ポリゴンウェイヴ

顔も知らない誰かの揺籠の残骸が内側から剥がれ落ちる度、張り裂けるような痛みに苛まれていく。ああ私もちゃんと生物学的には人間の端くれなのだと皮肉じみた形で突きつけられる、この瞬間が不快ではありつつも、どうも嫌いにはなりきれなかった。
ちょくちょく私に向けられる浮世離れしているという評価をつまりは変な奴と言いたいのだと理解できないほど私は馬鹿であるつもりはないし、そんな馬鹿なら今頃進学校たるこの白鳥沢学園に通ってはいない。それと恐らくは同じようなニュアンスでバケモノだの妖怪だのと形容される人間を私は2人ほど知っているが、私のクラスメイトである『わっちゃん』こと牛島若利も、そのうちの1人だった。

「神山?……ああ、ここにいたのか」

私とわっちゃんの関係は世間一般には幼馴染と呼ばれるものだろうけれど、100%しっくりくる名前はどこを探しても見つからないのかもしれない。元々母親同士が知り合いだったというきっかけで一緒にいる、言ってしまえば自然とそうなっていただけで、今更離れる理由もあえてくっつく必要もないような関係性。そこまでスポーツに詳しくなく興味もない私にとって彼がスポーツ推薦でここに入ってきたこととかユース選手相手だからとかはあまり関係のないことだったし、どこに行くにしろ行くなら気をつけて行ってらっしゃいとしか言えない。かといって彼のことを彼のお母さんから『頼まれた』などと責任を感じる気も、ましてや命を懸ける気もなかった。
必要以上に踏み込んでくることはせず余計なことを聞いたり言ったりもしてこない、そんな彼相手なら接していて楽だった。だからこうして一緒にいる、ただそれだけでありそれ以上の何物でもない。

「……わっちゃん?どうして、ここにいるの?」
「帰り際に廊下で倒れてここに運ばれたと、担任から聞いた。それからずっと今まで寝ていたらしいが、大丈夫そうか?」
「んー……ただの生理痛だよ。水も薬も飲んだし、毎月のことだから気にしないで。それより、わっちゃんの方は――」

いつの間にか鼓膜に飛び込んできた声に一通り応えたところで、どうして件の彼がここにいるのかと思考を向け直す。
壁に掛かっていた時計を見るに、今頃は部活の時間で――しかも主将ともあろうわっちゃんが、私の様子を見るためだけにこんなところにいるはずがない。ならば他にどうしてここにいるのかと訊く前に、右手を覆う白い包帯がその答えを提示していた。
曰く彼は練習中に右手を突き指して、それを先程保健室で診てもらったところらしい。幸いにも突き指だけで骨にヒビが入っているわけでもなく折れたり捻挫したりもしていないとのことだったが、利き手ではなかったにしろそのまま練習を続けていたらどうなるかわからないとのことで、大事をとって今日はもう寮に帰らされることになったそうで――けれどどうせ保健室に来たのならと、ついでとばかりに私の様子を見に来たのだという。養護教諭も養護教諭で推薦入学者の彼を信頼しているのか、それともベッドで寝ているのが彼のクラスメイトである私だったからか、出るときに締めてくれとご丁寧に保健室の鍵まで渡されたらしい。

「……なるほど、それなら仕方ないか。でも珍しいね、わっちゃんは全国の中でも強い人だって聞いてるけど」
「ああ、俺を超えるエースになりたいと言っている一年の部員がいてな。俺としたことがこんな失態をするとは情けないが、部員の実力が上がるのは俺としても望ましいし」
「?」
「それに、俺も人間だ。突き指くらいするだろう」

そう語る彼は確かに、私よりも遥かに人間らしいことを、私は知っている。

***

何をしているでもなく、ただ息をしていることだけが確かだった。
キャップを空けたまま横に倒したペットボトルから溢れ広がっていく水がどこに向かうかなど誰もわからないように、名前のない関係を共有している私とわっちゃんがどこに向かうかなんて、少なくとも私はまだ知らない。

