痴漢電車

いやだ、またきた。
そう思うものの、幸枝は抵抗できない気弱な自分に内心腹が立っていた。

混雑した電車内で、自分をまさぐってくる手にひたすら耐える。
それは大学に通うようになってからの、幸枝の毎朝の習慣と化していた。
車両を変えても、時間をずらしても、スカートではなくズボンにしてみても痴漢にあってしまう。
毎回同じ人物かどうかなんて最初こそ解らなかったが、三ヶ月くらい経ってからだろうか、幸枝は相手が同一人物であると確信を持った。

触れるか触れないかの絶妙なタッチで内腿を撫でられ、次いでショーツの上から秘部を撫でられるものの中には入ってこない指。
背後から伸ばされた手は胸の突起に触れることなくひたすらに揉みあげるだけ。
大切な部分をギリギリの部分で避け、欲に火をつけるだけつけて後は放置する。
このやり方を延々と繰り返されれば、同一人物であることなんて馬鹿でも解るというものだ。

今日もまた同じ痴漢なのだろう。
バッグを両手で持ち目的地で開く扉の前で立っていた幸枝の背後から手が伸びてくる。
スカートの中に入り込み、優しく尻肉を掴んだかと思うと内腿を絶妙なタッチで触れる。
さわさわと触れられる指先は繊細さすら感じさせるほどで、それは自分の欲望を満たすためでなく女性の興奮を煽るための手つきだった。

「ん……ふ、ぅ」

ぞわぞわと背中に駆け上がる悪寒にも似た、しかしそれとは正反対の感覚を、幸枝は長く息を吐く事で誤魔化した。
そして指先はやがてショーツへと伸びて、今度は布の上から秘部を撫で始める。
入り口を擽るように撫で、秘豆を擦りあげてその手は幸枝を念入りに責めるのだ。
今日も大学のある駅に着くまでの20分の間延々とそれを繰り返されるのかと思っていた幸枝だったが、今日は予想外のことが起こった。

電車が緊急停止してしまったのだ。

この先の線路に異変が合ったために、暫く緊急停止をする。
お客様方には申し訳ないが、暫く車内にて待機してほしい。
車内に響くアナウンスが淡々としかし丁寧な言葉でそう告げたかと思うと、周囲に居る客が一斉に愚痴を零し始める。
幸枝は幸枝で20分で済まなくなった恥辱に思わず顔を上げそうになったが、突然秘豆を強く擦りあげられて咄嗟に唇を噛み締めた。

「んっ…んんっ、ふっ、ぅ…っ」

いつもならば、幸枝を欲情させて終わる痴漢の指。
しかしこれを機に、とでも思ったのだろう。
背後から幸枝を抱きしめるようにして左手が伸びてきたかと思うと服の中に手を突っ込んで胸の突起を弄り始め、右手は背後から足の間に滑り込ませて絶妙な強さで秘豆を擦り始める。

ブラジャーの中に入り込んできた手がまだ柔らかい乳首を転がし、軽く摘み上げる。
そうして硬くなった乳首を今度は僅かに力を込めて指先ではさみ、かと思えばじんわりと甘い快感が走る程度に爪を立てられる。
同時に秘豆は延々と擦りあげられているし、幸枝はいつもより過激な攻めに必死に声を噛み殺していた。

「ぅ…ふっ、ぅん……っ」

身体を這い回る指に必死に唇を噛んで耐えていた幸枝だったが、只でさえいつもの痴漢行為だけでも火がついてしまう幸枝の身体である。
いつもよりも過激な責めに体が反応しない筈が無く、やがて声を押し殺しながらも表情が快感に蕩け始めた。
そうなればあとは痴漢の思うが侭で、壁に押し付けられた幸枝のショーツの中に今度こそ指先が侵入してくる。
駄目だと声をあげようとした幸枝だったが、じかに秘豆を擦りあげられて慌てて自分の口をふさいだ。

ぷっくりと膨れた秘豆は、既に快感を受け入れて愛液に濡れ皮から顔を出している。
それを指の腹で撫でたかと思うと愛液を塗りつけるかのようにこりこりと擦り上げ、指先で何度も引っかくようにして弾かれれば幸枝が耐えられるはずが無い。
湧き上がる快感もまた耐え切れるものではなく、腰からじんと響く甘い電流は段々と強くなって幸枝の思考を侵食していく。
もっととねだるように子宮は疼きはじめ、それに応えるように乳首が強くつまみあげられる。

「ぁ…ん……んン…ッ!」

これが通路のど真ん中で目の前にも人が居れば、自分の口を塞ぐ幸枝に違和感を持ち痴漢に気付いてくれたかもしれない。
しかし幸枝は既に痴漢の手によって車両の隅に追いやられていて目の前は壁である。
やがて競り上がる快感に限界が近くなり、内腿が微かに痙攣を始める。
それに気付いたらしい痴漢は秘豆をこねくり回している手のスピードを更に上げ、乳房を鷲掴みにしながら乳首に思い切り爪を立てた。

