Spinning World

6年過ごしてきた白鳥沢学園を卒業し、それぞれの進路を歩むようになって数ヶ月。私が『わっちゃん』と呼ぶ幼馴染の彼・牛島若利は彼は私の知らないところで選手としての活躍を修めていて、一方私は仙台市の大学で心理学を学んでいた。
母親同士が知り合いの、いわば幼馴染である彼とは小さい頃からなんとなく一緒にいるようになっていて、それこそ高校を卒業しそれぞれの進路に進むまではずっとそうだった。彼の提案で正式に交際することになっても、結婚という前提が勝手にのしかかるようになっても――それこそ旦那様と呼んだ方がいいのかと冗談めかして言ったこともあるけれど、そのときも今まで通り『わっちゃん』という呼び方で構わないと返ってきたくらいに、相変わらず私達は私達としてそこに存在していた。
あの厳格そうな彼のお祖母さんにも交際を簡単に承諾された、それ自体はありがたいことだけれど、『あの神山さん家の子だから』だの『医者の卵なら若利さんの隣にふさわしい』だのと、いったいどの立場からものを言っているのだろうか。心理学科に通っているからといって別に医者を目指しているわけではないというのもそうだが、そもそも人生を共にするなどと言われても別の人間として生まれた以上待っているのはそれぞれの人生であり、そしてその彼の人生は彼自身のものであって彼側の親のものでもなければましてや私のものでもない。だから後継ぎがどうのと騒いでいる彼の母親も、そんな家の嫁に嫁ぐならうちの娘も幸せだとか宣う私の母親も、私の目にはただの理解し得ないモノにしか映らなかった。
後を継いでも継がなくても彼の側は生き心地がいいことに変わりはなかったし、後継ぎのところに嫁ぐからといってそれで私まで偉くなるわけでもないのに、部外者が何を言っているのだろうかと――そんな目で静寂を脅かしてくれるなと、ずっと冷めた眼差しで見ていた。そんな親戚達と宴会をするのは正直言って息苦しいけれど、母親の目がある以上断るわけにもいかず、私も嫁候補という立場から彼の家で行われる新年会にお呼ばれされることになったというわけだ。

「本当に大丈夫なの?これで」
「ああ。ちゃんと似合っているぞ、**」

せっかくだからと着物を着ることにした私は既に母親に着物姿を見せてOKをもらってあるものの、わっちゃんの親戚に何かを言われるのはやはり自分としても気持ちのいいものではないし、個人的な事情で彼の顔を潰そうと思えるほど私は非常識ではない自覚はある。だから一応彼にも確認してもらい、大丈夫だと太鼓判を押されてから敷居を跨がせてもらうことにした。
久しぶりに会ったわっちゃんのお祖母さんは相変わらず着物を着こなしていて、この家で発言力を持つ人間がどういうものなのかを改めて認識させられる。

「お邪魔します」
「ああ、神山さん家の子ですか。いらっしゃい」

通された部屋は、やはりというか見慣れた和室だ。
机に合わせるように畳の上に座布団が並べられていて、その机のひとつにわっちゃんと私が隣同士で座り、その向かい側には彼の母親とお祖母さんが腰を下ろす。真正面にお祖母さんが座っているという構図自体には彼の父親が離婚し海外へと出て行ったあの頃から慣れてはいたし、教師と親との三者面談と何も変わらないと思えばやり過ごすこと自体はできなくもなかった。
しかし、何回か顔を合わせただけの親戚から探るような視線を向けられるのはやはり心地のいいものではない。後継ぎだのプロのスポーツ選手だのは関係なくただ幼馴染であるわっちゃんの隣にいるだけの私にとって彼らは勝手に私の視界に存在しているだけのモブに過ぎず、同様に彼らにとっても私はただわっちゃんの隣にいるだけの存在であるはずなのに、何故こうも私に興味を向けるのだろうか。

