ンディング分岐

【粉かけたり印使ったり】
 白いまどろみの中、あなたは思い出す。世界が崩壊した時のことだ。
 2人で朱鷺坂市を歩いて回っていた。買い物や散策をしながら、普通の恋人のように。愛するものとの時間はかけがえのないものだ。
 しかし、その時間は呆気なく終わりを迎える。
 世界に、邪神が招来された。呪文を唱えた愚かな人間は死に至り、責任追及など行う先がない。否、そんなに余裕はない。
 知性のない神は、その欲のままに世界の破壊を開始した。地は割れ、海は波打ち、空は砕け、世界が壊れていく。壊れていく。
 あなたと彼もまた、その崩壊に巻き込まれた。ひと一人の命などあっけなく幕を下ろすものだ。しかし、あなたは願った。
 少年いわく0でないあなたは、願ってしまった。
 どうして、こんな目に遭わないといけないの。
 その想いが、憤りが、憎悪が、悲しみが、あなたを突き動かす。
 …………あなたはトリガー(切っ掛け)だ。周囲の人間の魂から同等の感情を受け取り、巻き込み、そして命を確立させた。
 帰って欲しい。消えて欲しい。
 そんな思いから、邪神の退散が行われた。あなたが受け取った魂の持ち主の中に、その呪文を知る者がいたのは不幸か幸いか。
 あなたは人の身でありながら、生と死の境で邪神の退散を成し遂げた。成し遂げてしまった。残骸が残っているとはいえ、ほぼ大半をだ。
 その代償に、あなたの存在もまた消えることとなった。邪神招来も、あなたの存在もなかったことになって、だから、世界崩壊もなかったことになって。

 けれど。
 けれど、それを良しとしない者がいたのだ。全てを見ていたオブザーバー(観測者)。見ていることしか出来なかった彼。

 彼は、本来許されざる立場であったというのに手を伸ばした。
 3/4。世界が崩壊した、存在しない1日。本来の時間軸のまま進むところから引っ張ってきたビルを中心に、矛盾を突いて彼女の存在を矛盾の中で確立させようとした。

 許されないことでも。報われないことでも。終わった世界の話でも。
 お前がいるなら、この世界はまだ終わっていないと。

 ここはアスガルド。神の世界。死の定めを持つ人の世界でも、死に囚われた死者の世界でもない。死を覆そうとした男と、神を退けた女と、どこかの世界で無知にすべてを滅ぼした邪神のいる世界。



 ──あなたの矛盾は確立された。
 正規の世界とリンクしているあの建物の中で、3/5にあなたがいると証明される書類が出された。ならば、正規の世界でもあなたがいなくてはいけない。
 そう定められている。

 目を覚ます。見慣れた天井に迎え入れられる。優しい空気だ。外から鳥の鳴き声がする。学生の笑い声がする。暖かなベッドが、あなたを包んでいる。

END1 明日にたどり着く


【アザトース招来 退散】
 夜。必死に眠気に耐えながら、あなたはその時を待っていた。脳に刻まれた不思議な記憶が、「呪文は夜に行うべきだ」と訴えるからだ。
 日が沈む。あなたは必死に意識を保ちながら、時を待つ。

 ──完全な夜が訪れた。

 あなたの口から、この世に存在してはいけない、おぞましい呪文がこぼれおちる。身の毛がよだつ恐怖、脳を壊さんばかりに暴れ回る睡魔。そのふたつを押し殺し、あなたは呪文を唱え続ける。
 1d10の正気度喪失を行ってください。これによる発狂は起こりえません。
 どこかに居る邪神を消すために。帰らせるために。ここに安寧を取り戻すために。あなたはひたすら、呪文を唱え続ける。

