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(…凄い、だなんてちっとも思ってないくせに)
言葉の上だけで言ってんのが丸わかりなんだよ。
「っ、ふざけんな…!」
コイツはきっと昨日の時点で気づいてたんだろう。
俺が流羽に、友達以上の好意を寄せていることに。
デートしてた彼女のことを忘れるくらい、まだ流羽に想いを寄せてることに。
(…さっきから、なんなんだよコイツ…っ!)
きっとあの時に既に心の中で冷笑していたんだろう。
友達って言い訳までして、滑稽なやつだと…内心で笑っていたんだろう。
好きなのか、とか、そのままで満足なのか、とか、
…わざわざ俺を呼び出してまで、そんな知ってもどうしようもないことを聞いてくる理由なんて、他に考えられない。
「…っ、俺のことバカにして楽しいか…!?大体、俺がアイツを好きかどうかなんて、あんたに関係ねーだ…」
「あるよ」
「ッ、なんで、」
怒りと屈辱に塗れた感情のまま叫んだ言葉を遮るようにさらりと肯定され、ぐ、と息を呑む。
…と、
微笑みを浮かべている男の瞳がわずかに翳り、伏せられた。
「…流羽は俺の恋人だから」
「こい…っ?は?!」
(……前、友人って、言ってなかったか?)
確かに、…そう言っていたのを思い出す。
俺の願望でも、夢でもない。
確実に、この男はそう言っていた。
(…どういう、ことだ…?)
…友人って言ったり、恋人って言ったり。
この男が何をしたいのか、全くわからない。
動揺と傷心、戸惑い、色んな感情がごっちゃになる。
「…っ、なら、何、なんで、俺を、」
もしかして、恋人だから手を出すなって、…自分の恋人をそういう風な目で見てる俺に近づくなって、…そう言いに来たのか?
(もしそうなら、なんであの時は…っ)
ぎり、と歯を食いしばり、拳を握る。
ちゃんと言ってくれていれば、俺はアイツに連絡先を聞いたりしなかったのに。
(期待、せずに済んだのに…ッ)
確かに、流羽のコイツを見る目は、態度は…友達と接する”それ”とまるで違った。
だけど、
「…恋人、がいたなんて、しらなかったから…っ、…もし、近づくなって言うなら、…ッ」
「違うよ」
言いたいことがまとまらず、ただこの状況の答えを求めてとりとめなく言葉を零すと、…返ってきたのは否定だった。
「……え…?」
ぽかんとして俯かせていた顔を上げる。
「――っ、」
男と視線が交じり合う。
予想もしなかった男の…表情に、身体の全部の意識を奪われる。
…すると、
その形の整った唇が、弧を描いて
「俺で良ければ、君の初恋…実らせてあげようか」
何の躊躇いもなくそう言った男に、俺は大きく目を見開き
……その悪魔のような誘いに身を乗り出したのだった。
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