01
ハニーブラウンのふわふわした髪質に、子供特有の大きな目。
何処もかしこもふくふくまるまるとしていてよく奈々さんにほっぺを撫でられてはきゃらきゃらと笑う姿はとても微笑ましい。
けれど今はそのまろい頬は大きな目から流れる大粒の涙で占領されていて、ぼたぼたと流れ落ちるそれは地面を次々濡らしていく。
彼の足元にはこれまたちっちゃいチワワがきゃんきゃん吠えたりズボンの裾を引っ張ったり好き勝手していて、それが彼の涙を作る要因にもなっていた。
大きな目が此方を射貫く。
その目は如実に、助けろ、早く此奴を離れさせろと訴えかけてきたので俺は一つため息を吐いて其方に足を向けた。
叫んで喚いて近所迷惑にならなかったことは重畳だ、いつもならこれに走り回って情けない面を周囲に知らしめているというのに。
俺がいるのに気付いたからか、服の裾をさらにぎゅうと握りしめ足元のチワワの猛攻にも我慢している。
さながら俺は絶対に自分を助けるという密かな信頼と甘え、それに内心緩む笑顔を隠してチワワを遠くへやって助けた。
「ツナ」
「う、う゛あああぁ〜やっくん〜!!」
「おーおー色々出ていて汚いぞ」
「びどい゛〜、んぶっ」
「ティッシュ持ってきたからそれで拭け、奈々さんとこ帰るぞ」
「…………うん」
真っ赤な顔をぐしゅぐしゅと崩して頷いたその姿を目に留め、手を差し出す。
当然のように繋がれた掌を少し力強く握り返して、二人一緒に帰路を急いだ。
九重夜天、それが今の俺の名前。
何の因果か生まれて死んでを繰り返してこれで二回目となっている。
一度目は普通のサラリーマンとして。
そして二度目は、これまた不思議な事にフリーの殺し屋として。
我ながら波乱万丈な人生だなと思うが、周りに言っても理解されることは多分ないので普通の小学生として過ごしている。
俺の手を握り返している隣の子供は、今の家の隣人で家族ぐるみでお付き合いをしているほど仲良しだ。
俺がジッと見つめていると大きな目がきょとりと疑問気に俺を見上げてきた。
「?どうしたの?やっくん」
「んーん、何でもないよ」
先程までの泣き顔が嘘のように変なのーと楽しそうに言うツナへ、微笑みを返してもう一度その姿を盗み見る。
特徴的なフワフワのハニーブラウンの髪、今は大きくぱっちりしているがふとした瞬間節目がちになるその目元。
記憶の中にあるその姿を幼くしたらこうなるのだろうかと、考えてしまうくらいに似ているのは。
(少し……考えすぎかなぁ)
目を瞑り季節柄の寒さゆえに白い息が吐き出される。
視界の裏側にひりつく、温かい、全てを包み込むオレンジ色の炎。
此方を見る、琥珀の瞳を思い出してもう一度瞼を開けた。
「よし、ツナ明日も公園行ってみようぜ、ワンちゃんもお前と仲良くしたがってたみたいだし」
「えぇ〜やだよ!絶対行かないからね!行くならやっくんだけで行ってきなよ!」
「つれないねぇ、俺悲しいー」
「絶対嘘だぁ!」
肩を竦めやれやれとこれみよがしに悲しむ振りをしてみれば帰ってくる元気な声。
うん、俺の考えすぎだな、綱吉はアイツと違って弄りやすいしこんな素直ではない、どっちかというと狸だ。
百歩譲って容姿が少し似ていようが他人の空似、考えるだけ無駄である。
今日のご飯はなんだろうなぁと宛てのない話をしながら、少し早めに足を動かした。