鈴蘭@

※この作品はフィクションです。
実際の性感エステとは内容が異なりますので、ご了承の上お読みください。




SALON'S KIYOと書かれた小さなプレートを確認し、私はからからに乾いた喉を潤すために無理やり唾液を嚥下した。
ここは表通りから一本はなれた裏道、恐らく目的がなければ足を踏み入れないであろうこの道に、ネット上ではキヨと呼ばれているこのサロンはあった。
ディスプレイや看板などは一切存在せず、プレートを見なければ少し小さめのおしゃれなビルにしか見えないが、ここは知る人ぞ知る女性専用の性感サロンである。
少々お値段は張るものの完全予約制で、安心・安全・秘密厳守を売りにしている性感サロンだ。

前々から興味はあったものの、得体の知れない場所への恐怖感やネーミングが違うとはいえ風俗店を利用することに対する忌避感、そしてお値段の高さもあってずっと躊躇してきた。
しかし相手も居ないまま昂ぶる身体を自分で処理することに虚しさを覚え、ネット上での口コミなどを見ているうちに我慢できなくなり、ついにこのSALON'S KIYOに申し込み、こうして足を運んでしまった。

覚悟を決めるように一つ大きく深呼吸をしてからドアの取っ手に手をかける。
そこには黒字のプレートに金色の字でOPENと書かれた札がかけられていて、どきどきとうるさい心臓を叱咤してからドアを引けば、チリンチリンと耳に心地よい鈴の音が耳に届いた。

「いらっしゃいませ」

入ったそこは吹き抜けの空間が広がっていた。高いガラス張りの天井からは日の光がさんさんと差し込み、多彩に置かれた観葉植物が心地よい空間を作り出している。
目の前にある受付では柔和な笑みを浮かべた美しい女性が手をへその前に揃えて頭を下げており、先程の声は彼女のものだと解った。

「あ、あの、予約した速水幸枝という物なんですが」

「はい。15時からご予約されている速水様ですね。そちらのスペースにおかけください。すぐにウェルカムドリンクをお持ちいたします」

隅のほうにあるしみ一つないソファとローテーブルの置いてあるスペースを指され、ドリンクを選ばせて貰う幾ばくかのやり取りの後女性は受付の奥へと消えていった。
それなりに高級感を感じさせるこのスペースと丁寧な接客にそれなりのお値段がするだけのことはあるとのんきに考えながらソファに腰掛ける。
目の前のガラスのローテーブルの上に綺麗に置かれた雑誌を手に取ろうか迷ったものの、すぐに女性が砂時計と共に本格的なティーセットを持ってやってきたためにそんな時間は存在しなかった。

「大変お待たせいたしました。ホットの紅茶とのことでしたので、本日はアッサムティーを淹れさせていただきました。濃い目にしてミルクを淹れる事もできますが、どうされますか?」

「じゃあそれでお願いします」

「畏まりました」

女性の言うとおり、濃い目のアッサムにミルクをたっぷりと入れたミルクティーはとても美味しかった。蒸らし時間まで気を使っているだけのことはある。
ほっと息をついて紅茶をいただけば、緊張が少しほぐれたような気がした。
ソファに腰掛けるでなく床に膝をついた女性は私が肩の力を抜いたのを見計らい、バインダーを一つ取り出しす。

見ればそれはアンケート用紙で、出産経験の有無やピルを服用しているかなど、いくつかの質問がつらつらと並べられている。
一つ一つ丁寧に説明を受けながらその質問に答えていくと、最後に契約書にサインをお願いしますと言われバインダーを差し出された。
良くある個人情報についての規約や料金プランについて細かい字でびっしりと書かれている。
それを一通り読んだ後、問題ないと判断した私はその下にある名前欄にしっかりとフルネームを記載した。

「ありがとうございます。それでは速水様は本日がはじめてのご来店となりますので、宜しければコースの説明などをさせていただきますがいかがいたしますか?」

「それじゃあお願いします」

「畏まりました。こちらがコースの一覧になります。
まずは120分のリラクゼーションコース。初めての方にお勧めのコースとなります。
専用のアロマオイルを使用して身体をじっくりとほぐした後性感エステに移らせていただくコースで、むくみ解消などの効果もある美容にもよいコースとなっております。

続けて150分のエクスタシーコース。此方は性感エステを重視したコースとなっております。
エステティシャンが腕によりをかけてお客様をめくるめく快感の世界へとお導きいたします。
無料オプションとしてある程度のリクエストも可能となっており、当店の一番の人気コースとなっております。

それから180分のハードエクスタシーコース。此方は更なる性感エステをお求めの方のためのコースです。
エクスタシーコースではご満足できないというお客様にお応えし、そのご希望を叶えるため可能な限りリクエストにお応えするマニアックなコースとなっております。

追加料金はかかりますが、全てのコースで時間の延長とエステティシャンの指名が可能となっておりますし、予め延長したお時間でお申し込みいただくことも可能です。
また当店では多彩な無料オプションをご用意しておりまして、そちらはエステティシャンから確認がありますので是非ご利用くださいませ」

柔らかな声音ながらも説明される内容は間違いなく性的なもので、そのギャップに戸惑いすら覚えるほどだ。
しかしここで羞恥心を覚えていては次に進めないと軽く頭をふり、どのコースにすべきか説明を読みながら考える。
初めてなのだから無難にお勧めのリラクゼーションコースにしておくか、いやいや性欲の解消に来たんだからいっそのことハードに行って一気に欲望を爆発させるべきか。
しばらく悶々と考えてみたものの結局ハードに手を出すほどの勇気もなく、私はエクスタシーコースを選択した。
受付の女性は更にエステティシャンの指名はするか確認してきたが、特に誰が居るかも知らないので指名はせず時間の変更などもせずにお願いする。

