たとえ主人だとしても、ここまで執事に強制していいわけがない)

さっくんだって従わないだろう。
流石に不満に思うだろう。

オレの命令なら桃井と結婚もするって言ってた。
でも、それは仮の話だ。実際にそう命令するわけがないってわかってるから言えたとしか思えない。

けど、今オレが言ったのは、引き受ければ明日から”絶対に実行しなければならないこと”で。
もしかしたら、とか、そういう夢みたいな妄想話じゃない。


「……………」


(……ほら、やっぱり)

この部屋にある沈黙が、すべての答えだ。

「な、さっくん、」

言葉を発する前に、笑いを作る。
冗談だよ。って、そう言うために、振り返るためになんてことない表情を作る。
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