「さて……新年のご挨拶も済んだところで、始めましょうかね」

わっちゃんのお祖母さんの声で、ようやく宴会が始まる。
正月の格付け番組に出てくるような、豪華そうなことだけは外面のよさでやたらと伝わってくる料理。わっちゃんや周りの親戚達の腹がこのあとこれを食べて満たされるかどうかなんて知る由もないけれど、普通なものと高級なものの味の違いもわからずただ両方を美味しいとだけ感じるような私にとっては、知らない店のブランドバッグを見せられてデザインだけを可愛いと褒めているような気分だ。
好意という感情がよくわからない私にはそれ以外の理由で使うものや一緒にいる相手を選ぶこと自体は理解できなくもないけれど、同時にそこまで権威や栄誉に執着する気持ちはやはり理解し得なくて。値段も縁故も距離感も、そして好意もあくまで選択肢のうち何かひとつを選ぶための理由という手段に過ぎず目的になりうるほど熱中できるものではない、そんな私を人は合理的だと誉めそやすけれど、実際私は周りのような――いわば欲というものが人より多少欠落している、人間らしからぬマネキンだった。
そして結局、そんな私の興味を一時的にでも惹くものは、ここにはひとつも存在しなかった。求められた振る舞いさえしていればいい嫁だのなんだのと勝手にレッテルを貼ってくれること自体は間違いなく楽ではあったけれど、私が身を浸したかったのはこんな味のしないガムのような時間ではない。
このあとに待っているであろう、わっちゃんの部屋で2人過ごす時間――彼の手で、少しずつ人間へと近づけてもらう時間だ。

***

宴が終わり、わっちゃんのお祖母さんやお母さんも片付けを終わらせて自分の部屋へと戻った今。彼の部屋へと案内されてしばらくは、ずっと無菌室のような生き心地のいい静寂が流れていた。
着物姿のままなんとなく同じ空間を共有していたわっちゃんに、それとなく話を振ってみる。

「ね、わっちゃん。この間言ったこと、覚えてる?」
「ん?……ああ、」
「縛られるってどういう感じなのかなって、少し興味があるって。……今日、する?」

前にどこかで着物姿の女性が縛られている写真を見て少し興味を持ってしまった私は、縛られてみたいとそれとなく伝えたことがあった。そのときはネットで調べたら縛り手が右利きであることを前提とするような縛り方ばかり載っていて左利きの彼には頼みづらかったこと、せっかくなら和服の方がいいだろうと思ったこと、そもそも彼と私の予定自体なかなか合わないなかで縄を用意する時間がいつ取れるかわからないこと――などなどを理由に保留という形になったけれど、次に彼の家で着物を着る機会があれば試してみてもいいだろうかと、事前に交渉していたのだ。つまり今回着物を着た理由は全てが終わったあとにわっちゃんの部屋で着物姿のまま縛ってもらうためであり、それどころかこの新年会に参加した理由自体も彼の部屋に泊めてもらうついでだった。
今日もまた親戚達は値踏みでもしているかのようなぎらついた目をしながら騒いでいたけれど、私は心理学を専攻しているからといって、心療内科医やらカウンセラーやらになりたいわけではない。ただ欠落を埋め周りの言うような『人間』になろうとしているだけであり、愛など理解できない私がわっちゃんにされる行為を拒まず受け入れるのも、彼の手で少しでも人間に近づけてもらうためだ。
だから今回もそう、縛られることが私を人間へと近づける一手となればいい――有り体に言えば性癖を開拓したいと、そういうことなのだ。

「……いいのか?」
「いいのか、って……どういうこと?むしろ私が付き合わせちゃっていいの?って訊きたいんだけど、」
「あまり器用なたちではないからな。俺が調べたのはお前の望むような縛り方じゃないかもしれないが、それでもいいのかと訊いている」
「いいよ、それでも。わっちゃんがどんな縛り方を勉強してきたのかは知らないけど、わっちゃんのやりやすい方でいいからさ?」

けれどこのどこまでも生真面目で天然な幼馴染は、私が自分の欠落を埋めるというだけのために利用してしまっている罪悪感など露知らず、どこまでも私のことだけを気にしていた。
元はと言えば私が私個人にしか価値のないような興味のために頼んでいることであり、それを受け入れる権利も断る権利もわっちゃんの側にあるのに、私の望みに添えないかもしれないと見るや私よりも申し訳なさそうにしている。この冷たいくせに眩しい冬晴れのような幼馴染はどこまでも不器用で、そして優しかった。
そう――今まさに、畳の上に直接座るのは痛いだろうからと、私のために座布団まで敷こうとしたくらいだ。

