追憶.
22

「奏!」
『…りっちゃん?』

覚束無い足取りで歩いていた奏が、転びそうになった時に、支えてくれたのは黒の幼馴染だった。
ありがとうとお礼を言いたかったけど、上手く口がまわらない。
寝不足だった奏は、凛月の腕の中でそのまま目を瞑った。

「え、奏?…寝ちゃった?」

すうすうと凛月の腕の中で眠る奏を抱き上げると、凛月がお昼寝で使っている音楽室に連れ込んだ。

「無理しすぎだよねぇ、奏は」

自分の腕を枕にするように抱きしめたまま寝転んだ凛月は、奏の頭を撫でながらKnightsの歌を口ずさんだ。

『…りっちゃん?』
「あ、起きた」
『私…寝てた…の…?』
「ぐっすりねぇ」

奏が目を覚ました頃には日がだいぶ傾いていた。
凛月の腕の中は安心して眠れた奏。
『りっちゃんのおかげでいっぱい寝れた』と笑う奏に凛月も優しく笑った。

「最近、あんまり寝れてなかった?」
『…うん、夢見悪くて』
「そっか」
『りっちゃんの腕の中、安心して寝れちゃった』
「ふふっ、じゃあ奏が寝る時、また抱きしめてあげる」


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