Twinkle Snow Powdery Snow


宮城県、仙台市。名門として知られる白鳥沢学園が校舎を構えるこの地区の今日の天気予報は、昨日から変わらず雪だった。とはいえこのあたりでは雪が降るというだけではそれほど騒ぐようなことはなく、この白鳥沢学園寮から校舎へと登校する際も当たり前のように雪が降り積もる中を歩くのだ。
寮生の私達だからまだいいけれど、家から登校している生徒達はもっと大変だっただろう――なんて心配をしながら、私は未だ降り積もる雪の中を転ばないように歩く。

「んー……」

爪ほどの雪片は手に舞い降りてからというもの、すぐに体温で今までは正装でしたというようにただの水滴へと姿を変える。空も、バニラアイスの中はこういう色をしているのだろうかと思うほどの薄暗い、しかし眩しい白だ。
スノードームの天井が割れたら中はきっとこんな感じなのだろうか、なんて思いながら歩いていればいつの間にか幼馴染である牛島若利が、どこから追いついてきたのか私の隣に並ぶ。

「あ……わっちゃん、いた、」
「おはよう、神山」

やはりというか慣れた様子でいつもと変わらない顔色で雪道を歩く彼と手を繋ぎ、いつもよりも少しだけゆっくり歩く。
彼の身長ならこうやって手を繋ぐどころか今のようにコートを着ていなくても見失わずに済むかもしれないけれど、もし普段通りのブレザー姿やジャージ姿で歩いていたら雪に紛れて見えなくなってしまうだろう。それ以前にもしその服装で歩いていたらさしものわっちゃんでも風邪を引いてしまうか――なんていらぬ心配をしながら歩いていれば私の方が足を滑らせたのか、あろうことか私と手を繋いでいたわっちゃんまで巻き添えにする形でバランスを崩し雪の上に沈み込んでしまった。

「わっ……ちゃん、」

2人分の体重を受け、ふかふかの雪は私達を簡単に飲み込む。私はともかく普段体幹がいいはずの彼が転ぶとは珍しいとも思ったけれど、部活用のバッグを持ってきていたせいもあるのだろう。
目の前には彼の顔――ではなく、彼のコートの前ボタンがあって。私は仰向けで転んだせいもあり、彼によって雪の上に押し倒されたような形になっていた。

「ごめん、わっちゃん……巻き込んで」
「別に構わない。俺がお前の手を取っていなければ、お前が滑ることもなかっただろう。……ほら、立てるか」
「あ、うん……ありがと、」

幸いすぐに体勢を立て直し私よりも先に立ち上がった彼が、相変わらず無表情で手を差し出す。雪のように冷たい彼の手を握れば、彼もまたいつものように私を引っ張り上げてくれた。
そんな様子を心配したのかそれともただの野次馬なのか、周りにはいつの間にか人だかりができていて。「牛島くんが転んでるところ初めて見た」だとか、「神山さん大丈夫だった?」だとか、そんな声が私達の周りから飛んでくる。

「ありがと、私は平気。それより、早く行かなきゃ」

コートに纏わりついた雪を払い落としながら軽く会釈をし歩き出せば、人だかりも追随するように学校へと向かっていく。立ち上がった後の雪で覆われた地面は、2人分の跡が残っていた。
再び雪に足を取られないようにと歩幅を小さくしつつ歩いていくにつれて周りの生徒達の人数は増えていき、やがて雪かきをしている先生達が見え始めた。
この先の校門をくぐれば、私達の学び舎だ。

「おはようございます!」
「はい、おはようございます」

荷物を置いたら、自販機でココアでも買いに行こうか――そんなことを考えながら私はわっちゃんと2人、白鳥沢学園の門をくぐった。

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