追憶.修学旅行2
04
2日目は定番のお寺巡りだった。
基本班行動となるため、6人でお寺巡りをしていた。
もちろん、他の班の子達もいるため、時々声かけられて談笑することもあった。

「衣更くん!お願い!一緒に写真うつって」
「おう、いいよ」
「キャー!ありがとう!」
「真緒のやつ今日は特に凄いな」
「アイツお人好しだから基本断らないしなあ」
「せっかくの修学旅行だもん。声掛けてくる人達の気持ちわかっちゃうなあ」
「イケメンと思い出写真欲しいよねぇ」
「あれ、そういや、奏は?」
「ん、あそこ。奏も写真撮ろうってナンパされてる」
「アイツら人気者か!」
「お前ら助けなくていいのか?奏断るの苦手だろ?」
「私達が助けなくても大丈夫だよ?」
「ん?どういう意味」
「まあ、見てたらわかるよ」

真緒は女子達と写真を撮りお礼を言われていたが直ぐにその場から離れた。
そして男子に声をかけられ戸惑っていた奏の元へ行き、腕を掴むと「ごめんなー」と言いつつ奏をその場から連れ出した。
手を繋いで班に戻ってきた2人をみて、エリちんは「ほらね?」と得意げに笑った。

「皆でおみくじ引きに行こうよ〜」
「賛成ー!」
『楽しみだね』

2日目はヘトヘトになるまで京都を歩きまわった。
奏は夕方頃には体力がつき、真緒が甲斐甲斐しくお世話をしながらまわったのであった。

3日目は某遊園地だった。
2日目の疲労も残りながら、朝方奏はうとうとしていた。
移動のバスの中では真緒に寄りかかりすやすやと寝ていた。

「奏着いたぞ、起きろー?」
『んん、…ねむい』
「奏起きないと置いてくぞ〜」
「真緒くん連れてっちゃうよ〜」
『んん、だめ…おきる…』

眠たい目をこすりながら、何とか起きた奏は班のメンバーに手を引かれてバスから降りた。
そこには某遊園地の世界観が入口から広がっていた。

『うわぁ、すごい』
「奏来たことないんだっけ?」
『うん、はじめて』
「絶叫系が特におもしろいから!」
『楽しみだなあ』

蜘蛛男や恐竜、魔法学校等敷地内をまわるたびに真新しいことに出会えて奏の眠気もどこかへ飛んでいってしまった。
あっという間に時間は過ぎ、班のメンバーとお土産を買い宿泊するホテルへと帰った。

ホテルの大浴場でお風呂を済ませたあと、エリちんとモモと奏で部屋に戻るために通路を歩いていると、後ろから別のクラスの男子が声をかけてきた。

「鈴谷さん、ちょっといいかな」
『…わたし?』
「うん、2人とも鈴谷さん借りていい?」
「どーぞどーぞ。奏先に部屋に戻っとくね」
『うん、わかったー』

エリちんとモモは奏と離れると自分の部屋ではなく同じ班の真緒達のところを訪ねた。

「真緒くんいるー?」
「エリちんとモモじゃん!真緒〜、呼ばれてるぞ?」
「どうかしたか?ってあれ、奏いないのか」
「奏、さっき隣のクラスの男子に声かけられて2人きりだよって報告に来た」
「そっか」
「あれ?それだけ?」
「このタイミングなら告白だろ?」
「いいのか?放っておいて」
「受けるかどうかは奏次第だしな」
「あれ?てっきり真緒くんは奏のこと好きなのかと思ってた」
「好き…なのか?」
「俺らに聞くなよー、さすがにわかんねーから!」
「真緒くんって意外と鈍感なんだね」
「薄々気付いてはいたけど」
「断るの苦手な奏が断りきれなかったら、そいつの彼女になるけどいいのか?そうなる前に迎えに行ってやれよ」
「いってくる」

真緒は貴重品を持つとそのまま部屋から飛び出した。
そして走りながら奏に電話をかけた。

一方その頃奏はあまり交流がない男子と2人きりでとても気まずかった。
早く部屋に戻りたいなと思っていた矢先に奏のスマホが鳴った。
男子に出てもいいか尋ねて、許可を貰ってから電話に出るといつもより焦った声の真緒だった。
今どこと尋ねられ、場所を言うとスマホを耳にあてたまま走ってきた真緒と目が合った。

