送り狼にはご注意を

GWもあっという間に過ぎ去り、季節は5月下旬となっていた。
授業は6月上旬に行われる中間テストに向けた対策の内容が多くなってきている中、サークル等は6月下旬に行われる学園祭の準備に取り掛かっていた。
サークルに入っている降谷、諸伏、星野はサークルに参加する時間が増える中、サークルに入っていない松田、萩原、天音は別の事に時間を費やしていた。
今日は久しぶりに6人が集まり大学で同じテーブルを囲っていた。

零「もうすぐテストだな」
葵「そうだね、嫌だなあ」
萩「って言いつつ葵ちゃんはちゃんと勉強してるんだよね!」
葵「さすがに赤点とる訳にはいかないからね」
松「…お前は勉強してんの?」
奏「んー」
景「天音はさっきから何やってるんだ?」
奏「人と連絡取ってる」
零「人?」
奏「バイト代わってくれって頼まれちゃって」
葵「奏ちゃんバイトしてたんだ!」
奏「実はしてたんだよねー…あーだめだ」
零「どうした?」
奏「私ぐらいしか代替出来なさそう。久しぶりに集まったのにごめん、バイト行ってくる」

天音はそう言うと自分の荷物を持ってその場を去った。
松田は天音の姿が見えなくなるとボソリと呟いた。

松「アイツ最近帰り遅いんだよな」
葵「そうなの?」
萩「何時ぐらい?」
松「日付変わる時ぐらい」
零「ちょっと待て、なんで松田が奏の帰宅時間知ってるんだ?」
松「あー、言ってなかったか?家が隣同士だぜ」
景「だから一緒に大学に来てることが多かったのか」
松「そういうこと」
葵「さすがに0時頃は危ないんじゃ…」
萩「松田、迎えに行ってあげたら?」
松「バイト先知らねえし」
零「……」
景「どうした?零」
零「何のバイトしてるんだろうなと思って」
葵「無難に飲食店とか?」
零「バイトって基本的には近くでやるから、0時に帰ってくるってことは23時に閉店、そこから片付けして23時半頃退勤ってなるだろ?
ただこの辺だと0時閉店の店が多い」
景「そう考えると塾とかは22時には学生を帰らせる必要あるから空白の1時間ができるな」
葵「2人とも探偵みたい」
景「零がこういうの好きだからつい」
零「ヒロだって好きだろ」
葵「ふふっ」
松「それで?結論はどこだよ、探偵さん?」
零「本人に聞く」
萩「はははっそこまで推理してて本人に聞くのか」

この日は特に何をするわけでもなくダラダラと話した後に解散し、それぞれサークルに行ったり、授業を受けに行ったり、帰ったりした。
この日の週の金曜、6人のグループメッセージチャットが動いた。

"天音:ヘルプ"
"降谷:どうした?"
"星野:どうしたの?"
"天音:ご飯誘われたから着いて行ったら合コンだった"
"萩原:彼氏作るチャンスじゃん!"
"天音:あー、確かにそうかもね"
"松田:で?どこに行けばいいんだよ"
"天音:地図送るね。たぶん終わる頃には酔ってると思う"
"諸伏:飲んでるのか"
"星野:松田くんがお迎え行くなら安心だね!"
"萩原:送り狼になるなよー!なってもいいけど!"
"降谷:松田、頼んだ"
"松田:はいはい"

時間より10分ほど前に松田は送られてきた地図の周辺にいた。
しばらくすると男女の集団がお店から出てきた。
その中に天音の姿もあった。

男1「二次会行くぞー」
女1「いくいくー!」
女2「私もー!」
男2「いいねー!」
男3「奏ちゃんも行こう?」
奏「えっ、いや、私は」
男4「いいじゃん!行こ行こ!」
女3「奏も行こーよー!」

3人に囲まれてる天音はハッキリと断れずにタジタジになっていた。
その時、松田が声をかけた。

松「奏」
奏「ま、松田…!」
女3「え、彼氏いないんじゃ」
男4「苗字呼びだから違うんじゃない?」
松「奏がいつもお世話になってます。この後予定がありますので連れて帰りますね。奏行くぞ」
奏「うん!それじゃあ私はここで失礼します!」

天音はペコリと頭を下げて松田と共に集団から離れた。
松田はいつもより足取りがふらついてる天音の荷物を持ち、天音の前に背を向けてしゃがんだ。

松「乗れ」
奏「でも」
松「歩くのしんどいんだろ、いいから乗れ」
奏「ありがと」

松田は天音が背に乗ったことを確認すると立ち上がり歩き出した。
松田の体の温かさと、ゆらゆらと揺れる振動により、眠気が襲ってき、気付いたら寝ていた。

松「着いたぞ。鍵どこだ?」
奏「んー」
松「ダメだ…寝てやがる。まあ俺ん家でいいか。隣だし」

松田は天音を背負ったまま自宅に入り鍵を閉めた。
そして、ベッドに1度天音を寝かせ、台所からコップに水を注いで戻ってきた。

松「ほら少し起きろ、水飲んどけ」
奏「んー…いいー…」
松「明日頭痛くなるぞ」
奏「やー…」
松「じゃあ飲め」
奏「じゃー飲ませてー」

うっすらと目を開けて、えへへっと笑いながら松田を見た天音は水を飲む気がなさそうだった。
松田は1度ため息を着いて天音を見つめた。

松「お前、今どういう状況かわかってんのか?」
奏「…松田?」
松「他のやつの前でそんな姿晒すなよ」
奏「え?…んっ、まつ…だ、んんっ」
松「…わかったか?いつ襲われても仕方ない状況なんだぞ…んっ」
奏「えへへ。仕返し」
松「…お前のせいだからな」

松田は松田のベッドに寝転んでいる天音の上に乗り、何度も唇を合わせた。
うっすら開いた口に舌を入れ、上顎裏をなぞり、舌を絡めるとぴちゃぴちゃと卑猥な音が部屋に響いた。
唇を離すと混ざりあった唾液が銀色の線となって伝った。
天音は完全に思考が停止しており、なんとか保ってる意識のまま松田を見つめた。
松田が優しい手つきで頭を撫でると気持ち良さそうに手の方に擦り寄った。
そして目瞑って眠りに落ちた。

松「…俺が送り狼になってどうする」

数時間前に言ってた萩原の言葉を思い出し、松田はため息をついた。
そして天音の隣に寝転び、目を瞑り眠りに落ちた。


続く