特技と不特技

葵「なんでこの学校料理関係なさそうなのに、料理の専門学とかあるんだろうね」
奏「作ったものタダで食べれるから私としてはありがたい!」
葵「奏ちゃんらしいね」
奏「今日は確かクッキーだったよね」
葵「お菓子なんだね」
奏「それは思った、普通のご飯じゃないんかーいって」

星野と天音はロッカーに荷物を預け、授業で使用するためのエプロンを着用した。
髪の長い生徒は髪を括る事になっているため、星野は下の方で2つに括り、天音は高めに1つに括った。

葵「エプロン貸してくれてありがとね」
奏「気にしないで!やっぱり葵ちゃんは紺色似合うね」
葵「そ、そうかな」
奏「そうだよ!景光見惚れちゃうかもねー!」
葵「え、景光くんもこの授業取ってるの!?」
奏「そうだよ。れーくんが景光に少しでも料理出来るようにさせるって意気込んでたし」
葵「料理できないんだ」
奏「景光と葵ちゃんがグループ組んじゃえば一緒に料理出来るね!」
葵「一緒にかあ…」

星野と天音が調理室に入ると奥の方に降谷と諸伏がいた。
そこには萩原と松田の姿もあった。
周りにいるこの学校の数少ない女子達は奥にいる顔面偏差値高めの4人にいつ声をかけようかと目がギラギラと光っていた。

「萩原くん!!!一緒にやろうよ!」
「私と一緒に作ろう?料理得意だし!」
萩「んー、そうだなー…」

「ま、松田くん、あのっ…よかったら一緒に」
松「悪い、組むやつもういるから」

「降谷くん!あのっ、よかったら一緒に料理しませんか?」
零「すみません、もう一緒に組む人いるので」

「諸伏くん!」
「いや、諸伏くんはダメだって、彼女いるし」
「え、そうなの!?」
「サークルの歓迎会の時にね、あそこの入口にいる星野さんと付き合ってるぽかったし」

零「フッ…」
景「零!!!」
萩「くっついたの知らなかった」
松「想像以上に早かったな」
景「いや、実はさ」

諸伏が先日の歓迎会での事を萩原と松田に周りに聞こえないように伝えると、2人は爆笑をし始めた。

松「入口のとこにいる星野を迎えに行かなくていいのかよ?彼氏さん」
景「…言うんじゃなかった」
萩「あ、葵ちゃんたち話しかけられてる」
景「…行ってくる」
萩「松田も行かなくていいのかよ?」
松「は?」
萩「隣に住んでるの、奏ちゃんだろ?」
松「なんで知って…」
萩「奏ちゃんの話聞いてたらピンときちゃった」
松「…隣に住んでたらなんだよ」
萩「べっつにー」


「あの、星野さん!」
葵「えっと、なんですか?」
「よかったら一緒にグループ組みませんか?」
奏「葵ちゃんモテモテ〜」
葵「もう!奏ちゃんからかわないでよ」
奏「ごめんごめん!申し訳ないけど、葵ちゃんはあっちに組む人いるから!」
「そ、そっか…じゃあ今度また誘うよ」
景「だめ」
葵「ひ、景光くん!?」
景「次もその次も、星野は俺と組むから」
奏「(やるじゃん、景光)じゃ、葵ちゃんGOOD LUCK!!」
葵「ええ!?奏ちゃんどこ行くの!?」
奏「今回はグループ5人1組だし、私は別のグループに行くよ。大丈夫、料理はれーくんが得意だから。じゃあ景光、葵ちゃんをよろしくー」

天音は諸伏の方へ星野の背中を押した。
そして別のグループの方へ向かった。
星野と諸伏は1番奥の料理場に行くと、萩原が話しかけてきた。

萩「てっきり奏ちゃんもこっちに来るのかと思った」
葵「5人1組だからって」
萩「そっか」

萩原と星野が松田の方を見ると、松田は別のグループに行った天音を黙って目で追っていた。

零「ゴホンっ…ほら、クッキー作るぞ」

今回授業を担当する外部の教授からレシピを受け取り、料理は開始された。
諸伏と星野は1つずつ降谷から出された指示に従い、いつもより順調に調理を進めていた。
一方、萩原と松田は萩原が失敗する度に、松田がフォローし、なんとか調理を進めていた。

零「萩はヒロ並に料理が苦手なんだな」
萩「俺は食べる専門だし」
松「少しは出来るようになれよ」
景「星野、型抜きどれ使う?」
葵「丸いのだったらやりやすいんじゃないかな?」
景「じゃあ、それにする」
萩「…なんかあの2人、本物の恋人みたいだよな」
松「星野が自覚すればすぐにくっつくんじゃね?」

話しながら、それぞれ作った生地の型抜きをし、クッキングシートを引いてオーブンに入れ焼いた。
焼き終わり、オーブンから出すと美味しそうな香りが漂ってきた。

萩「俺天才じゃね?」
零「ほとんど松田のおかげだろ」
葵「おいしい…降谷くんのおかげだよ!ありがとう」
景「俺も星野が作ったやつ食べたい」
葵「いいよ、はい」
景「…ん、おいしい」

星野がクッキーを摘み、諸伏に差し出すと、諸伏はそのままパクリとクッキーを食べた。
それを見ていた萩原達は「(本当に付き合ってないのか?)」と思ったが口には出さないでおいた。
諸伏を狙っていた女の子は授業は終わっていなかったが泣きそうな表情で部屋から出ていった。
授業で作ったクッキーは袋に入れて持って帰ることが出来たため、みんなは袋につめた。
授業が終わると袋を持った天音が星野を迎えにやってきた。

奏「葵ちゃん着替えに行こー!」
葵「うん!今行く!」
奏「お、ご機嫌だね、上手くいった?」
葵「うん、景光くんにおいしいって言ってもらえた!あとね、景光くんが作ったクッキーと交換したの」
奏「よかったじゃん!もう付き合いなよ」
葵「そ、そんなんじゃないってばっ」
奏「照れちゃってかーわいっ!」

星野と天音は楽しそうに話しながらロッカーに向かったのであった。
2人はエプロンを外し、荷物を持って部屋を出ると降谷達が外で待っていた。
6人は合流すると楽しそうに話しながら食堂へ向かった。

諸伏と星野が幸せそうな表情で話しているのを見て、降谷は優しく微笑んでいた。


続く