 ここで任意のマジックポイントの支払いをお願いします。

 その瞬間、空が堕ちた。否、幕が、上がった。

 ──宇宙だ。そう感じる。どこまでも続く宇宙は永遠の象徴である。永久とも呼べるそれは、つまるところ虚無の地平とも感じるだろう。終わりがない。混じり合わない。終止符がない。
 それは、無限だ。
 あなたの目の前に、今無限が広がっていた。

 …揺らめく。宙が動く。どろり、溶けた。否、それは常に様々な形に蠢き、泡立っている。黒い塊は形が定まらず、不定形という言葉が似つかわしい。
 これは宇宙だ。これは原子の宇宙である。そして、影である。

 マウス・オブ・マッドネスにて眠っていた、すべての法則を狂わせる存在。時間を超越した沸騰する混沌の中心。原子の宇宙、邪神「アザトース」との邂逅です。1d10/1d100の正気度チェックをお願いします。

 あなたは震える舌で、呪文を吐く。帰れ、帰ってくれ、と願う。
 呪文が完成する、その瞬間。──目の前が真っ白に染まる。
 そしてあなたは、
 何となく、既視感を覚えた。


 白いまどろみの中、あなたは思い出す。世界が崩壊した時のことだ。
 2人で朱鷺坂市を歩いて回っていた。買い物や散策をしながら、普通の恋人のように。自分と彼は恋人関係ではないが、お互いがお互いを思いあっていることを知っている。愛するものとの時間はかけがえのないものだ。
 しかし、その時間は呆気なく終わりを迎える。
 世界に、邪神が招来された。呪文を唱えた愚かな人間は死に至り、責任追及など行う先がない。否、そんなに余裕はない。
 知性のない神は、その欲のままに世界の破壊を開始した。地は割れ、海は波打ち、空は砕け、世界が壊れていく。壊れていく。
 あなたと彼もまた、その崩壊に巻き込まれた。ひと一人の命などあっけなく幕を下ろすものだ。しかし、あなたは願った。
 少年いわく0でないあなたは、願ってしまった。
 どうして、こんな目に遭わないといけないの。
 その想いが、憤りが、憎悪が、悲しみが、あなたを突き動かす。
 …………あなたはトリガー(切っ掛け)だ。周囲の人間の魂から同等の感情を受け取り、巻き込み、そして命を確立させた。
 帰って欲しい。消えて欲しい。
 そんな思いから、邪神の退散が行われた。あなたが受け取った魂の持ち主の中に、その呪文を知る者がいたのは不幸か幸いか。
 あなたは人の身でありながら、生と死の境で邪神の退散を成し遂げた。成し遂げてしまった。残骸が残っているとはいえ、ほぼ大半をだ。
 その代償に、あなたの存在もまた消えることとなった。邪神招来も、あなたの存在もなかったことになって、だから、世界崩壊もなかったことになって。

 けれど。
 けれど、それを良しとしない者がいたのだ。全てを見ていたオブザーバー(観測者)。見ていることしか出来なかった彼。

 彼は、本来許されざる立場であったというのに手を伸ばした。
 3/4。世界が崩壊した、存在しない1日。それを確立させようとした。再び呪文を使い完全に邪神を消し去ることで、「なくした」という部分に上書きで「なくしたという事実があった」と証明しようとしていた。

 許されないことでも。報われないことでも。終わった世界の話でも。
 お前がいるなら、この世界はまだ終わっていないと。

 ここはアスガルド。神の世界。死の定めを持つ人の世界でも、死に囚われた死者の世界でもない。死を覆そうとした男と、神を退けた女と、どこかの世界で無知にすべてを滅ぼした邪神のいる世界。


 ──あなたの存在は証明された。邪神を完全に退散させたことで、全てが覆った。
 「退散させた」という事実があったと、証明されたのだ。
 あなたは存在していた。ここに居たのだ。そして、世界の流れは再び元に戻る。正規の世界へと。

