GW宅飲み

5月初旬。
世間は黄金週間真っ只中。
それは学生達も同じであった。
天音はチャットアプリを開き、トークからある名前を探した。
そして目的の名前を見つけるとトーク画面を開いた。
"起きてる?"と打って送信すると、相手はすぐに既読となった。

"起きてる。どうした?"
"一緒にゲームしよー?"
"鍵開けたからいつでも来いよ"
"今行く!"

天音はウキウキ気分でゲーム一式と必要最低限の物を持ち、外出をした。
と言っても、行先は隣の家だった。

奏「お邪魔しまーす!」
松「来るの早い」
奏「いつでもって言ったの松田じゃん!」
松「まあ、そうだけど。とりあえず飲み物買いに行ってからやろうぜ」
奏「うん、わかった!」
松「…お前、その格好で行く気か?」
奏「そうだけど?」
松「はあ…。これ着とけ」
奏「えっ」

松田はクローゼットから1着上着を取り出すと、天音に押し付けた。
天音は受け取った上着に腕を通すと思っていた以上にぶかぶかで松田との体格差を感じた。

奏「ぶかぶか」
松「そもそもそんな薄着で来るからだろ」
奏「だって外行くって思わなかったんだもん」

松田と天音は話しながらも家を出た。
ついでに夕食の材料まで買うことにしたため、スーパーに向かうことになった。

奏「ねえねえ」
松「なんだよ」
奏「夕食、鍋にしない?葵ちゃんと萩原も呼んでさ!」
松「…別にいいけど」
奏「じゃあ、呼ぶから携帯貸して」
松「は?」
奏「どうせ3人のグループあるんでしょー?そこに投げるから貸して」
松「はいはい」

天音は松田から携帯を受け取ると、メッセージアプリを立ち上げた。

"松田:今日の夜暇か?19時以降"
"萩原:暇だよん"
"星野:私も暇だよ!"
"松田:鍋するって言ったら来るか?"
"萩原:いいねぇ!行く!"
"星野:行きたい!"
"松田:じゃあ19:00俺ん家集合"
"萩原:りょーかい!"
"星野:はーい!"

奏「はい、2人とも来るって」
松「わざわざ口調真似してる…」
奏「松田っぽいでしょー?」

松田は天音から携帯を受け取ると天音が送った内容を確認して苦笑した。
そして2人は飲み物だけではなく、夕食で使う材料も買い込み松田の家に戻った。


18:00頃になり、萩原と星野が来るまで残り1時間となった頃に2人はゲームを辞めた。
そして天音は松田の家で鍋の準備を始めた。
松田は部屋で食べれるように片付けを始めた。
そして19:00になる5分ほど前に松田の家のチャイムがなった。

奏「はーい!いらっしゃーい!」
萩原「へ?」
葵「えっ?」
奏「もう準備出来てるよ!あがってあがって!あ、手は洗ってね!」

松田の家のドアを開けたのは家主の松田ではなく天音だった。
予想外の人が迎え出たことに萩原と星野は突っ込めず天音に言われたとおり、松田の家にあがった。
部屋にいた松田を見かけるなり、萩原と星野は松田の傍に行った。

萩「なんで奏ちゃんがいるの!?」
松「そもそもあの連絡送ったのアイツ」
葵「え、そうだったの!?」
奏「とりあえず2人とも座って!」

天音が準備していた土鍋を持ってテーブルに運ぼうとした時に松田が天音の傍に行った。

松「貸せ」
奏「ありがとう」
松「おう」

葵「松田くんと奏ちゃんの距離が近い…」
萩「学校の時と違くない?」
葵「そうだね。しかも奏ちゃんが着てる服って松田くんのじゃ…」
萩「あ、本当だ」

ボソボソと話す萩原と星野に、テーブルに戻ってきた松田と天音は、なんだ?という表情をした。

奏「今回は水炊きだよ」
萩「お、美味そう」

みんなで天音が作った鍋を食べ、シメの雑炊まで見事に食べ切った。

萩「洗い物は俺がやるよ」
葵「大丈夫?」
萩「洗い物ぐらいならできるできる」
奏「って萩原、そのままだと袖濡れるじゃん!」

「まったくー…」と言いつつ、萩原の傍に行き、萩原の袖口を捲った。
萩原は思った以上に近くにいる天音に対して「奏ちゃん近い」と言うと天音も近すぎる距離に対してて顔が熱くなった。
そして「ごめん」と顔を逸らして呟いた。

葵「松田くん、顔怖い」
松「は?」
葵「奏ちゃんと萩原くんは友人なだけだよ」
松「俺だってそうだろ」
葵「じゃあ何でそんな怖い顔してるの」
松「…怖い顔してたか?」
葵「嫉妬してます!みたいな顔してたよ」
松「嫉妬…」
奏「ん?どうしたの?」
葵「松田くんが嫉妬してます!みたいな顔してたの」
奏「えー?心配しなくても萩原は取らないって!ね?」
松「なんでお前に嫉妬してることになってんだよ」
奏「萩原親友でしょ?大丈夫取らないから」
松「はぁ…」

松田は溜息をつき、星野は苦笑をした。
その時、洗い物を終えた萩原が冷蔵庫から何やら缶を数本取り出し持ってきた。

萩「飲む人ー?」
葵「え、それお酒…」
奏「飲むー!」
松「俺も」
葵「えええっ!?」
奏「まあ、いつかサークルとかで飲んで潰れる前に、今飲んで慣れた方がいいじゃん?」
萩「奏ちゃんサークル入ってないじゃん」
奏「葵ちゃんに言ってんの!」
葵「じゃあ、少しだけなら」
奏「やった!」

星野はゆっくりとしたペースで、萩原と松田はガンガンと早いペースで飲んで、天音は萩原と松田よりは遅いが結構なスピードで飲んでいた。

奏「なんか寒くなってきた」
萩「ブランケットいるー?」
奏「うん、貰おうかな」
松「奏」
奏「え?うわっ」
松「くっつけば暖かいだろ」
葵「松田くんだいたーん!」
奏「ちょっ、松田酔ってんでしょっ」
萩「俺もくっつきたーい!」
松「くっつくな」
奏「葵ちゃん助けて」
葵「諦めて松田くんに捕まっててくださーい!」
奏「ええ…。ねえ、松田もう家帰って寝たいから離して?」
松「このまま寝たらいいだろ」
奏「はぁ…もういい。寝る」

気付けば4人とも寝落ちていた。
天音は星野を抱きしめ、天音を後ろ松田が抱きしめ、松田を後ろから萩原が抱きしめて寝ていた。
4人とも朝目覚めると体中バキバキだった。

GWはまだ始まったばかりだ。


続く