「神山、」
「ん、なーに……?」
「いや、今は違うか……**、」

もう1人の妖怪こと天童くんからそういう暗黙の了解があると聞いたらしく、律儀にこういうときだけ名前で呼んでくるあたり本当に変わっていない。普段の周りとの接し方を見るに、私相手だから律儀に守っているというわけではないのだろうけれど、少なくともわっちゃんは私よりはそういった情報をどこかで仕入れているのは確かだった。私よりも人間らしくある彼を怪物だというなら、されるがままになっている私は石像か、それともマネキンだろうか。
こうして触れ合うのは本来付き合っている同士でやることらしいが、私はわっちゃんと付き合っているというわけではない。確かに私はわっちゃんといると心地よくはあるし心を開いている自覚はあるけれど、それが好意であるかは未だにわからないままだ。いつだったか、何年何組だか忘れてしまったくらいどうでもいい男子生徒に好きだから恋人になってほしいと告白されたときも、私のことを愛してもらう分には構わないし何も思わないが少なくとも私が愛してあげられる保証はないと忠告すればあちらの方から勝手に離れていったような記憶があるくらいだ。
親や教師から勧められるままにこの学園を受け、部活をやらないのかと勧められても勉強に集中したいからと理由をつけて何も選ばないことを選ぶような。学食でも適当に前に並んだ人と同じものを頼み、コンビニでもとりあえず目についた新商品を買っているような――特段好物と言えるものがなく何かに焦がれることも知らない私が、自分から誰かの手を取ることは未来永劫ないはずだ。

「……今日、するの?」
「お前が嫌なら、しない。敵でもない奴が苦しんでいるのを見たがるほど下衆じゃない自覚はある」
「大丈夫だよ、嫌じゃないから。今は生理中だし、血がつかないようにはしたほうがいいと思うけど……それでもいいなら、わっちゃんの好きにして」

だから私は拒絶するわけでも、背中を押すわけでもない。包帯に染みた血を怪しまれた誰かに問い詰められて困るのも、私の身体を見て失望あるいは興奮するのも、あくまで私ではなくわっちゃん本人だ。
恥ずかしいから見ないでほしいわけでも、逆に興奮するから見てほしいわけでもない。ただ、グラビアアイドルでもAV女優でもない私で満足できると宣うのならばわっちゃんの好きなだけ、見たいだけ見ればいい。視界に映る私に何を思うのかは知り得ないけれど、ただ私が彼にとって好ましい状態に映っていればいいだけの話だ。彼は見られることで自分達が弱くなることはないと他校の1年生に言い切ってみせたらしいけれど、概ね同じ意味合いだろうか。

「そうだな、……なら、好きにする」

頬に左手が添えられ、少しだけ顔が近づいてくる。やがてこの部屋の眩しさに反射的に目を閉じた私に応えるように、そっと触れるだけのキスをされた。
何回されてもいまいち慣れない、唇に何かが触れるだけの行為。キスをしてからが大人だとか背伸びしたがる子達が言うことはよくわからないし、そういえばファーストキスもわっちゃんにされたような薄ぼんやりした記憶はあるが、誰としても、何度しても、どうせ何も変わらないのだろう。ただ、たまたまその相手が毎回同じ彼だったというだけで、そこに特別な意味は感じられないままだった。

「……ん、」
「**、苦しくないか、」
「?……ん、だいじょーぶ……ふぁ、っ♡」

けれど当のわっちゃんにとってはそうではないのだろう、いつも通り目を閉じたままただじっと唇が離れるのを待っていればやがて静かに離れるけれど、今日もそれで終わるわけではない。それを示すかのように、今度は顎に這わされていた左手の親指が半ば強引に私の口を押し開けた。
彼本人曰く父親が守ってくれたギフトだという左手、その親指がそのままぬるりと口内に差し込まれ、舌の表面を舐るように弄んでいく。舌なんてざらざらしているだけで指で撫ぜても気持ちよくもなんともないはずなのに、彼は私の舌の感触を心地いいものだと認識でもしているのか、こうやって指で弄ぶことがよくあった。

