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する、と腕を抱くように回された手に引っ張られ、一緒に座らされる。
どうしたらいいかと戸惑いつつ周りを見るが、誰もこっちに構ってくれる状態ではない。


「流羽君が帰ったら、私一人になっちゃうんだよ」

「……うん。ごめん、…わかった」


無理を言って帰れる状況でもないし…空気を壊すのも嫌で、諦めた。
運ばれてくるビールや梅酒たちの注がれたジョッキを手に、各々結構飲んでいて、完全に場が出来上がっていた。
促されるままに、俺もグラスに口をつける。


「流羽君って珍しい名前だよね」

「え、…そう、かな」


ほろ酔い状態でほんのりと頬を染め、上目遣いで見上げてくる瞳に、少し逸らし気味で答えた。
凄い、女子って感じの香りがする。
う、しかもこの角度。

酔っているからか、思った以上に積極的に話しかけてくるんだな。
慣れない。こういうのほんとに慣れない。


「ねぇ、私のこと覚えてる?」

「…あー、と、うん。高橋…さん」


時々学校で話しかけてくれる人だ。
呼んだことがないから、間違ってないかと少し焦った。

今日は髪型とか雰囲気が普段と違うからすぐにわからなかったけど、こうしていると、段々と距離感を思い出してくる。


「良かった。流羽君って自分からは話しかけてくれないから、忘れられちゃってるのかと思ってた」


不安そうな瞳が、期待に変わったのが見えた。
「あのね、それでさ、」と口早に続けられる言葉。


「前、試験の時に消しゴム忘れちゃって、慌ててたら偶然隣の席だった流羽君が何もいわずにさらっと貸してくれたんだけど…覚えてない?」

「……あー、なんと、なく」


一緒に苦い思い出も蘇り、返事が歯切れの悪いものになってしまう。
優さんの前で他の人たちに輪姦されることが多いから、…そういう平和な日常の出来事は上書きされてしまっていた。


「それでね、流羽君って格好良いのに、笑いかけてくれる時にすごいふわふわっていうか、癒されたというか、好きだなって…」

「………あ、りがとう」

「あーー、流羽君赤くなった〜〜、それってお酒のせいじゃないよね〜〜可愛い〜〜」


キャーと声を上げる女子に、他の人の視線もこっちに集中する。
そのせいで「何?何の話してたの?」と興味津々な様子で聞いてきて、しかも説明されている。
うわ、なんだこれ恥ずかしい。揶揄われてるとしか思えない。

困って、もういっそのこと酔ってしまった方が楽だと一気にグラスの中を飲み干した。
液体が胃に達した後、心臓の鼓動が速くなり、かぁっと耳とか頬とか頭が熱くなる。


「逢坂君イイねーー!いい飲みっぷり!」

「う、ん…たまには、ね」


喉を通っていくアルコールの味に、思いのほか美味しいかもと思う。
お酒ってこんな味だったんだと変な新鮮味があった。


「もっといっぱい飲もーー!」

「ん」


注がれる度に、全部忘れようとゴクゴク飲んだ。
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