「座布団……?どうして?」
「ああ、俺が縛るのは上半身だけの予定だからな。じゃないと、**が気持ちよくなれないだろう?」
「ん?……もしかして、縛ったままでしたいの?」
「俺はそのつもりだが……お前も、それを望んでいるんじゃないのか?」

どうやら、わっちゃんは私が何も言わずとも、縛った状態で事に及ぶことを計算に入れていたらしい。なかなか動じず全てを受け入れる気の私を揺さぶりたいのか、それとも単に欲に火がついているだけなのか――まだ座布団に座ってすらいない私を前に、彼は縄を手にしながら欲の灯った目でこちらを見下ろしていた。
シンプルに柱にくくりつけるように縛るつもりなのだろうわっちゃんに言われるがまま、柱に沿わせるように座布団を置き、その上にぺたりと座る。そのままどうするかわからず縛られるのを待っていれば、少し骨張った手が着物の合わせへとかかった。

「望んでる?そうかもね。……でも、わっちゃんの好きにしていいよ」
「そうか。もし痛かったり苦しかったりしたら、すぐに言ってくれ」
「ん……お手柔らかにお願いしますね、旦那様?なんて、ね」
「ああ、苦しめすぎたら元も子もないからな。……ああ、でも先に脱がしかけたほうがいいか、」

ゆっくりと、わっちゃんの手で肩口の部分がずらされていく。下は元から縛らない予定と言っていた通りあまり乱されることはなく、胸の間から鎖骨、肩あたりまでを大きくはだけさせられた。おそらくは、露出した乳房に縄をかけるつもりなのだろうか。
着物を半脱ぎにし終えたところで、わっちゃんの手は私の背中へと回される。

「**、両手は後ろに……ああ、そうだ。そのままにしていてくれ、」

言われるがまま両手を後ろ手に組めば、わっちゃんは少し屈んで私の身体を縄で柱にくくりつけるように縛り上げる。
手を後ろに組まされているとはいえ柱に背中をつける光景は身長測定を思い起こさせるけれど、座っている体勢だからどちらかといえば座高測定かもしれないな、なんて考えているうちにも彼は私の身体を縛り上げていって。『人間』になりたいと宣いつつ動きを奪われそこから遠ざかっていく私は、私よりも私のことを熟知しているであろう幼馴染の目にはさぞ滑稽に映ることだろう。

「そう……もう少し、背筋を伸ばしてくれるか?」
「ん?……こう、かな……?」
「ああ、それでいい。――動くな、」
「……ぁ、」

少し身じろぎしようとすると、それを察したわっちゃんに咎めるように押さえつけられる。彼はいつもこうやってチームメイト達に接してきたのだろうか、私に対しては優しいはずのいつもの彼とは少し違う容赦のない声音に、びり、と空気が震えた。
好きだとか嫌いだとか理由を必要とするものではない、本能として身体に直接叩き込まれるような。写真を撮るときにポーズを指定されるのともまた違う、制御されていく感覚――これが、支配されるという感覚なのだろうか。

「これで完成だが……どうだ?痛くないか?」
「んー……ちょっと苦しいけど、大丈夫だよ。あ……えっと、柱……とか、折れたりしない……?」
「ああ、そこは心配しなくていい。うちの家屋は頑丈に作ってあるからな」

試しに身体を少し動かそうとすれど思う通りの結果はやはり得られず、代わりにぎし、と縄の軋む音として返ってくるだけだった。
柱にくくりつけられ身動きの取れない標本と化した私は、このままわっちゃんの手でどうされてしまうのだろうか。無防備なままなのをいいことに普段は触らないようなところまで触られるのか、はたまた逆に何もされず放置されるのか――どう転ぶのかは彼にしかわからないけれど、とりあえずされるがままに身を委ねる。

「そう?それなら、私が賠償しなくても済みそうだね」
「はは……お前らしいな。縛られても、柱の方を心配するのか……」
「まあ、わっちゃん家のものだし、よそ者の私が壊すわけにもいかないからね。……ね、何させたい?わっちゃんの、咥えさせてもいいんだよ?」
「いや、いい。――**が欠落していると言うものを全部埋めてから、な」