「ん、ふ……んんっ♡、ぅ……っ」
「……**、」
「ぅ……ふぁ……?ぁ……わっひゃ、んむ……♡」

ひとしきり舌で遊ばれたのち、抜き去られた親指の代わりにわっちゃんの舌が潜り込んでくる。
こうやって舌を絡められ、口の中を撫ぜられても、やはりそれ以上のことはわからないままだ。そんな私に構わず私の舌を捕らえてぬるりと絡みつくその舌は熱くて、口の端からどちらのものかわからない唾液が溢れていくのを感じつつもされるがままにしていればやがて飲み込みきれないそれが伝い落ちていくのがわかった。けれどそれを拭う気もなく、ただ与えられる感覚を受け入れるだけの私の髪を梳くように頭を撫でてくる。

「っ……ふ、ぅ、んぅ……んむ、ふぁ……♡」
「こうされても、やはり何も感じないのか?お前は、」
「ふぁ、……っ、どうだろ……?ぬるぬる、してるなー、って……ん♡」

ぬるりと顎を伝いながら滑り落ちていく唾液は、正直言って気持ちがいいものではない。けれどキスが気持ちいいものだという人が一定数いることは知っているし、おそらくはわっちゃんもそのうちの1人に入るのだろう。
現に、離されたと思った彼の顔が再び近づいたかと思えばまた口内を嬲られ、意識が一瞬飛びそうになったところをまた唇で蓋をされるように奪われるのを繰り返しているわけで。

「ぁ……っ♡ふ……わっひゃん……んむ……♡」
「……っ、ん……ふ……」
「ぅ、ん……ふぁ、ぁ♡」

ぢゅるりと唾液を吸い取られるような音と舌の感覚だけがひたすらに与えられて、どんどん思考が覚束なくなる。これも不快ではない、ならば消去法で言えば快楽に位置するのだろうか。これもクラスの女子が言うには私の年頃なら大抵が知っている感覚らしく、もしそうならこの感覚を知ることで私はまたひとつ、わっちゃんの打つボール一個分の幅くらいは人間に近づけたのかもしれない。事実、少しずつではあるものの彼の手によってそれが気持ちいいことだと身体に教え込まれているような気さえするのだ。
息が苦しくなってきた頃、唐突にわっちゃんが離れていく。最後にじゅるりと唾液の糸を絡めとるように舌で唇をなぞりながら離れていった彼は、私の口許に伝っていた唾液までも指で掬い取っているようだった。

「そういえば、**。ずっと目を閉じているが……」
「……だって、ここ……眩しいから、」
「わかった。それなら、俺のジャージを被せておく」

ジャージのファスナーを下ろす音、次いで顔を覆うように布が触れる感覚。学校の中でも背が高い部類に入るわっちゃんのジャージは私の顔を容易く覆い隠して、瞼の代わりに外界の何もかもを遮断する。
物音と、水音と、2人の声しかないこの空間。静かで、無機質で――その静寂 しじまは、なんて私に似つかわしい。

「――って、わっちゃん?本当に、ここで続きするの?」
「ああ。好きにしろと言ったのは、**だろう」
「わっちゃんのこと、満足させてあげられる保証はできないけど……それでいいなら、いいよ」
「構わない。……満足するまでするだけだ」

ああ、そうか。そういえば、わっちゃんはそういう人だった。元々ストイックで生真面目な彼だからそう返ってくるだろうとは思っていたけれど、そうかつまり君はそんな奴なんだな、なんてどこかで読んだ小説の文章を思い出してみたりもした。
満足するまでする、と言い切った彼は私にどんな目を向けているのか。コート上で敵チームと相対しているときも同じ目をしているのか、それとも大好きだというハヤシライスを食べているときと同じものなのか――部屋の眩しさに目を閉じてしまったからではなく、どうせ目を開けていても真の意味で理解しきることはできないのだろう。
ただ、されるがままを享受するだけ。今の私はそれでよかったし、わっちゃんもまた、その選択を望んでいるはずだから。

