追憶.誕生日
07
時間は有限だ。
目標やすべき事ががあればあるほど時間が経過する感覚は加速していく。
中学最後の体育祭も学園祭もあっという間に過ぎ去り、残すは受験と卒業だけになっていた。
そもそも、9月上旬に体育祭、10月に学園祭は行事を詰めすぎだと思う。
学園祭を終えてからは受験勉強に専念しろという学校側の思惑が見え見えだ。
奏はそんな現状に嫌気がさしてため息を着いた時、携帯が光っていることに気付いた。

『もしもし。れおくん、今度はどうしたの?』
「バースデーパーティのお誘いだ!」
『…はい?』
「2日はセナの誕生日なんだ!だからバースデーパーティのお誘いだ!」
『2日って、明後日じゃん!!?』
「そういう事だから明後日18:00にxxxに来てくれ!じゃあ、伝えたからな〜!」
『は!?え、ちょっ、れおくん!?…切れちゃった』

電話の先では虚しくツーツーという電話が切れた音が響いていた。
相変わらず人の話を聞かないなあと思いつつも、嫌いじゃないし、むしろ好感が持てる友人の枠に入ってるレオの言動に苦笑した。
誕生日なら、プレゼント用意した方がいいよね…。でも男の子が喜ぶ物なんて思いつかないし。なんて考えていたが、身近に聞ける相手いるじゃん!と思って早速電話をかけた。

『もしもし、まーくん、今ちょっといい?』
「いいけど、どうかしたか?」
『ちょっと相談したいんだけど、男友達がねもうすぐ誕生日なんだけど、何渡したらいいかわかんなくて』
「男友達…?俺の知ってるやつか?」
『ううん、知らないと思う』
「うーん、そいつのことよくわかんないけど、無難に日用品とか、食べ物とかでいいんじゃないか?」
『そうだよね、無難でも大丈夫だよね』
「おう。気持ち次第だと思うぞ」
『ふふっ、まーくんありがとう』
「どーいたしまして。それにしても俺の知らないやつと友達になるとか珍しいな」
『私もそう思うよ。まーくん』
「ん?」
『夢ノ咲行けそう?』
「まあ、勉強は合格圏内かな。奏は結局どうするんだ?」
『私、第一志望はサポート科にするよ』
「じゃあ、お互い受かれば一緒に行けるな」
『うん、頑張ろうね』
「おう、じゃあ俺はもうちょい勉強してから寝るよ」
『ふふっ、私も。おやすみまーくん』
「おやすみ」

奏は翌日早速プレゼントを買いに行った。
奏お気に入りのふわふわなタオルがあるお店に行った。
1枚1000円するタオルを中学生では何枚も買えない。
うん、量より質だよね。なんて自分に言い聞かせて、プレゼント用に包んでもらった。

そして誕生日当日、18:00時にレオ指定の場所まで行くとそこには元気いっぱいなレオと無理やり引っ張って来られたであろう泉がいた。

『れおくーん、泉くーん』
「お、きたきた!」
「遅い、俺を待たせるなんていい度胸してるよねぇ」
『え、約束の時間ピッタリだけど』
「こういうのは5分前行動が当たり前でしょー」
『ふふっ、待たせてごめんね?お兄ちゃん♪』
「…あんた最近さらに甘えたになったんじゃないの」
『えぇ、そうかなー』
「わはは☆奏はセナの扱いが上手いな!」
『扱いって…それよりどこ行くの?』
「そこのファミレスだ!」
「えぇ、俺もう帰りたいんだけどぉ」
『はいはい、ファミレスね、じゃあ行こ行こ』
「ちょっ!引っ張らないでよねぇ!?」
「わはは☆行くぞー、セナ!」

レオと奏に引きずられる形でファミレスにやって来た泉。
渋々席に座る泉と、泉が逃げないようにとレオが奏を泉の隣に座らせた。

『泉くん食べないの?』
「こんなカロリー高そうなものいらないんだけど」
『女子みたいな事言ってる…私ケーキにしよっと』
「俺はこのパフェだ!」
「あんた達よくそんなカロリーの塊を平気で頼むよねぇ」

注文した品が来ると奏は最初のひと口を救って泉にそれを向けた。

『はい、あーん♪』
「いや、だからいらないってば…んぅ!?」
『ひと口だし大丈夫大丈夫♪』
「ちょっと、あんたねぇ…!」

泉に食べさせたフォークのまま、ケーキを食べ始めた奏に泉はため息をついた。
そんなやり取りを目の前で見ていたレオは無邪気に「関節キスだな!」と言いケラケラと笑った。
その一言に奏は一瞬固まったかと思うと耳が赤くなって言った。

『ご、ごめんね、泉くん』
「…べつにぃ、あんたが勝手に関節キスしただけだしぃ?」
『もう!れおくん急にそんなこと言わないでよ〜!』
「ん?オレは事実を言っただけだぞ?」
『れおくんのバカ…。あ、そうだ!泉くんこれ誕生日プレゼント!』
「え、…わざわざありがと。開けていい?」
『うん、いいよ』
「何あげたんだー?」
「あ、タオル」
『ふふーん、それオススメなんだー。ふわふわでしょ!』
「あんたにしてはいいセンスしてるじゃん」
『褒め方が可愛くない〜』
「オレからはこれだぞ!」

笑顔で差し出したのは楽譜だった。
今日のために作曲したようだ。

「…2人とも、ありがとねぇ」
『「どういたしまして!」』

少し照れた表情でお礼を言う泉にレオも奏も満足気に笑ったのであった。

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