「ん…ん、んぅ…っ!!」

ぴくん、と幸枝の体が跳ねた。
それは悔しくも、痴漢の手によって幸枝の体が絶頂に追いやられてしまったということだった。
屈辱と恥辱が入り混じった感情がわきあがり、幸枝は泣きそうになるのを必死に堪える。
それに泣いている暇など無かった。痴漢の手は絶頂を迎えてひくひくと蠢いている膣へと向かっていた。

ぬるりと、指が一本挿入される。
それはゆっくりとした挿入だったが、確かな質量を持って幸枝の中へと入り込んだ。
軽い前後運動を繰り返したかと思うと、ぐるりとかき回し少しずつ少しずつ中をほぐしていく。
それはともすれば愛情を持っているのではないかと勘違いしそうなほど丁寧で優しい愛撫だった。

「ぁ……はっ、んン…ッ」

胸を揉み解していた手が幸枝の口を塞ぎ、喘ぎ声を遮断する。
そして指を一本増やしたかと思うと、第一関節を曲げてGスポットを念入りに擦りあげ始める。
一度イって敏感になっている身体で快感に弱いところを重点的に責め上げられて無反応でいられるはずも無く、幸枝を必死に声を噛み殺しながらじんと身体に響く快感に耐えていた。
擦りあげられる秘所から背骨を駆け上がり脳味噌を真っ白にするような、甘い電流にも似た感覚に表情が蕩けそうになる。

「ふ、ぅ…っん、くぅ…っ」

悲しいかな、自分の中が痴漢の指を締め付けてるのも解っていた。
Gスポットを擦り上げられるたびにきゅぅきゅぅと指を締め付ける様は、まるで快感に悦びはしたなくもっととねだっているようで嫌だった。
しかし身体の反応は隠しようも無く、愛液はどんどん溢れて痴漢の指を深く飲み込もうと中は蠢く。
こんな場所で痴漢に身体を弄繰り回されているという罪悪感が交じり合い、全身を支配する快感が更に高まっていく。

足ががくがくと震え、やがて立っていられなくなった幸枝の腰を痴漢が支えてくれた。
傍から見れば体調の悪そうな彼女を支える彼氏といったところだろうか。
その手がスカートの中に伸びていなければきっと誰もが見てもそう勘違いしたに違いない。

中を弄繰り回していた指がゆっくりと引き抜かれる。
ようやく終わったかと幸枝が脱力しそうになるが、下着をずらされて嫌な予感が湧き上がる。
愛液でべたべたになった秘部に温かくて硬いものが押し付けられ、幸枝は自分の血の気が引いていくのが解った。
流石に嫌だと叫ぼうとした口はまた塞がれ、ゆっくりと硬いものが中に入り込んでくる。
指とは比べ物にならない質量に腰が戦慄き、幸枝は鞄を抱きしめながら自分の身体の中に入ってくるものの感覚に打ち震えた。

「ぁ…あ……はっん」

頬に涙が伝った。痴漢の指を噛んだが、特に怒られることはなかった。
腰をぴったりとくっつけて全てを幸枝の中に収めようとするせいで、幸枝は自然と壁に押し付けられる形になる。
ぽたぽたと落ちる愛液なのか汗なのかわからない液体が電車の床を汚していく。
痴漢のものは存外大きく、幸枝の一番奥をこつんと叩いてようやく挿入は終わった。

「はっ…ぁ、ぁあ……っ」

圧迫感に吐息にも似た声をあげた幸枝だったが、そこで痴漢の動きが止まってしまったことに疑問を覚えた。
挿入したからにはすぐに中を突き上げられるのだろうと思っていたのだ。
自分の快感を追うために、幸枝のことなど気にかけることも無く腰を振るだろうと。
ところがどうだ、痴漢は動くことなく幸枝の背中にぴったりと張り付き背後から伸ばした手で胸を揉みしだき秘豆を転がしている。

それはイくほどの快感ではない。
しかしじんわりと身体を融かしていくようなぬるい快感に幸枝は段々と焦燥感を覚え始めた。
優しく胸を揉みながら時折乳首をつまみ上げ、悪戯するように軽く爪を立てられる。
秘豆は指の腹で転がされ、結合部からもれでる愛液をたっぷりとつけられて痛くない程度に擦り上げられる。
時折うなじを舐め上げられながら指で攻め立てられて、幸枝はもうされるがままだ。

いや、それよりもたちが悪い。
胸も秘豆も攻め立てられるがイけるほどではなく、幸枝は段々と自分の子宮が疼いてくるのが解った。
いけないと解っていながら中に入っている痴漢のものを締め付けてみたものの、やはり動き出す様子は無い。
それどころか痴漢ではなく電車の方が動き出してしまって、幸枝は本気でどうすれば良いのかわからなくなった。

「ぁ、あ…いや、ぁ…っ」

ガタンゴトンとリズミカルに揺れながら電車は走る。
幸枝がいつも降りる駅まで後7〜10分といったところか。
乳首の先端を爪先で擽られ、秘豆を軽く摘み上げられて、昂るだけ昂らされてイけない身体に幸枝は気が狂いそうだった。
そして、それを見透かしたように幸枝の耳元で痴漢が囁く。

