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何故その結論になるんだろう。
俺が煙草を吸った理由が、流羽の中で全然違うストーリーで出来上がってきている。
(……違うって否定するのは簡単だけど、どうしようかな)
苦しそうに胸をおさえて泣く姿に、少し考えて、頭の中で考えた言葉とは別の言い方にした。
「好きって言ったらどうするの?」
「…っ、」
頬に触れて、顔を上げさせる。
目を合わせて問いかけた言葉に、動揺したように震え、ひゅ、とその喉から変な音が鳴ったのが聞こえた。
意地の悪いことをしている自覚はある。
…わかっているのに、それでも止められない。
「俺が前の彼女のことを忘れられないって言ったら、」
「っ、や、…っ、っや、やだ、」
言葉にし終わる前に、否定の言葉が返される。
最初はゆるゆると、すぐぶんぶん首を大きく横に振っていた。
ぶわ、と溢れて零れた涙が頬に伝って、首を振るたびに散る。
「まだ陽菜と付き合いたいと思ってるって言ったら、流羽は俺と別れる?」
「…っ、や、やだ、優さん、お…おれ、ごめ、ごめんなさい…っ、」
号泣、という言葉が正にここにある、と言えるほど泣いている。
何も悪いことをしていないのに、俺に抱き着いて、縋って、俺に捨てられないようにと懸命に涙に溺れた言葉を吐き出している。
肩に、首元に顔を埋めて泣いているから、濡れた感触とともに密着している流羽の身体によって重みが増す。
数分前までの雰囲気が嘘みたいだ。
流羽の身体より大きい俺のTシャツを風呂上がりに着て、へにゃ、ってあどけなく嬉しそうに笑ってたのが夢だったとしか思えない。
『一緒にいたい、捨てないで、ごめんなさい、何か悪いことをしたなら謝るから、何でもするから、』
優さん、優さん、と全身で俺を求めて泣きながら抱きしめてくる、そういう姿は俺の感情にも影響を及ぼす。
「流羽はなんでそんなに純粋で、汚れてないのかな」
ため息まじりに呟いた言葉は小さすぎて、腕の中で咽び泣く流羽にはきっと聞こえていなかった。
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