「脱がすぞ」
「あ……脱がしにくかったら、ごめんね」
「……いや、これでいい」

セーターの裾に手がかかり、そのままリボンを外されることもボタンを外されることもないまま、ブラウスごと捲り上げられる。上半身がわっちゃんの眼前に晒されれば少しひんやりとは感じるけれど、恥ずかしさを感じるわけではない。それでもこの身体で興奮できるのだろうかと若干の不安を覚えつつ、彼の手がブラジャーに掛かっているのを感じ取った。そのまま金具を外されるわけではなくずらして露出させてくるのは余裕がないからか、それともただ単に右手を使えないからか――なんて考えるうちにすぐに素肌は外気に晒され、布に覆われなくなった代わりとばかりにわっちゃんの掌が滑る。

「ぁ……っ♡」
「すまない、少し冷たいだろうか?生理の間は冷やさないほうがいいと聞くが、」
「つめ、たい……♡けど、♡」

人より大きいであろうその手が触れるのも、ひょっとしたら蟻が身体を這うのとなんら変わりないのかもしれない。ただ、少しかさついたその左手に包み込まれるのは確かに心地よくて、手慰みのように爪弾かれる感覚も決して嫌ではない。
むしろもっと触れていてほしい、なんて思ってしまうのは、私が彼にそれを望んでいるからなのだろうか。

「ぁ……ふ……♡わっちゃ……ぁ♡」
「痛くないか?」
「ぜんぜん……へいき、だから……もっと……♡」
「わかった。……ん、」

時折爪の先でかりかりと引っ掻くように触れられれば、さらに強い刺激を深層意識で求めているのか身体が跳ねる。
――もっと、もっと強い刺激がほしい。
生理中は感じやすくなると聞くけれどそれは本当だったのか、それともただ彼の行為に興奮しているのか。理由はわからないけれど、とにかく彼に触れられると気持ちよくて仕方がなかった。

「**は感度がいいからな。その分、満足させがいがある」
「感度、高く見える?多分、今だからじゃないかな……ぁ、いつも喘ぐ女の子の方が興奮するって言うなら、私に付き合ってくれなくても……ん、ぁ♡」
「いい、汚く喘ぐような女は元々好きじゃない。それに――こうやって、開発していく方がいい」
「そう、なの?……んんっ♡」

乳首に軽く歯を立てられたり舌で転がされたりしながら優しくお腹を撫でられれば、ぞわぞわと這い上がる快楽は止まることを知らない。いつの間に薬が効いたのか生理痛は既に感じなくなっており、ただただわっちゃんに与えられる快楽だけがそこにはあった。
やがてお腹を撫でていた手はそのままショーツの中に滑り込み、直に太ももを這うように触れてくる。

「ぁ、わっちゃ、そこ……ぁ♡」
「ああ。もうこんなに濡れているが、」
「じゃなくて……えっと、さっきも言ったけど、生理中だから……シーツとか包帯とか汚さないように、気をつけてね……?♡」
「ああ、わかった」

血液混じりのせいか普段よりぬるついていない、けれど確かに彼が言う通り既に蜜が溢れていて。幸い今はもう経血が多い時期は過ぎていて蜜が大半を占める時期に入ってはいるけれど、それでも経血で布を汚してしまう可能性は十分にあった。
さすがに保健室のベッドのシーツを汚してしまうのはまずいだろうと至極当たり前な考えに至るものの、それに対するわっちゃんの返答は予想もしないもので。

「わっ、ちゃん……?なに、しようと……っ♡」
「?舐めて綺麗にしようとしているだけだが、」
「汚いから、やめた方がいいと思……ぁ、んっ♡ふ……っ」

ショーツをタイツごと脱がされ、そのままわっちゃんの舌は秘部を這う。反射的に逃げ腰になるものの、足をがっちりと腕で固定されているせいでそれは叶わない。
生真面目な彼だからこんなこととは縁がないと思っていたけれど、同時に天然である彼なら私が汚いと言った意味も理解しきっていないだろうとも思えてしまう矛盾。そして案の定わっちゃんは私の言葉の真意を理解できていないようだった、けれどそれに呆れる暇もないうちに先程よりも強い快感が駆け上がってくる。
じゅるりと音を立てて吸われれば腰が大きく跳ねて、その度に奥から溢れ出す蜜を美味しいとでも思っているのだろうか音を立てて飲み下される。さらにクリトリスを爪で弾かれたり舌で転がされてしまうせいで快感はますます上がっていき、私はあられもない声を上げるしかなくなっていた。

