くずれる、ずれる
「…レオしかいないの…っ!」
そうしがみつく**は、本当は彼女の兄のトビーさんが好きだ。でも、その気持ちを知っているのも受け止められるのも結局俺だけで。
だから今日も、付き合うふりをして埋めあっている。
「レオ、他の人としたよね、」
「**も、でしょ?」
彼女が指している「他の人」は多分、昨日のチェインさんのこと。
「まあ、あの人はなんか本気っぽかったんだけどね…」
「誰?」
「銀髪だった…レオの先輩?」
銀髪で俺の先輩ときたら…もしかして。
「ザップさんと会ったの?」
「うん、まあ。レオのこと話したらね、『どうしてあんな陰毛と』…って。どうせ私の気持ちを受け止められるのなんて、レオだけなのにね…」
「ザップさんらしいね…で、なんて返したの?」
「本当に好きな人は別にいる、って」
「あはは…」
俺も、チェインさんに同じようなことを聞かれた。
『君は彼女さんと随分仲が良いみたいだけど、なんだか訳がありそう。どういう関係なの?』
答えはこうだ。
『好きな人がいます。けれどそれは絶対に叶わない。だから同じような境遇を持つ**と付き合っているんです』
それは婚約者がいるから、というのも間違ってはいない。だが、婚約者がいようがいまいが、兄妹という時点で叶わないことなど、初めから分かっていた。
しかもその『婚約者』は、**の兄、かつ**の片思い相手でもある。
ということは、彼女の(ふりをしている)**と、義理の家族になるわけだ。『妹の婚約者の妹さんです』なんていう他己紹介は、続柄にしては少し長い。
けれど、家族という名目なら、大好きなミシェーラの側にいながら**と付き合う(ふりをする)こともできる。
**も、また同じだ。トビーさんの側で、俺と付き合う(ふりをする)ことを続けている。
「**は、君のお兄さんを好きでい続けてる?」
「勿論だよ。でも…お兄ちゃんは私の気持ちなんて、どうせわからない…!そりゃあ私は妹だから、わかってもらえたところでどうにもならないけどさ…!」
**は、思考回路もどこか俺に似ている。初めから似ているのか、それとも付き合い続けているうちに似てきたのか。
俺も、妹のミシェーラを好きでい続けている。
けれど、ミシェーラは俺の気持ちなど、どうせわからないだろう。わかっていたとしても、俺はミシェーラの兄でしかないので、どうにかすることもできない。まあ、だから**といるし、今の俺には**しかいないのだけれど。
俺と**を繋ぐのは、身内への叶わない想いだけ。
依存はし合っているけれど、本当はお互いのことなんて、全く想ってなどいないのだ。