「奏!!」
「げ、衣更」
『まーくん、そんなに慌ててどうしたの?』
「迎えに来たんだよ」
「衣更、俺鈴谷さんに用あるんだけど?」
「まだ話してたのか、悪い」
「いや、そうじゃなくて」
「俺あそこで待ってるから、終わったら声掛けてくれ」

少し離れた場所に真緒が移動すると、呼びだした男子はため息をついた。

「なんなんだ、あいつ」
『なんかごめんね』
「鈴谷さんは悪くないから。それで、話なんだけど」
『うん』
「俺、鈴谷さんのことずっと前から見てたんだ。好きだ。付き合って欲しい」
『…えっと、あ、ありがとう。でも、ごめんなさい』
「衣更と付き合ってんの?」
『ううん、まーくんは幼馴染だよ』
「仲良いよな、本当。羨ましい」
『えっと…』
「あ、ごめんな。時間貰っちゃって」
『ううん、大丈夫だよ』
「せめて友達になってくれてら嬉しい」
『うん、友達なら』
「サンキュー、連絡先交換しよう」
『ハルくん、お友達になってくれてありがとう』
「それはこっちのセリフ。俺も衣更達みたいに名前で呼んでもいいか?」
『うん、いいよ』
「サンキュー、奏」

奏は連絡先を交換した後に手を振ってその場から離れた。
真緒の元へ行くと珍しく少し不機嫌そうな表情をしていた。

「もしかしてハルと付き合った?」
『え?』
「連絡先交換してたみたいだったから」
『ううん、お友達になったの』
「そっか、よかった」
『よかった?』
「ん?なんでもないから気にすんな」
『うん』
「それより部屋戻ろうぜ。女子2人も来てるぞ」
『うん、行こ!』

部屋に戻ると女子2人にどうだった?と迫られ、友達になったよと答えると予想通りという言葉が帰ってきた。
そして今回は先生の見回りだったが来る前に女子達は部屋に戻った。

4日目の最終日は大阪を散策後、学校へ戻るためにバスでの長距離移動がメインと言っても過言でなかった。
その頃には皆遊び疲れたのか行きのバスよりかなり静かだった。
真緒も例外なく隣に座ってる奏に寄りかかるように寝ていた。
奏は逆に目が冴えてスマホをいじっているとゆーやから声をかけられた。

「その凛月って男?」
『え?』
「画面見えてたから気になって」
『うん、男だよ』
「そんなやつ同級生にいたかー?」
『去年卒業したよ』
「あ、先輩か。仲良いの?」
『うん、私とまーくんのもう1人の幼馴染だから』
「へぇ、奏はどっちが好きなんだ?」
『2人とも好きだよ?』
「あー、そうじゃなくて。Loveの方って言えばいい?」
『そ、れは…わ、わかんない』

奏は寄りかかってきてる真緒をちらりと見て少しだけ顔を赤くさせながら、そう答えた。

「なるほどねぇ」
『…何を納得したの?』
「ナイショ」
『なにそれ〜』
「まあ、1つだけ言うなら、真緒モテるから頑張れよ〜」
『なっ、だからそういうんじゃないってばー』
「はいはい。そういう事にしといてやるよ〜」

ゆーやと話していたら時間が経つのが早く感じ、学校へ到着した。
寝ている真緒を起こしてバスを降り、点呼を取った後、解散となった。
校門まで行くと見知った姿が迎えに来ていた。

『あ、りっちゃん!』
「おかえり、奏、まーくん」
「あれ、りっちゃんがいる」
『今日はりっちゃんが甘やかしてくれるんだって』
「いや、わかりやすく言ってくれ」
『お土産とか荷物多いから持ってくれるんだって』
「奏からのお願い連絡きたからねぇ」
「いつのまに」
『まーくんがバスの中で私を枕扱いしてた時?』

楽しそうに笑う奏と、「りっちゃん、助かるよ」と笑う真緒に凛月は来てよかったなと思えたのであった。

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