へら、と冗談めかして軽く言ってみればわっちゃんはそれがお気に召さなかったのか、私の顎に手を添えそのまま唇を合わせてきた。舌でなぞられた唇を反射的に唇を開けば、そのままゆっくりと舌を割り入れられる。歯列をなぞり、舌裏の付け根へと這わせてきた彼の舌は熱くぬめりを帯びていて、その熱に侵されるように身体の奥からぞくりと何かが沸き上がってくるのがわかった。
ああ、そういえば。わっちゃんにも気持ちよくなってもらった方がいいかと気紛れに声をかけたことは何回かあったけれど、彼は決して私が奉仕しようとすることをよしとせず、いつも私が気持ちよくなるのを最優先にしてくれていた。言い換えれば、いつもされるがままでいることを私に求めていたということでもある――奉仕されているのは、果たしてどちらの方なのか。

「んぁ……ふ、ん……っ♡」
「……は、」

私の弱いところを既に熟知しきったわっちゃんの舌に嬲られる。息継ぎをしようと口を開ければ、その隙間を埋めるようにぢゅるりと私の舌をも絡め取ってきた。
ぞわ、と背中を走るのは紛れもなく快感で、それを浴びていたくてもっとと強請るように舌を絡めれば、それに応えるように私の口内を蹂躙する舌の動きは激しくなっていく。二人の唾液が混ざり合い飲み込みきれなかったものが口の端から垂れていく感覚にすらぞくりと震えてしまう身体は、どこまでも目の前の幼馴染に開発されたものだと言えるだろう――天童くんやユースの仲間から仕入れてきた情報で初夜を迎えたあのわっちゃんに、である。

「んむ、んぅ……っ、は、ぁ……♡」
「……**、」
「ん、んん……っ♡」

名前を呼びながら角度を変えて何度も口づけてくるわっちゃんがようやく唇を離せば、お互いの間に銀糸が伝いやがてぷつりと切れる。息を整えながら見上げた彼はいつも以上に獰猛な目をしていて、その視線の意図すらわからないままただただその目に捕らわれることしかできなかった。
幸い暖房が効いているからか風邪を引くことはないだろうけれど、それでもぞくぞくと震えてしまう身体は止まらなくて。目の前の彼が与えてくれるであろう熱だけが私に体温を灯してくれる、そんな気さえしていた。

「は……っ、」
「わっ、ちゃん……?♡」
「……ああ、目隠しでもしておこうか。その方が、**も楽しめるだろう」
「そうなの?……いいよ。じゃあ、して……?♡」

私の返答に頷くが早いか、わっちゃんは紋付袴のポケットから目隠しを取り出して私の目を塞いできた。何も見えなくなったせいで視覚以外がより研ぎ澄まされたのか、素肌へと手を這わせられただけで心臓がどくどくと高鳴るのを感じる。
裏表がなく煽ることも取り繕うこともしない彼の言葉だから、そこに嘘偽りはないのだろう。ならば、それを信じて身を委ねるだけだ。
彼のペースで進められていく行為に、私は感じるままの反応をする――私達の間では、ただそれだけでよかった。

「ぁ……っ♡」
「**、少し冷たいかもしれないが……構わないな?」
「……ん、だいじょーぶ……っ♡」

柱と彼の身体に挟まれているせいか少し反応するだけでもぎしぎしと音が鳴り、まるで縄に絡め取られているような感覚に陥る。そのまま晒されたままの胸を柔く揉まれれば、それだけで身体の芯が熱くなった。
やわやわと感触を確かめるように揉まれたり、先端をきゅっと摘まれたり。好き放題に弄ばれる胸は徐々に張りを持ち始めてきて、ぴんと立ち上がった先端を今度は指ですりすりと擦られる。

「んん……っ、ふ……っ♡」
「気持ちいいか?」
「うん……♡ちゃんと気持ちいいよ、わっちゃん……?♡……ぁあっ!?♡」
「よかった。それなら……もっと、気持ちよくなってもらおうか」

肯定の意を示せば、わっちゃんはそのままもう片方の先端を口に含んだ。そのまま舌でころころと飴玉のように転がしたり、甘く歯を立てたりと緩急をつけながら責められれば、びくびくと腰が震えて身体の力が抜けていくのがわかる。
けれど身体が縄で柱に固定されているせいで、崩れ落ちることはおろか彼の方へ縋りつくことすらできなくて。行き場のない快楽をどうにか紛らわせようと唯一自由な脚で本能的に畳を蹴れば、それを咎めるようにまた押さえつけられる。

