GW中旬

GW中旬
星野は1人で大型ショッピングモールに来ていた。
1人で何をしていたかというと、楽器屋に入り楽譜を見ていた。
どの楽譜を買おうか、むむむっと真剣な表情で悩んでいたところ、右肩を誰かに突かれた。

奏「おねーさん、1人なら私たちと遊ばない?」
葵「奏ちゃん!?」
景「俺と零もいるよ」
零「今日は萩と松田はいないのか?」
葵「いないよー」
奏「一緒に遊ばない?」
葵「遊ぶ!」
奏「決定〜!景光は葵ちゃんエスコートしてね!」
景「エスコートって」
零「ヒロ頑張れ」
景「零まで言うのか」
奏「景光ならできるでしょ!」
景「…ところで星野は何か買うのか?」
葵「うーん。楽譜買おうかと思って来たんだけどまよっちゃって」
景「あ、この曲オススメ」
葵「え、どれ?」
景「上から3番目の曲」
葵「あ!これ私も好きなの!これにしちゃおうかな」
景「いいと思う。もし弾けたら一緒に合わせないか?」
葵「うん!合わせたい!」

奏「あー、変にくっつけようとしなくても自然にくっつきそうだよね」
零「まあ、そうだな。時間の問題だろうな」
奏「ところでれーくん。私ゲーセンに行き」
零「ダメだ」
奏「せめて最後まで言わせて!?」
零「奏がここに来る前にゲーセン行こうとしたら止めてくれって言っただろ」
奏「おっしゃる通りです、はい」

いつの間にか楽譜を持ってレジに並んでいた星野を見守りつつ、諸伏は降谷と天音のやり取りを「またか」という目で見ていた。

楽譜を買い終わった星野は3人の元へ戻って来ると首を傾げて「今から何するの?」と聞いた。
降谷と諸伏は天音に視線をやると、天音は自信満々に「ノープラン!」と笑って答えた。

景「星野は何したい?」
葵「うーん。そうだなあ…。」
零「奏はいつもノープランだからな」
奏「行き当たりばったりが楽しいんじゃん!」
景「天音らしいな」
奏「あ」
葵「なにか思いついたの?」
零「…嫌な予感がする」
奏「れーくんと景光のデートエスコート対決!」
景零「「却下」」
奏「えーじゃあ2人も案出してよ」
景「無難に映画とか?」
零「カラオケとか?」
奏「ボーリングとか?」
零「ボーリングいいかもな」
葵「萩原くんと松田くんも呼んじゃう?」
景「楽しそうだな」
奏「じゃあボーリング決定!」

4人はボーリング場に移動しながら、星野が萩原と松田に連絡をとった。
そして偶然近くで遊んでいた萩原と松田とは早めに合流することができ、6人集まったのでボーリングの受付をした。
ボーリング場のシステムは最新の物で、チームを自分達で設定したりすることが出来た。
6人はスマホのアプリを使って2人1組のチームを決めた後にチーム設定をした。
チームとしては諸伏と星野、萩原と天音、降谷と松田のチームとなった。
星野と天音にはハンデとして1ゲーム30点追加されることになった。

葵「景光くん頑張ろうね!」
景「ああ。一緒に頑張ろうな」
奏「打倒イケメンチーム」
萩「目がガチで怖いって」
奏「あれ見てよ、周りの女子達あの2人見てキャーキャー言ってるし」
萩「打倒イケメンチーム」
葵「萩原くん、奏ちゃんと同じこと言ってる」
景「はははっ、仲良いな」
松「なんか萩原たち睨んできてねえか?」
零「絶対1位とる」
松「容赦なしかよ」

ゲームが始まるとそれぞれのチームの雰囲気にかなりの差があった。
諸伏・星野ペアはお互い投げる度に応援したり、ストライクやスペアを取って喜ぶ星野の頭を諸伏が優しく笑いながら撫でたりしていた。
まさにデートしているカップルのようだった。
その隣のレーンにはチーム内でスコアを競い合う松田と降谷がいた。
お互いストライクやスペアを取ると拳を合わせたり、お互いに「負けない」と言いながらゲームを進めていた。
その隣のレーンには、自由人の2人がマイペースにゲームを進めていた。
萩原がボールを投げている間に天音は皆の写真を撮っており、ストライクを取った萩原が振り返って「今の見た!?」という言葉に対して「見てなかった」と返していた。

結局チーム優勝したのは降谷・松田ペアだった。
萩原・天音ペアと諸伏・星野ペアはあまり点数に差がなかった。
そして天音は6人のメッセージグループに先程の写真を貼り付けて共有をした。

奏「葵ちゃん葵ちゃん!」
葵「なーにー?」
奏「この写真すごいカレカノっぽい」
葵「あああ〜恥ずかしい!」
奏「この写真葵ちゃんと景光だけに送っとく」
葵「景光くんにも送るの!?」
奏「うん。2人でお揃いの待ち受けとかにしたらー?」
葵「し、しないよっ!そんな本当に恋人みたいなこと…」
奏「景光と葵ちゃんってお似合いだと思うけどなー」

天音はそう言って笑いながら諸伏と星野に写真を送った。
諸伏から「ありがとう」とメッセージが来たのでピースポーズで返事をしておいた。

6人はボーリングで3時間ほど遊んだ後に解散する流れになった。
星野を送ると諸伏が言ったので、2人で帰る流れになった。

景「急に誘ったけど楽しかった?」
葵「うん、すごく楽しかったよ」
景「それなら良かった」
葵「景光くんは?」
景「俺も楽しかったし、星野とチーム組めて嬉しかった」
葵「そっか。そう言ってもらえると嬉しいなあ」
景「あのさ…」
葵「ん?」
景「もしよかったら今度は2人で遊びに行かないか?」
葵「えっ」
景「あっ、いやそのっ無理にとは言わないけどっ!」
葵「ふふっ」
景「えっ?」
葵「そのっ嬉しくって…今度2人で遊びに行こうね」
景「ああ。約束な」
葵「うん、約束」

星野が笑って承諾すると、景光は安心したように笑った。
そして星野を家まで送ると景光は少し寂しそうに笑って星野の頭を撫で「じゃあまたな」と言って、帰路についた。
星野は景光の姿が見えなくなるまで外で見送った後に部屋の中に入り、両手で顔を覆い隠しへなへなと玄関に座り込んだ。

葵「景光くん、ずるい…」

鼓動が正常の早さに戻るまで時間がかかった星野であった。


続く