出会い

星野は浮かれていた。
真新しいスーツにいつもより気合いの入れたメイク。
髪はストレートを活かすようにブローをした。
大好きな音楽を聞いて、鼻歌で歌いながらとある場所に向かっていた。
目的の場所に向かうと同世代の人達が沢山いた。
そう、今日は大学の入学式だ。
星野は受付を済ませ、指定された会場へ向かっているとポンポンと右肩を叩かれた。
振り返るとさらさら髪のイケメンがいた。

『えっと…』
景「これ落としたよ」
『あ、ありがとうございます!』
景「どういたしまして」

星野はハンカチを受け取り、拾ってくれた方の顔を見ると、優しく微笑んでいた。
なんだか顔が熱くなった。

景「次は落とさないようにね」
『は、はい!』

彼はもう一度微笑んでから、一緒にきたであろう金髪2人組の所へ戻っていった。

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指定された会場は講義室の一室だった。
学校側は必要事項や今後の指導、行事等を伝えるには各講義室に生徒を割り振り、担当の先生を決めて管理するのが最適だと判断したようだ。

萩「あ、葵ちゃん」
『あ、萩原くん、松田くんもう来てたんだ!早いね』
松「萩原に連行された」
萩「そうしないとぎりぎりにくるだろ!それより葵ちゃん」
『なに?』
萩「何かいいことあった?」

萩原の言葉に星野は顔を赤くした。
そんな星野の表情に何かあったなと察した萩原。
その時、楽しそうに話しながら3人組が教室に入ってきた。
星野は先ほど聞いたばかりの、聞き覚えのある声にピクリと反応し、教室のドアの方を振り返った。

『あっ』

思わず声が漏れてしまった。
楽しそうに笑ってる顔が、ハンカチを拾ってくれた時の笑顔と重なって見えた。
そんな彼の笑顔を見ると、顔に熱が集まった。

萩「(なるほどね)金髪の人?それとの黒髪の人?」
『へっ!?なんこと!?』
萩「葵ちゃん顔赤いよ?ね、松田…松田?」
松「…っ!ああ、顔赤いぞ」
『き、気のせいだよ』

星野は笑いながら顔の熱を冷まそうとぱたぱたと手を仰いだ。
その時、先ほど教室に入ってきた3人組のうちの1人が声を上げた。

奏「あ!ハンカチの子いるじゃん!」
零「ああ、いるな」
奏「景光、れーくん、行こ!」
景「うおっ!?」
零「わかったから引っ張るな」
奏「ねえねえ!ハンカチの子!」

金髪の髪の長い子が先ほど話題に上がっていた金髪と黒髪の腕を引っ張って星野の元へやってきた。

奏「さっき景光にハンカチ拾って貰ってた子だよね?あ、景光ってこの黒い方なんだけど!」
『え?は、はい。あの、先ほどはありがとうございました』
景「あ、ああ。どういたしまして」

火照った顔でお礼を言う星野と、星野ほどではないが若干火照った顔で返事をする諸伏。
そんな光景を見て「やっぱり」と呟いて金髪の髪の長い子がクスクスと笑った。

萩「葵ちゃんの友達ってわけではなさそうだね」
零「ああ、今日初めて会った。こいつが」
景「さっきハンカチ落としてたから拾って渡しただけだよ」
萩「ああ、なるほど。何かの縁だと思うし、友達にならない?俺、萩原研二、よろしく」
零「降谷零だ。こいつは諸伏景光」
景「ははは、よろしく」
『星野葵です』
松「松田陣平だ」
奏「うわ、れーくんよりイケメン初めて見た」
零「先に自己紹介しろ」
奏「はいはい、天音奏!よろしく」

6人は近くの席に座り、この講義室の担当の先生が来るまで話していた頃にはすっかり打ち解けていた。


星野と諸伏との出会いは新しい生活の初めの日だった。
あの日の彼の笑顔に恋をしたことを自覚するのは、まだ先の話。



続く