「や……っ♡ぁ、んん……っ!♡」
「……**。そんなに暴れるなら、下半身も縛った方がよかったか?」
「ぁ……っ♡」
「まあ、でも……ここも今から気持ちよくしてやれば、そう暴れられもしないだろうしな。……いいだろう?」

いつもと変わらない声色で囁かれる言葉に、ずくんとお腹の奥が熱くなる。これから何をされるのか、どうされてしまうのか――期待と不安の入り混じった感情にぞわぞわと震える身体を抑える術など、私にはもう残されていない。
やがてわっちゃんの左手が右の太腿を這い始め、脚を大きく開かされる。彼の熱い舌に割れ目を撫ぜられたかと思えば、そのまま顔を埋められたのだろう、ぢゅるぢゅると音を立てて吸われる感覚があった。
まるで、旦那様となった怪物への生贄か何かだ――それを自覚した途端、どくどくと鼓動が速まっていく。

「ゃ……っ!♡あぅ、ぁ……っ♡」
「……ん、」
「やぁ、あぁ……っ♡は、んんっ……ぅ♡」

脚を押さえられ閉じることすら許されないまま、時折舌が割れ目を這う。下から上へとなぞるように何度も往復していく舌先に翻弄されながら、ただただ甘い声を上げることしかできなかった。
名前を呼ばれながら敏感な芽に吸い付かれれば、腰がびくんと跳ねるのを抑えられない。そのまま何度もそこを責められ続ければ、あっという間に昂ぶった身体は限界を迎える。

「あっ、ゃ……っ♡も、いっちゃ……〜〜〜〜っ!♡」
「ん……達したか?」
「……ぁ、は……っ♡いっ、ちゃった、みたい……っ♡」

頂点まで達した身体はびくびくと痙攣し、頭の中が真っ白になる。けれどそれでもなお身体の昂ぶりは収まらず、またすぐに次の波が押し寄せてきて――どうやら、今日はとことん感度が高まっているらしい。
見えないからわからないけれど、この調子なら座布団も畳も濡らしてしまっているのだろう。あとで自分で綺麗にしないと、なんて頭の片隅でぼんやりと思いながら問うてみる。

「ね、わっちゃ……♡畳、濡らしちゃって、ない……?♡」
「ああ、心配しなくていい。俺が責任持って処理するし――それに、そんなことを気にしていられるなら、まだまだ大丈夫そうだな」
「それって、どういう……っ、んん!?♡」

突然彼の指がくちゅりと中へと挿入され、急な刺激に思わず声が出る。そのまま探るように中をかき回されれば、ぐちゅぐちゅと卑猥な水音が鼓膜を震わせた。
こういうときでも私を叱らず気遣う素振りを見せるだけわっちゃんは聖人なのか、それとも欲に駆られたただの人間なのか。おそらく後者なのだろう、とどこか冷静な頭で考えながら、私は彼から与えられる快楽に身を委ねることしかできなかった。

「あぅ、ん……っ♡ぁ、は……っ♡」
「もう随分と柔らかいな……これなら、2本目もいけそうだ」
「ぇ……っ?♡ぁっ!?♡あぁ……っ♡」

膣内でバラバラに動かされる2本の指がナカを押し広げていき、時折ある一点を掠められればそれだけで腰が跳ねてしまう。それに気をよくしたのかわっちゃんは指で執拗にその一点を捉え続け、擦り続けるように指を動かし続けていた。
わっちゃん、わっちゃん。物理的に縋りつけない代わりに何度も呼び縋るたび、彼は応えるように私に快楽を与え、熱を灯してくれる。その熱に浮かされたまま、私は何度目かの絶頂に達した。

「ぅっ♡ぁ……あぅ、んっ!♡」
「……**。まだ、いけるだろう?」
「ふふ、もっと……♡もっと、ほしい……な、♡」
「自分からねだるようになったな。……ああ。全部、受け止めてくれ」

