追憶.休日
21
休日、奏は家で久しぶりに作曲に没頭していた。
奏はふんふんと鼻歌を歌いながら音楽ソフトに音を打ち込む。
ヘッドフォンをしていたせいで、部屋のドアがノックされた音に気付かなかった。
ドアが開け部屋に入ってきた人物に奏の肩を叩かれた。

『うわっ、ビックリしたっ』
「返事ないからまだ寝てるのかと思ったよ」
『今日は早く目が覚めちゃったからねぇ。まーくんはどうしたの?』
「昼飯誘いに来た。あと、寝てたら起こそうと思ってさ」
『まーくん保護者みたい〜』
「たしかに奏の家を顔パスで通るし、なんならおばさんに起こすように頼まれるぐらいには保護者かもな」
『えぇ〜。まぁいっか。それよりお昼ご飯どうする?ラーメン食べに行く?』
「お、ラーメンでいいのか?」
『まーくん好きじゃん、ラーメン。私も好きだし』
「じゃあ行こうぜ!最近できたラーメン屋があってさ、気になってたんだよな」
『じゃあそこに行こう。うーん、さすがに着替えなきゃ、まーくん服選んでよ』
「お前なぁ…。まあ、いいけど」

真緒が服を選んでいる間に奏は先程まで作業していたデータを保存していた。
PCの電源を落として、クローゼットで服を選んでる真緒に近付くと服をあてがわれた。

「今日はこれな」
『まーくん、こういうかわいいのが好きなんだぁ』
「べ、べつにそういうんじゃ」
『じゃあこっちにする?』
「あーもう、こっち着てくれ」
『ふふっ、はぁい』
「っておい!目の前で脱ぎ始めるなよ!?」
『はいはい、じゃあリビングで待っててよねぇ』

奏は着替えるとリビングで待ってる真緒に声をかけた。

『お待たせ、行こう、まーくん』
「お、おう」

2人は新しいラーメン屋でお昼ご飯を食べ終わると、そのまま街をぶらつくことにした。
世間話をしながら歩いていると喉が渇いた奏はカフェに入ろうと真緒を誘った。
ラテを飲みながらまったりしていると、声をかけられた。
そこにいたのは中学の時に仲良かったゆーやとえりちんがいた。

『ゆーやとえりちんだ』
「お、久しぶりだな!」
「なぁに、相変わらずニコイチだね」
「おっす、久しぶり」
『席一緒に座る?』
「え、いいのー?」
『うん、いいよ』
「えりちん、さすがにデートに邪魔するのは不粋じゃね?」
「えぇ〜久しぶりだから話したいじゃん!」
「で、デートじゃないからな」
「あー…なるほどな、相変わらずだなお前ら」
『なにが?』
「ゆーやの事は気にしなくていいよ♪」
「えりちん酷いっ!」
「そういうお前らこそデートか?」
「ああ。俺ら、付き合ってるからな」
『えっ、そうなの!?おめでと〜!』
「ありがと〜!奏なら祝ってくれると思った♪」

えりちんが奏に抱きつくと奏も嬉しそうに抱きしめ返した。
久しぶりに無邪気に振る舞う奏を見た真緒は内心連れ出してよかったと安心した。
そんな真緒の優しい視線にゆーやは気が付いていた。

「真緒」
「ん?どうした?」
「まあ、俺はお前の事応援してるからな」
「ん?お、おう。サンキュ」
「絶対わかってないだろ。別にいいけどさ」

4人は暫く話していたがゆーやとえりちんは映画の時間があるとかで先にカフェを出ることになった。
初めは奏もお店を出る準備をしようとしていたが、真緒がもうちょっと居ようぜと言ったのでお店に残ることになったのだ。

『まーくんどうかしたの?』
「あのさ、俺ユニットに所属する事になったんだ」
『…ええっ!?えっ、どこの!?えっ!?』
「おいおい落ち着けよ」
『落ち着いてられないからぁ!』
「新しくユニットを組んだんだ。ほら、あの金星祭の時のメンバーで」
『ゆうくんと明星くんと氷鷹くんか』
「そう。それでさ、できればサポートしてくれないか?」
『…サポート、か』
「やっぱり、無理か…?」
『無理って言うか…あのね、まーくんに黙ってたことがあるの』
「どうした?」
『今年でサポート科、なくなるんだって』
「…は!?ちょっと待って、えっ、奏、お前っどうすんの!?」
『サポート科に所属していた人はみんな転向を余儀なくされてる。それでね、音楽科に転向するか、来年度から新設されるプロデュース科に転向するか悩んでるの』
「そっか。…中学の時も最初は音楽科志望してたもんな」
『でもね、今決めた』
「ん?」
『私は今サポートしてるユニットから離れたくないし、…まーくんのお手伝いもしたいの。だから、プロデュース科にする。そうすれば今まで通り、アイドル科で授業受けて、ユニットのサポート、ううん、プロデュースもできるから』
「奏が決めた道なら俺は応援するよ」
『うん、ありがとう。それでね、さっきの話に戻るけど、まーくんのユニットに付きっきりはできないんだ』
「ああ、凛月が所属してる所もあるもんな」
『え、りっちゃんがいること知ってたの?』
「むしろ何で知らないと思ったんだよ。凛月からよく聞いてるよ」
『そっかぁ。付きっきりはできないけど、それでもいいなら…まーくんがアイドルとして輝くためのお手伝い、させて?』
「むしろこっちからお願いする事なんだけど、ありがとな!!奏!!」
『ふふっ、うん』
「それでさ、これは俺のワガママなんだけど」

俺、奏が作った曲歌いたい。
そう言った真緒は少し赤い頬をかきながら照れ隠しができず困ったように笑った。

『えっと、その…、作るのはいいんだけど』
「ん?」
『今サポートしてるユニット、Knightsのリーダーは作曲の天才だし、周りのメンバーは耳が肥えてるし、バレたら恥ずかしいっ…!』
「っは?!」
『だからね、曲提供するのを、しばらくは秘密にしてもらえないかな?』
「お、おう。それはいいけど…?」
『約束だよ?まーくんと私だけの秘密だからね?』
「おう、わかった。2人だけの秘密な」

そう言って2人だけの秘密が1つできた。
2人は黙っている事を約束すると、それじゃあ帰ろうと言ってお店を出たのであった。

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