作戦会議と実行

天音は不機嫌だった。
険しい表情のまま降谷の携帯を操作していた。

零「俺が伝えなくても知ってたんだな」
奏「まあね、でもやっぱり腹立つ」
零「…で、どうするんだ?」
奏「どうせならあの人の心をポキッとやりたいよね、現行犯捕まえるしかないか」
零「言うと思った」

天音と降谷の会話が途中から聞こえてきた星野と萩原は「なんか怖い話してる」という目で2人を見ていた。

『奏ちゃんどうかしたの?』
零「あー…」
奏「浮気野郎を泣かせてあげようと思って」
『え!?』
萩「待って、奏ちゃん彼氏いたの!?」
奏「え?うん。浮気野郎だけど」
『そんなの、別れた方がいいんじゃ…』
奏「それがね、なかなか別れてくれないんだよ。だから現行犯逮捕しようかと」
萩「奏ちゃんはそれでいいの?」
奏「いい、別に好きで付き合ったとかじゃないし」
零「だから断れって言ったのに」
奏「恋愛なんてその場のノリとタイミングでしょ」
零「強がり」
萩「悪女だ」
奏「萩原には言われたくないなー、よくいろんな女の子捕まえてるじゃん」
萩「なんで知ってんの!?」
『あ、認めた…』

「今は俺の話はいいの!」っと萩原は少し拗ねた表情をした。

『それで、結局どうするの?』
奏「今週の土曜日に会う約束してるから、まずはそれを断る!そしたら、きっと浮気野郎は別の子を誘うと思うから、そこを狙う予定」
『え、でも場所どこで会うとかわからないんじゃ…』

星野の発言に天音はニヤリと笑った。

奏「元々映画行く予定だったの。だから前売り買ってて。それを断ればチケット余るでしょ?きっと誰か誘うはず」
萩「降谷、俺、奏ちゃんが怖い」
零「怒らせるようなことやらなきゃいいだけだろ」
萩「確かにそうだけど。…1ついい?」
奏「ん?」
萩「奏ちゃんって髪明るいし目立つよね、だからバレないのかなって」
『ウィッグ使って髪色変えるとかどうかな』
奏「おお!頭良い!採用!」
『え!?本当にそれでいくの!?』
奏「あま〇んでポチれば明後日には届くからそうするよ」

天音は土曜日に作戦を決行することを決意した。
降谷にも着いてきてもらうことになっている。
星野と萩原も心配でついて行くことに決めた。

そして土曜日。
学力テストも無事に終え、ついに作戦を決行する日がやってきた。
天音は茶色のウィッグを被り、降谷と同じ席にいた。
その席の近くには標的である天音の恋人と知らない女の子が座っていた。
星野と萩原は標的と実行組の両方が見える少し離れた席につき、心配そうに見ていた。
標的である恋人と女の子の距離は近く誰が見てもイチャついてるカップルに見えた。

零「…大丈夫か?」
奏「言い逃れできない決定的瞬間撮らなきゃ意味ないよね」
零「そうだな」

『奏ちゃん大丈夫かな…』
萩「強がってそうだよねー…」

暫く観察していると標的と一緒にいる女の子が顔を近づけた。
天音は携帯のカメラを起動し2人に向けた。
そして2人がちょうどキスをしたタイミングでカメラのボタンを押した。
カシャッとカメラの音が鳴ると2人はチラリと天音の方を見た。

男「おい、お前今撮っただろう」
奏「撮ったから何?」
女「失礼な人達!早く消してよ!!」
奏「失礼なのは貴方達じゃない?浮気者さん」
男「なんだと?」
零「…自分の恋人が誰かわからないなら別れた方がいいんじゃないですか?」
男「は?何言って…」
天音「髪変わっただけで誰かわからなくなるアホは私には必要ないので別れてください」
女「何この女?」
男「…奏?」
奏「やっと気付いたの?あんたの浮気の証拠ならこの携帯以外にあるから言い訳はいらない。別れて」
男「ああ、別れてやるよ!お前みたいな可愛げのないやつはこっちからお断りだ!一生一人で生きてろ!」
奏「は?イケメンで頭も良くて、運動も出来て、料理も得意な人が近くに居るからとりあえずアンタはいりませーん!」

天音はそう言うと隣の降谷の腕を組んだ。
降谷は天音の強がった態度に溜息をつきそうになったが、そこは抑えた。

奏「貴方も、そんな奴がいいとか目が腐ってるんじゃない?」
女「い、いいわけないじゃない!別にこの人とは遊びだし」

女の子は「それじゃあ」というと鞄を持ってお店から去っていった。
奏「私達も行こう、れーくん」
零「そうだな」
奏「それじゃあ、お元気で。一生一人で生きてろ」

"元"恋人はポカンとした表情でお店から去っていく天音と降谷を見送った。
そして少し離れたところで見ていた星野と萩原は天音と降谷を追うようにいそいそと出ていった。


続く