行為を重ねていく中で私が開発されつつあるのが嬉しいのか、わっちゃんは更に激しく攻め立ててくる。ぐちゃぐちゃと搔き回され続ける膣内は既にぐずぐずになっていて、何度も何度も絶頂を迎えている身体は完全に限界を迎えていた。それでもなお行為は止まず、私はただひたすら彼に与えられる快楽を受け止めるしかできなくて。
快楽を知ったマネキンは、戻る術など知らぬまま、ただ乱れていくだけだった。

「そろそろ、よさそうか?」
「いーよ……きて、わっちゃん……?♡」

私の声が合図となったのか、私の膝裏に手を差し入れたわっちゃんはそのままぐいっと脚を持ち上げてきた。
いつの間に持ってきていたのかゴムの封を開ける音がぴりりと響いて、続けてゴムを纏った硬いものが割れ目に押し当てられる感触。そのまま何度か擦るように動かされたかと思えば、次の瞬間にはずぷ、と音を立てて彼の熱が内側を侵していって。
座った状態で行為に及ぶこと自体は多いし、身体のバランスを崩す心配もないだろう。けれど縄に縛られた状態での行為は初めてで、いつもとは違った刺激に腰がびくりと跳ねた。

「あ、ぅ……っ♡」
「っ……は、」
「や、ぁっ!♡おく、ふか……っ♡」

ゆっくりと奥まで挿し込まれたかと思えば、そのまま奥を抉られる。かと思えばぎりぎりまで引き抜かれてまた奥へと挿入される繰り返しで、絶え間なく襲い来る快楽に思考回路がどんどん焼き切れていくのがわかった。
腰を揺すられるたびに弱いところを掠めて、子宮口をこじ開けるように突き上げられる。そしてまた抜き挿しを繰り返されれば、どうしようもなく気持ちがいい。

「わっちゃ、これ……♡すごいの、んん……っ♡ぁ、あっ!♡」
「っ、**……気持ちいい、か……?」
「ひぁ……っ!♡ゃ、あ……あぁあっ!♡」

縄で固定されているせいで、身体の自由は全く効かない。そんな状態で揺さぶられるものだから上手く快楽を逃すこともできなくて、ただただ私は彼の与える快楽に溺れていくことしかできなかった。
普段の私がこの光景を見たら、新年からこんな格好で、こんな体勢でいったい何をやっているのかと呆れ返ってしまうだろう。けれど、今現在はそれこそ周りに呆れ返られてしまう可能性すらよぎってしまうほどに、彼から与えられる快楽に蕩け切り乱れていた――そんな私は確実に、彼の手で周りが言う『人間』として完成系に近づけられつつあるのだろうか。

「そろそろ、俺も限界が近いな……このまま、頭の上からかけてもいいが、」
「?それって……♡私の、顔に……♡?」
「ああ、だが既にゴムをつけてしまっているしな……それに、それで着物を汚してしまうと、お前にもご両親にも申し訳が立たないだろう?だから、このまま注ぐからな?」
「や、待っ……〜〜ッ!?♡♡♡」

耳元で限界が近いことを告げられれば、一気に彼の動きが早くなる。縄が解けてしまっているんじゃないかとすら思うほどの激しいピストン運動に、私はあっという間に高みへと押し上げられていった。
そしてそのまま最奥を一際強く穿たれれば目の前がチカチカと瞬いて、やがて薄い膜越しにどぷりと熱いものが注ぎ込まれる感覚。それと同時に私もまた達して身体をびくびくと震わせていると、彼は労わるように私の頭を撫でてくれた。

「……すまない、大丈夫か?今、縄を解くから」
「ん……大丈夫だよ、ありがとう。……縛られるの、癖になっちゃいそう……」
「それは困るな。だが、**の力になれたのなら安心だな」

そうしてしばらく事後の余韻に浸っていた私達だけれど、疲れが押し寄せたのかなかなか身を起こせないでいる私と対照的に、わっちゃんは手早くゴムの処理をしてくれて。彼には少し申し訳なく思ってしまうものの、いかんせん気怠さが勝ってしまい、結局目隠しを外すのも縄を解くのも着物を直すのも全て任せてしまう形になってしまった。
まだ夕食分の寿司が残っているらしいけれどそれはいつ頃食べようか、そもそもこの行為をしたのが見つかって勘当されないだろうか――なんて考えつつ、私は柱に身を預けながら意識を手放した。

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