追憶.試験の日
15
あっという間に試験の日、所謂バックギャモンのライブの日になった。
この日ばかりは泉だけでなく、レオと嵐も舞台裏にいた。
普段3人が集まることは滅多にないが、今回のライブは奏の試験も兼ねていたので、3人が協力してくれたのだ。
学院内だけではなく、外部からもお客様が来れるように準備していたため、客入りは上々だった。
奏が作った衣装を身にまとった3人に奏はニコニコと笑いながら声をかけた。

『3人共すごくかっこいい!』
「当たり前でしょ〜」
「奏ちゃんのために今日は頑張っちゃう♪」
「わはは!すでに楽しいぞ!」
『泉くん、レオくん、なるくん、ちゃんと見てるからね』
「ああ、ちゃんと見てくれよな!」
「ふふっ、魅了しちゃうわよ〜」
「俺以外、何にも見えなくしてあげる」

そう言って表舞台に立った3人はいつも以上にとても輝いていた。
お客様からもとても盛況で、ライブ自体は成功したと言っても良い。
お客様に紛れて、採点の先生もいたようだった。試験の結果は後日伝えられるらしい。

ライブが終わって舞台裏に戻ってきた3人に奏は飛びつき、凄かった、かっこよかった!輝いてた!と興奮気味に感想を並び立てていた。
舞台に出た3人も満足そうに笑っていた。

楽しい時はあっという間に過ぎ去り、試験が終わるとまた3人が集まって練習することはほぼなくなった。
元はと言えば、嵐も正式加入はしていないし、レオに至ってはよく行方を晦ますから、集まることの方が珍しいのだ。

後日、奏は放課後に先生に呼び出され、試験結果を手渡されたその足で、泉が練習しているであろう中庭へと足を運んだ。

『泉くん!』
「うひっ、ビックリした」
『えへへ、驚かせてごめんね』
「別にいいけど、どうしたの」
『試験の結果もらったから見せに来たの!』
「へぇ、どうだったの」
『ふふふっ、良かったよ〜!ほら!』
「へぇ、やるじゃん」

奏は無事に試験に合格をしていた。
紙に書かれた得点とコメントの内容を元に次ライブするとしたらここに気をつけよう等を2人で話し合った。

その次のライブが行われるのは暫く先のことだった。
夏休みに入ってからは、一時的にモデルの仕事を復帰した泉が学園に練習に来れるタイミングが少なくなった。
奏はその事に寂しさを覚えながらも、夏休みの間も足繁く学院に通った。
すべては夏休みというタイミングで裁縫スキルと作曲スキルを上げるためだった。
斎宮宗さんのおかげで裁縫スキルはかなり上がった。
夏休みの期間はValkyrieの雑用のお手伝いをやったりしていた。

そんな中、発足されたばかりの生徒会の存在で、少しづつだが学院内の流れが変わっていっている気がした。
堕落しきっていた生徒達は夏休みがあけてから、ぽつぽつと学院から姿を消すようになっていった。


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