 目を覚ます。見慣れた天井に迎え入れられる。優しい空気だ。外から鳥の鳴き声がする。学生の笑い声がする。暖かなベッドが、あなたを包んでいる。

END2明日の証明

【エレベーターを開ける】
 チン、と軽快な音を立ててエレベーターが開く。悪寒に逆らうようにして開けた扉の向こうには、拍子抜けするように何もいなかった。なんだ、とあなたはほっと肩の力を抜く。ただ少し暗いだけだ。そうまるで、
 誰かの影を隠すように。

 瞬間、影から伸びた腕にあなたの足が恐ろしい力で引かれた。突然のことにバランスを崩し、あなたの体は地面にたたきつけられる。痛い、と悲鳴をあげる余裕もない。あなたの目は、闇の向こうに固定されたままだ。

 エレベーターの扉の向こうがわ。くすくす、くすくすと声がする。笑い声がする。
 むかえにきたよ
 と
 こえがする
 ダメだ、と警報が鳴った。耳の奥が痛い。頭が痛い。目から涙が止まらなくなる。
 べたり。影から何かが這い出してくる。腕の持ち主だろう。それはわななきながら、くすくす笑って、体を起こした。

「みぃ つけた 」

 それは真っ黒な、「私」だった。

 END3明日が迎えに来る


【電車に乗る】

 白いカード──定期券を手にして、あなたは改札口の前まで来た。ふつうのICカードがするように、同じように機械に翳す。ピッ、と音を立ててゲートが反応し、開いた。そのまま勧めるようになる。
 KPCは定期券をもっていないので、あなたと同じようにすすむことはできない。

 ホームへと降りる。すると、タイミングを見計らったかのように電車がやってきた。ラインのひとつ、窓ひとつない真っ白な風貌。あなたの目の前に止まり、あなたの目の前が開く。電車に乗れるようになる。
 こちらは快速、明日行き。明日行きでございます。
 あの少年の声がする。導かれるようにして、あなたは電車に乗った。

 車内も恐ろしい程に白かった。適当な座席につき、発車を待つ。
<目星>路線図が目に入る。そこには「皇還線」と書かれていた。
 やがて、電車が発車する。窓ひとつない車内からは、外の様子を見ることが叶わない。

「これで良かったの?」

 気がつけば、あなたの隣に少年がいた。いつもの笑顔ではなく、少しだけ困ったような顔をしてあなたを見ている。それに答えるすべを、あなたは持たない。

「…………まあでも、人間らしくて可愛いね」

 ぽつりと漏らした少年の言葉を機に、抗いがたい睡魔があなたを襲う。優しく誰かに頭を撫でられた感覚と共に、意識を手放した。

 目が覚めると、あなたはベッドの上にいた。何をしていたのだったか、ああそうだ。昨日は珍しく重なったオフを利用して、KPCと朱鷺坂市で遊ぶ約束をしていたんだった。けれど本当に珍しく、否初めてKPCがあなたと約束した場所に訪れなかった。寝坊かと待ってみても連絡はなし、数時間たとうと音沙汰もない。ついには彼の家を訪れたが、中はもぬけの殻ときた。彼の実家にも連絡を取って、友人も尋ねて。それでも、彼の消息は掴めない。ながて行方不明事件として、彼の捜索が開始された。

「3/4を以て行方不明となり──」

 あれから、記憶の中の彼はずっと3/4に囚われたままだ。

END4明日にあなたがいない

【戦闘に負ける】
 なんで、と声にならない声が耳をつく。目に切ない色を乗せたKPCは、ゆっくりとあなたの目を手で覆った。目の前が暗くなった途端、眠気が襲い来る。なんで、とまた、口を開いた。声は出ない。

「お前のためだと言ったが、ほんとうは、俺のためでしかないんだ」

 小さな声が落ちてくる。薄れゆく意識の中で必死に神経を研ぎ澄ませるが、刻一刻と限界へと足を向けていた。

「また、明日の今日で」

 あなたの意識は闇へと沈んだ。

END5明日は今日のまま