「ん、ふ……少し赤く腫れているな。苦しいだろう、**」
「そう、なの……?♡でも、いつもより、ぬるぬるしてないとは思うし……ふ、ぁ♡」
「ああ。それなら、できるだけ慣らさないとな」

潤滑剤代わりに蜜と経血を塗り込めるようにしながらクリトリスを転がされれば一気に快楽は強くなり、それに比例するように彼の舌の動きも激しくなっていく。
そのまま肥大しているであろうそこを一際強く吸われればやがて私の身体は絶頂を迎え、その瞬間にぎゅっと力いっぱい足を閉じてしまったせいでわっちゃんの頭を抱え込むような形になってしまう。

「あ、ごめ……わっちゃ……♡」
「構わない。むしろ、もっと解さなければお前が苦しむことになる」
「そう、だけど……ぁっ♡」

つぷん、と音を立てて侵入してきたのは間違いなくわっちゃんの指だった。
まだ1本目だからか異物感こそあれど痛みはなく、ただただ気持ちよさだけがぐるぐると身体の中を渦巻いていて。それを感じ取ったらしいわっちゃんは2本目を差し込んできて、少し強めに肉壁を押し上げてくる。
2本の指はバラバラに動くようになっていて、指の腹で擦られたかと思えば爪の先で軽く引っかかれる。2本の指がそれぞれ別の動きをするせいで予測できない快楽を与えられ、私の口からはひっきりなしに声が上がるばかりだった。

「ひぅ、っ♡ぁ、ふ……ん、んっ♡」
「痛いか?駄目ならやめるが」
「だめ、じゃない……から、つづけて……?♡」
「わかった」

2本の指でざらついたところを擦られればそれだけで軽く達してしまい、けれど彼はそれでも止めてくれなくて。むしろ先程よりも強く、緩急をつけてそこを責め立てられればいよいよ意識すら快楽に塗り潰されてしまいそうになる。
それでよかった。どうせこれはいっときの感情なのだろうけれど、それでも今だけはこの快楽に身を委ねていたかった。

「ぁ……っ♡ふ、ぅ……ぁあっ♡♡」
「……ここも、随分と柔らかくなったな」
「そう、なの……?♡そんなの、わっちゃんにしかわかんないけど……ぁ、♡っんん……♡」
「ああ。お前がこの行為に慣れてくれた証拠だな」

優しく労わるように頭を撫でられれば自然と心は安らいでいくのに、それとは対照的に身体は快楽に支配されていく。やがて2回目の絶頂に達しれば、わっちゃんはそれを察したのか指を引き抜いた。
――ああ、そろそろだろうか。
その予感は正しかったようで、少しした頃にはゴムを纏った先端が私の蜜壷へとあてがわれている。

「少し、痛いかもしれないが……痛かったら言ってくれ」
「ん……いいよ、きて……♡」

ぐっと押し入ってくるそれの圧迫感に息が詰まるものの、それもほんの一瞬のこと。すっかり彼の形を覚え込んだ膣は、人より高いであろう身長に見合った彼のものを根元までしっかりと咥え込んだ。
生理中にしたことはなかったので当然なのかもしれないけれど、この快楽が生理中だからなのか、それとも相手がわっちゃんだからなのかは自分でもわからない。ただ、生理痛が和らぐような、あるいは気が紛れるような、不思議な感覚がするのは確かだった。

「大丈夫か?」
「ん……っ♡まだちょっときついけど、だいじょうぶ……♡」
「それならいい。苦しくなったら言ってくれ、」

初めは馴染ませるようにゆるゆると動いていた刺激も、少しずつ早さを増す。やがてごりごりとある一点を抉られれば、頭の中が真っ白になるほどの快楽に蝕まれて。
ただひたすらに気持ちよくて、何も考えられないくらいに頭の中がふわふわとして。これを知っているクラスの子達が虜になる気持ちが少しわかってしまうような、そんな感覚。これが誰相手でも変わらないのか、それともわっちゃんだからなのかは定かではないけれど、彼が私にこうしてくれる限りはいつまでもこの快楽に身を委ねていたいと思った。

