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ぎゅ、って一つに纏められた手首を掴む手に力が込められた。


「夏空様の仰る通り、俺もきちんと食べることにします」

「…っ、…?」


耳元で囁く声が、やけに低く掠れて…甘い。


「…――いっぱい食べて、これ以上ないくらい…脳も全身もすべてが蕩けるような体験をさせてあげますね」

「……え」



何故か

さっくんが、まるで赤ずきんを襲う狼のような、

…なんというか、アレだ。


『欲情モード』になっていた。


「さぁ、…食べあいっこ、しましょう…?」


…頬を染め、興奮したような顔をして、いつにも増して色気ダダ漏れになっている。


(い、いやいやいやいや…!!おかしいだろ…!!)


……食べあう、って…何、を…?


ひ、と声が漏れ、本能が危険を察知する。


「…あ、アイスをたべさせあいっこするなら…ソファーでは、できないんじゃ…」


裏返った声を吐きだし、たらたら冷や汗を流しながら、念のために聞いてみた。

どう考えてもご飯を食べるような体勢ではない。


「できますよ」

「…っ、ど、どうやって、ちょ、!ちょ、!?」


しゅるりとネクタイを片手で緩めたさっくんに、頭の上にあるオレの両手を縛られた。


「…っ、や…ッ」


そして躊躇なく首元に顔を埋めてくるさっくんに動揺しまくる。

(やばい。これはもう逃げ場がないし抵抗できないし、色々防御できてない!)

抱き締めてるときみたいにさらさらな髪が頬に触れて、それに吐息がすごい首にかかってる…!!
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