追憶.サポート科
10
奏は奇人に出くわした。
というのも、レオとばったり校内で会い、行き先も伝えられぬまま手を引かれてやってきた場所があのValkyrieの城だった。
そこで初めて斎宮宗に出会った。
初対面の奏に原石だなんだ言ってあれよあれよと着替えさせられ煌びやかな衣装を纏った。いや、纏わされたと言った方が正しい。

『あのー…宗さん?』
「ふむ。仁兎と同じぐらいの身長でもさすがに女子と言ったところなのだよ。手直しが必要なようだ」
「わはは!奏似合ってるぞ☆」
『いや、なんで私着せられてるの…。というか、れおくんなんで連れてきたの』
「ん?シュウにはライブで使う衣装のデザイン画頼んでてそれを受け取りに来た!」
『え、ますます私いなくてもよかったんじゃ…』
「大人しくしてるのだよ!手元が狂うだろう」
『は、はい』

とりあえず大人しくじっとしていたら気になっていた箇所をささっと縫い直した宗の腕前に変な人だけど凄いと感動していた。

「よし。着替えていいのだよ」
『あ、はい』
「先程から僕の手元を見ていたようだが、裁縫に興味があるのかね?」
『興味あります!』
「では手芸部に入部し給え。手解きをしてあげるのだよ」
『手芸部…考えてみます』
「よし!奏行くぞー!ありがとな!シュウ!!またな〜!」
『あ、ちょっ、れおくん待ってよ〜!』

奏はぺこりとお辞儀をし、そのままレオの後を追って部屋を出たのであった。

『あ、あれ…れおくん足速い…見失った…』

奏がレオを追うのを諦めて廊下を歩いていると曲がり角で人にぶつかった。
靴の色からして上級生だった。デジャブ…なんて思いながら顔を上げると「お」と言われた。

『…え、零くん?!』
「奏、ここに入学したのか」
「朔間さんの知り合いか?」
「俺の…というか俺の弟の幼馴染の鈴谷奏。ここに居るってことはサポート科か?まあいい、奏も行こうぜ」
『は!?え、ちょ、零くん離して!?』
「久しぶりの再会だ。遊んでやるよ♪」
『結構ですぅ!!私やる事あるのー!』
「入学したてのひよこちゃんの癖に何をやるんだよ」
『先生に呼ばれてるのー!』
「もう何かやらかしたのか?」
『何もしてないと思うけど…とにかく、私行くから!またね零くん!!』
「(朔間さんにあんな態度をとるとは…怖いもの知らずなのか…?)」
「坊主、今失礼なこと考えただろ」

奏は久しぶりに会った零から逃れ、先生より指定された教室へとたどり着いた。
そこには各教室に1人ずついるサポート科の1年生がいた。
なにか説明でもあるのだろうかと疑問に思いながらも適当に席に着くと先生がタイミングよくやってきた。
案の定、サポート科に関する説明だった。

・ライブを行うユニットのサポートを実施すること。
・サポートするユニットに指定はない(個人NG)。
・自分でユニットと交渉しサポートを実施すること。
・またサポート内容は問わない。
・サポートの評価はライブを実施したメンバーと教師が実施する。
・期間は7月半ばまで。

一方的に説明され、では解散と言われたサポート科のメンバーは皆戸惑いを示していた。
奏は説明を聞いている間にメモした内容を読み返したあと椅子から立ち上がった。
その音に我に返った他のメンバーも椅子から立ち上がり教室をあとにした。
奏は、はぁ。と大きなため息をついたあとに、泉より連絡を貰っていた指定のスタジオに足を運んだ。
そこには既に柔軟をしている泉がいた。

「…何その辛気臭そうな顔」
『あー、えっと…泉くん、いや、泉さま!どーかお助けください〜』
「はぁ!?ちょ、抱きついてこないでよねぇっ」
『…とりあえず話聞いて?お兄ちゃん』
「わかったからさっさと離れる!」
『はい、ごめんなさい…』

奏は泉から離れると、先程メモをした内容を泉に差し出した。
泉は一通り読み終わると、ふぅんと言いながら奏にメモを返した。

「それで7月までにライブをして欲しいと?」
『えっと…?まずサポートするのOKなの?』
「はぁ?あんたがこの前、俺とれおくんのサポートするって言ったんでしょぉ!?」
『そう、だけど…ほら、サポート科の試験も兼ねてるし…』
「ここで俺がダメって言ったらどうする気?」
『他の人に頼む…しかない…です』
「その宛はあるわけぇ?」
『無くはないけど…そうなると泉くんたちのサポートにあんまり時間割けなくなるから嫌』
「じゃあ、なんて言うべきかわかるよねぇ?」
『泉くんたちをサポートさせてください。お願い、お兄ちゃん』
「仕方ないからお兄ちゃんが助けてあげる」
『ありがと〜!!』
「わわっ、だから抱きついてこないでよねぇ!?」

こうして奏はサポート科の試験では泉たちのライブのサポートをすることが決まったのであった。

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