「ふ、ぅ……んんんっ♡わっちゃ、ぁ、むり……っ♡もう、イっちゃ……ぁっ♡」
「ああ。好きなだけ達すればいい」
「っ、ぁ……ああぁっ♡」

暴力的なまでの快感に耐えきれるはずもなく、私はまた呆気なく絶頂を迎えてしまう。
ジャージで顔を覆われている今は何時くらいだとか知る術もなく、もしかしたらもうとっくに学食の時間まで差し掛かっているかもしれない。そんな焦りも不安も全てが快楽に塗り潰されて、私はただただ与えられるままにそれを受け入れるだけだった。
考えてみれば、推薦入学生のわっちゃんと優等生で通っているらしい私が保健室でこんなことをしているなんて、誰も想像すらしないだろう。けれど人からどう思われているかなんて最初から気にするたちではなかったし、考えてみればこうやって道を間違えてしまう方が逆に人間らしいのかもしれない。

「あ、ぁ……っ♡ぅ、んんっ♡いっ、は……ぁあっ♡」
「ああ。もうそろそろ、俺も限界だ……っ、」
「ん……っ、きて……♡わっちゃ……ぁっ♡♡」

最後に一際強く奥を穿たれると同時にぐりぐりと最奥を押し上げられてしまえばもう耐える術もなく、私は呆気なく絶頂を迎えてしまう。そのすぐ後を追いかけるようにゴム越しに熱い液体が吐き出され、それにすら反応してきゅうきゅうと彼のものを締めあげれば彼は小さく呻き声を漏らした。
18歳の誕生日はお互いに過ぎたとはいえまだ高校生の身なのだし、妊娠の可能性を少しでも回避できてよかったな――なんてぼんやり思いつつ、余韻に浸りつつずるりと彼のものが抜かれる感覚に少しだけ寂しさを覚える。

「大丈夫か?痛みや違和感は」
「ん……大丈夫、だよ……」
「それならよかった。無理をさせてすまない」

事後特有の倦怠感に包まれていれば、わっちゃんは私を労るように頭を撫でてくれる。この行為も何回目かにはなるけれど、どうしても定期的にしたいとまではいかないものの不思議と飽きを感じることはなかった。
後処理を任せる形になってしまったのを申し訳なく思いつつ着崩れた制服を直していると、ジャージを着て待っていた彼からいきなり切り出されて。

「それで、**。今更言うのもなんだが――正式に付き合ってもらうことは、できないだろうか」
「付き合う……って、」

わっちゃんといるのは心地がいいし、こうやって楽な空気を吸うのに付き合ってもらっている自覚はある。彼が私を名前で呼んでくれる限りは私はただの私でいられたし、彼も私といるときは推薦生だとかユース選手だとか、主将だとかを全て脱ぎ捨てられるから楽だと言ってくれた。私と同じで興味のないものには興味を示さず、しかも冗談の通じない彼が言うのだから、おそらくはそこに間違いはないのだろう。
けれど、今までの――少なくとも私の知るようなわっちゃんは、付き合おうとかそういうことを言うような人ではなかったはずだ。

「嫌だというのなら、このままの関係でも構わない。だが、正式に付き合えれば、その……性行為に及んでいる罪悪感も、多少は拭えるだろうからな」
「そうなの?わっちゃんが私に何を求めてるかはわからないし、返してあげられる保証もできないけど……わっちゃんは、それで大丈夫?」
「ああ、それでも構わない。お前にとっては惰性でも受け入れてくれさえすればいいし、見返りを求めたりもしない。――だから、」

私のことを愛してもらう分には構わないし何も思わないが、少なくとも私が愛してあげられる保証はないし、わっちゃんであってもそれは変わらない。
けれど、それでもいいと言ってくれるのなら。差し伸べられた手の意味などわからない私でも構わないと言うのならば、その手を握ってみてもいいのかもしれない、なんて。

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