とろけた瞼

思っていなかった。妹婿の妹に、ここまで入れ込むことになるなんて。

**と俺が、ミシェーラとトビーさんのいる家に住むようになってから半年くらいが経った。
今日は俺の誕生日だが――そんなに経ったんだな。
「レオナルド、今日は**と過ごすといい」
「トビーさん…いいんですか?」
**と俺は付き合っている、事になっている。それはトビーさんもミシェーラも知っているが、どのような理由で付き合いだしたのかは教えていない。

「**、入るよ」
そう言うと**は部屋を開けてくれる。ろうそくは既に刺さっており、あとは火を点けるだけと言う状態だ。
「火、点けるから待っててね!」
**の点けた火がゆらゆらと揺らめいている。
「もういいよ!」
俺は、それを吹き消した。

すっかり役目を終えたろうそくを抜いて、ケーキを包丁で切る。**はそれを皿に分けていたのだが――
「…っわ!」
どうやら服に落としてしまったらしく、慌てている。
「どうしたの、大丈夫?」
「うん…ごめんね、レオ…」
「気にしないで。このまま続けよう?」
ケーキが下まで落ちてしまわないように、**の体を寝かせる。
「――**、全部頂戴?」

***

「あー…べとべとだね、**。全部頂戴って言ったけど、流石に拭かないとかな…」
**の服は後で洗うとして、問題は**の肌だ。風呂に入れなければならないけれど…まあ、それは**が自分で洗えるか。半分は俺の責任でもあるが。
盛り付けられたフルーツも当然ながら散乱していて、**を意図せぬ形でありながら飾り立てている。
「**、口開けて?」
そのうちの一つをとって、**の口元に運ぶ。
「いいの?」
「まあ、俺が自分で運んでいればよかったってだけだから」
**は「レオのなのに、」と言いつつも結局はそれを笑顔で頬張り続ける。

段々積み重なっていたものが減ってくると感覚がダイレクトに伝わるようで、**は擽ったそうにしている。
「擽ったいの?」
「うん…っぁ、待ってよ…!」
「――**、大人しくして?」
手首を掴んで押さえつける。
「擽ったいのはわかるけど、じっとしてないと…また、落ちちゃうよ?」
そう言われて受け入れたのか、**は落ち着いた。
指でクリームを掬って、**の口元に差し出す。今度は躊躇わずに咥えられた。
「ん、甘い…っ、」
咥えさせた以上は舐め取られることくらいわかりきっていたというのに、どういう反応をすればいいのかがわからない。
撫でることもできないため、とりあえず咥えさせた指で舌先を擦ってやる。
「…っえ……?」
「美味しい?」
何も返さず、ただ頷く**。クリームが全てどろどろになってしまう前に、どうにかしなければ――

案の定べとべとになった**の服を脱がせ、風呂に入らせる。
「**、1人でできる?」
「大丈夫…逆に入ってこられたら、その…困るっていうか」
「そうだね。ごめんね?」
「うん…あ、お誕生日おめでとう、“お兄ちゃん”!」
「…ありがとう、**」
しばらくは妹婿の妹と付き合い続けよう、互いの存在は所詮代わりに過ぎないけれど、それでいい。



レオ君、誕生日おめでとう!