[1/4]

翌日、朝から訪問だったのであろう。
朝のフロアには彼女の姿がなかった。
そして夕方になると荷物を持って疲れた表情をした彼女がフロアに入ってきた。

「千手さん表情死んでる」
棗「いやあ、さすがに疲れました」
「お疲れ様」
「飴いるか?」
棗「あ、いただきまーす!」

独歩は同じフロアでかつ他部署のところと席が近いため、会話は聞こえていた。
チラッとそちらに視線をやると、先程帰ってきた棗と目が合った。
棗はニコッと笑って口パクでお疲れ様ですと言った。

独「(今日も癒しだ…)」

心の中でお礼を言いつつ、独歩も口パクで棗に向かってお疲れ様ですと言った。



そして、案の定今日も早く帰ることはなく、いつも通り残業をした。
昨日同様、20:00にマグカップを持って給湯室にいった。
今日は昨日と違ってあとから棗がやってきた。

棗「あ、観音坂さんお疲れ様です」
独「お疲れ様です」
棗「…観音坂さん」
独「はい?」
棗「昨日言ったこと覚えてます?」
独「えっと…」
棗「敬語!外してくれなかったらお願い聞いてもらうってやつです!」
独「ああ…お、お願いってなんですか?」
棗「え、聞いてくれるんですか?」
独「まあ」
棗「…独歩さん」
独「えっ!?」
棗「って呼んでもいいですか?」
独「お願いってそれ?」
棗「はい!…やっぱりダメですよね」
独「いい…ですよ」
棗「えっ!?本当ですか!?」
独「ええ、まあ」
棗「やった!あと敬語外してもらえるともっと嬉しいです!」
独「善処…する」
棗「ありがとうございます!それでは!私仕事戻りますね!」

棗は機嫌良さそうにコーヒーを入れ直して、自分の席へと戻って行った。

独「独歩さん…か」

一二三と先生以外で下の名前で呼ばれるとは思っていなかったため、少しだけ気恥ずかしくなった。
なにより、自分が癒しだと思っている人から呼ばれるなんて、こんな事あっていいのかと思いつつ、独歩は喜びを胸にしまい仕事を再開したのであった。

* 最初 | 最後 #
1/4ページ

LIST/MAIN/HOME

© 2018 猫の足跡