追憶.幼馴染
08
世間はクリスマス一色だった。
受験生には関係ないけども。なんて奏は思うはずもなく、受験勉強の息抜きという名目で幼馴染の2人をイルミネーション見に誘った。

『うわあ!きれい!』
「奏、はしゃいで迷子になるなよー」
「ううっ、目がチカチカする…」
『りっちゃん大丈夫?』
「うん大丈夫。まーくんおんぶして」
「やだよ!それに夜だからりっちゃんの方が元気だろ!」
「えぇー、まーくんの体温を感じてたい〜」
『ふふっ、りっちゃん相変わらずだね』
「最近奏から知らないやつの匂いするだけど。まーくん何か知ってる?」
「匂いって…。うーん、なんか俺の知らないやつと友達になったみたいだぞ」
「へぇ、奏がねぇ…」
『私だって友達作れるもん。それにりっちゃんの通ってる学校の人だよ?』
「なにそれ初耳」
『あれ、言ってなかったっけ?』
「聞いてないぞー」
『じゃあ今言ったってことで〜』

ふふん♪と街中で流れているBGMを口ずさみながら歩く奏に凛月は少しだけ不満気な表情をした。

「ねぇ、まーくん」
「どうした?りっちゃん」
「奏取られたみたいでなんかムカつく」
「とられたって…べつに友達が増えただけだろ?」
「彼氏じゃないといいけどねぇ」
「かっ!?…でもそうだよな、恋人とか、できてもおかしくないよな」
『どうしたの?』
「ねぇ、奏。その友達って彼氏とかじゃないよね?」
『へ?か、彼氏なわけないよっ!付き合ったことすらないし…』

少し頬を染めて照れながら答える奏に凛月と真緒はなんだか安心した。
照れてる奏に後ろから抱きついて「じゃあ俺と付き合う〜?」なんて甘えた声で言う凛月。
そんな凛月を奏から引き剥がして「からかうなよ〜」という真緒。
奏はいつも通りの2人と一緒にいることが嬉しくて、『2人とも大好き!』と2人の腕に抱きついたのであった。


楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、奏と真緒の受験の日はやってきた。
緊張のせいか、寒さのせいかよくわからないが手が震える奏に真緒は優しく笑った。

「絶対受かって、一緒に行こうな」
『う、うん。がんばる…』
「ほら手貸して」
『ん?はい』

奏が手を差し出すと真緒は両手で奏の手を包み込んだ。
そんな真緒の行動に奏は顔を真っ赤にして動揺した。

『ちょ、なにしてっ』
「頑張れって気合いを送ってる」
『ま、まーくん、まわり人いるからっ』
「…ご、ごめん」

真緒はパッと奏の手を離すとお互い視線をそらしながらも、一緒に夢ノ咲学院に向かった。
勉学のテストは同じクラスで受け、実技はそれぞれ別の場所で受験をした。
奏の方が先に終わり、真緒が終わるのを近くのファミレスで待っていると真緒から試験が終わったとメッセージが飛んできた。
ファミレスにいると伝えたあと、しばらく待っていたら真緒がお店に入ってきた。
そして2人でぷちお疲れ様会をやり、そのまま家に帰ったのであった。

後日2人とも合格通知が来て、4月から夢ノ咲学院に通うことが決まった奏と真緒は幼馴染の凛月にそのことを告げると、凛月からは留年したと伝えられ奏と真緒は、はぁ!?と驚きの声が重なったのであった。

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