18(流羽ver)



***

肚の奥に出された精液が、浅い呼吸をするたびに腹圧で押し出されて尻に零れる。

伝って落ちていく感触に、意識しなくても下腹部が痙攣し、足が少し跳ねてびくびくと身震いしてしまう。

…感じる。まだたくさん肚に残ってる、正樹が出した精液の感触。


「っ、ぅ、ぅ゛、」


できることなら顔を覆って泣きたかった。
そのために動かした両手は紐で縛られているせいで鋭く痛み、更に心が悲鳴を上げる。

愛する人のものじゃない。
今日もまた、…他人のちんちんを挿れられ、欲を吐き出されてしまった。

腸内からコボリと押し出された温かい体液に、嫌悪感が、絶望感が全身を締め付ける。
ピストンされていた感覚が、鮮明に、明確に残っている。

唇が腫れるほどキスをされ続けた舌に混じっている正樹の唾液の味と痺れ、身体を這った手や舌の痕。

正樹と身体を繋げてしまった証拠を、刻み付けられた。

…してはいけなかった。
正樹が、俺を好きだってわかっていたからこそ、…誰よりも吐き出されたくなかった。

肚に残っている体液の温度が生々しい。

正樹に愛を囁かれた分だけ、ちんちんを肚に馴染ませられた分だけ、吐き気が催す。

想いが通じ合ったのだと喜んでキスしてくる顔が、結合部の音を鳴らして俺の感触を楽しむように抜き差しされる感触が、鼓膜に、脳裏に嫌だと叫びたくなるほど焼き付いて離れてくれない。

…確かに、過去一度付き合いはした。

けれど、俺がそういう意味で好きだったことは一度だってない。
結局、好きになれなかった。

…当然だ。

それまでただの友達でしかなかったはずなのに、毎日毎日彼が脅すように迫ってくるのが怖くて付き合ってしまった。それだけの理由だったのだから。

でも、それが彼に勘違いをさせてしまった。

”あの時、本当は好きだったんだろう”と期待した目で見てくる正樹に性器を捻じ込まれ、一方的な愛を押し付けるように腰を振られた。

心は悲鳴を上げてるのに性行為に慣らされた身体だけが勝手にイき、感じているような反応を示す。

まるでこの行為を望んでいるみたいに、恋人同士がする行為のように相手のモノを締め付け、嫌なのに何度もイってしまう。
そのせいで気分を良くして行為を激しくされて、余計に辛かった。

それを、…女の人に…正樹の彼女だったはずのその人に抱き付かれ、身を寄せられながら見ている優さん。


(触らないで、)


嫌だ。


(俺の優さんに、触らないで…っ、)


叫びたい。

いやだ。いやだ。いやだ。いやだ。いやだ。

べたべたと触っている女の人からすぐにでも引きはがして、満たされるほどに彼の胸に顔を埋めたい。

いつもみたいに落ち着く声で囁いて抱き締められたい。

その人は俺の恋人なんだ、そうしていいのは俺だけなんだって叫びたい。


でも、…現実にそれは叶わなかった。


女の人が、俺を見て笑う。
優さんの隣で、勝ち誇った笑みを浮かべている。

『この男は、私のものだ』と。

『正樹にヤられてるこいつは、彼とは何の関係もない…ただの暇つぶしの道具なのだ』と。

男に性器を挿入されて喘ぎながら、…優さんを求めて泣きじゃくる俺に、愉悦と侮蔑を露わにする。

心臓が、ぐちゃぐちゃになる。
引き裂かれる。
刺されて、貫かれて、死んじゃったほうがマシだと思えるような痛みを味わう。


「っ、ぁ゛、…」


涙で滲んで何も見えなくなった視界で、赤子みたいに掠れた声だけが苦痛を示した。
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