「動いて欲しいか?」

ぞくりと背中に快感が走った。
焦らされすぎて火照った身体はそれだけでイってしまいそうだった。
そしてその誘惑は甘美で、幸枝はごくりと生唾を飲み込んだ。

幸枝が迷っているのを見透かしたのだろう。
乳首に軽く痛みが走るほどに摘み上げられ、秘豆が指の腹で押しつぶされ、軽く中を突き上げられる。
待ち望んでいた快感の片鱗を見せ付けられ、幸枝は上げそうになった嬌声を慌てて噛み殺した。

「ハンカチは持っているか?持っていなくてもいい。動いて欲しいなら声をあげないよう何か噛め」

耳元で囁かれる命令に幸枝の唇が震える。
そして手がゆっくりと動き、鞄の中からハンカチを取り出して噛み締めたかと思うと、周囲に不審に思われないよう深く俯いた。

「いい子だ」

「っ!!」

瞬間、痴漢が腰を降り始める。それは深く長いストロークではない。
電車の揺れに合わせた浅くリズミカルな動きだった。
しかしほてりきった身体にはそれだけで充分で、小さく揺さぶられながらひたすらに声を噛み殺すことだけに集中する。
痴漢は今までの柔らかな手つきが嘘のように、乳首をつまみ上げ秘豆を擦りあげて強く刺激し、うなじに何度もキスを落としてきた。
それは早くイってしまえと言われているようで、事実我慢を重ねていた幸枝がその激しい攻めに耐えられるはずも無かった。

「――ッ、く…ッ、ん、ん…―ッ!」

必死に声を噛み殺しながら、全身に降り注ぐ愛撫による快感に身体を跳ねさせる。
そして高まりきった快感が解放され、頭の中が真っ白になる絶頂に追い上げられる。
背中がそりあがり、痛いほどにバッグを抱きしめ、奥歯を噛み締めながら今までに感じたほどが無いほど深い快感に喉を鳴らした。
中に入っているものをきゅうきゅうと締め付ければ、全てを中に収めながらぐりぐりと奥をえぐる。

「盛大にイったな。恥ずかしいと思わないのか?」

未だ余韻の収まらない中、耳元で囁かれた幸枝は子供のようにいやいやと首をふった。
零れかけた涙が目尻にたまり、弄られすぎて敏感になった乳首を指の腹で転がされて肩を跳ねさせる。

「じゃあ次は俺を満足させてくれ」

「ぅ、ぁ…――ッ!!」

そう囁かれて、幸枝はようやく中に収まっているものが一度も果てていないことを思い出す。
今はイったばかりだから待ってくれと幸枝が言う前に、律動が再開される。
絶頂を迎えたばかりで敏感な中を擦り上げられ、最奥をノックされて幸枝は今度こそ涙を流した。

早く終わってくれと願うことすら出来ないほどの快感の奔流に声を噛み殺すことすら忘れそうになる。
だというのに男は容赦も慈悲も無く中を擦り上げGスポットを刺激し、更にはもっと締め付けろといわんばかりに秘豆を擦り上げて幸枝を狂わせる。
羞恥心と背徳感、そして抗いきれない快楽に脳が焼ききれそうな錯覚を覚えながら、全身を痺れさせる甘い電流にひたすらに耐えた。

「ぁー…出る、もう出すぞ、中に出すからな…っ」

それからどれくらい攻め立てられていたのだろう。やがて男も限界が近付いてきたのだろう。
全身を翻弄する快感に再度絶頂を迎えようとしていた幸枝は耳元で囁かれた言葉に首をふろうとしたが、また掌で口を塞がれて腰を引き寄せられる。
数度の抜き差しの後、息を荒くしながら硬くそそり立っていたものを全て幸枝の中に収め、どくどくと白く濁ったものを吐き出した。

幸枝の身体もまたぴくぴくと痙攣し、男の搾り取るように締め付ける。
自分の身体の反応に嫌になりながらも、男が小さく呻きながら全て幸枝の中に吐き出すのを待つしかなかった。
男は全て出し切った後、幸枝の口からハンカチを取り上げて萎え切っていないものをゆっくりと引き抜く。
既に立っていられないほど疲弊していた幸枝は男に支えられ、知らない駅で降りるはめになった。

あまり人がいない名前も知らない駅に辿り着き、冷たい椅子の上に座らされる。
どちらのものか解らない液体で濡れた下着の中が気持ち悪いと思いながらも、今ソコに触れられるほどの勇気も無い。
男は幸枝の涙を丁寧に拭ってから、鞄の中から学生証を取り出し目の前でヒラヒラと振る。

「また遊ぼうね、幸枝ちゃん」

取り出したスマホで学生証を撮影した後、男はそう言って幸枝を置いて去っていってしまった。
未だ事後の余韻が抜けずに朦朧とする幸枝の頭に残ったのは、見知らぬ男の微笑みと秘部の疼きだけだった。

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