「それでは鈴蘭のお部屋へどうぞ。お部屋についてからは全てエステティシャンがご案内させていただきますのでご安心ください。
そちらのエレベーターから三階までおあがりくださいませ」

その後幾つかの確認事項の後、鈴蘭のモチーフのついた鍵を渡される。
私が礼を言って立ち上がり指示された通りにエレベーターへと向かうと、その背後で女性は深々と頭を下げた。

「それではどうぞ、ごゆっくりお過ごしくださいませ」

そのゆったりとした声は、何故か淫靡な空気を含んでいた。



それからエレベーターに乗って部屋に辿り着いた私は与えられた鍵でドアを開け、オフホワイトでまとめられた部屋に足を踏み入れた。
こぎれいなホテルのような部屋だったが、普通と違うのはベッドが施術用のものであることと部屋にある棚にはアロマオイルや何に使うか解らない道具などがずらりと並べられていることだろうか。
さらには施術用のベッドの横には男性が立っており、彼は良くあるマッサージ師が着るような服ではなく清潔感のある白いシャツに黒いスラックスを履いていた。

「いらっしゃいませ。お待ちしておりました。速水幸枝様ですね?」

「は、はい」

「本日速水様を担当させていただきます晶と申します。よろしくお願いいたします。
早速ですが、幸枝様とお呼びさせていただいても宜しいでしょうか?」

「あ、はい。大丈夫です」

「ありがとうございます。それでは幸枝様、本日は私晶が全てご案内させていただきます。ご質問などがありましたらどうぞ遠慮なくお聞きください。
これから150分、誠心誠意幸枝様に奉仕させていただきます」

「は、はいぃ……」

胸元に手をあてきっちり腰を九十度に曲げた晶に対し、これではエステティシャンというより執事かホストのようだと思った。
心臓の鼓動がうるさいのを感じつつもそんな晶に手をとり室内へと案内され、まずはシャワーを浴びるか早速施術に入るかどうか案内される。
シャワーを浴びる間は施術時間は適応されないということなので、落ち着きたいという思いもあって私はシャワーを浴びさせてもらうことにした。

「それではこちらへどうぞ。宜しければリラックス効果のあるアロマなどを炊かせていただきますが」

「あ、じゃあお願いします」

「畏まりました」

有料オプションの際はきちんと事前に説明してくれる。なので何も言わず提案される内容は全て無料オプションのうちの一つだ。
受付の女性からそう聞いていた私は緊張をほぐしたい一心で彼の提案に頷いた。
そのまま手を引かれてシャワールームへと案内され、シャワーの後はこちらへお着替えくださいという晶の言葉を聞いてから、ガラスの棚においてある衣服を確認し、こくりと頷いてからアロマの準備をしてからシャワールームを出て行く晶の背を見送った。
一緒に入りましょうかという提案は流石にお断りさせていただいた。

それからさっぱりとシャワーを浴びた私は温かくなった身体と鼻腔をくすぐる香りにすっかりと緊張を解され、施術服を纏って部屋へと戻っていた。
施術服は非常に薄い素材でできた、ノースリーブの丈の短いワンピースのようなものだった。鎖骨の横の辺りとわき腹の辺りでリボンで結んだだけのシンプルなものだ。
どちらかというと可愛いデザインの手術服といったほうが正しいかもしれない。

下着を身に着けることなく施術服のみで部屋へと戻ると、お帰りなさいませと頭を下げる彼はやはり執事か何かにしか見えなかった。
お湯加減はいかがでしたか、などと笑顔で聞いてくる彼にちょうど良かったですと答えながら、差し出されたミネラルウォーターを煽る。
程よく冷やされた水がするりと喉を通り、身体に水分がいきわたるのが解った。

「それではこちらへどうぞ」

手を引かれ、施術台へと導かれる。頬がカッと熱くなるのが解った。
つるつるしたシングルベッドのようなそれは、目に優しいオフホワイトだ。ただし普通のベッドよりも背が高い。施術をするためだろう。
晶は失礼しますという掛け声と共に私をお姫様抱っこしたかと思うと、そのまま優しく仰向けにして施術台へと寝かせてくれた。どきどきと心臓がうるさい。

「幸枝様が宜しければ、始めさせていただきますが」

「お、お願いします」

「畏まりました」

彼の言葉に頷くと、近くにおいてあったガラステーブルの上にあるタイマーがセットされた。
見ればちょうど150分にセットされている。施術開始、ということなのだろう。
初めての体験に既に心臓がはちきれそうだが、それを上回る期待に子宮がきゅんと疼いた。

「まずはマッサージをさせていただきます。アロマオイルを使用させていただきたいのですが、甘い匂いはお嫌いですか?」

「甘すぎなければ平気です」

「それはよう御座いました。実は気分を盛り上げるのに最適なアロマがございまして、是非幸枝様にも楽しんでいただけたらとご用意していたのです」

彼の言うとおり、甘い香りが鼻腔をくすぐる。甘すぎない優しい香りで、不快ではなかった。
見れば晶はとろりとした液体を掌に出していて、恐らくあれがアロマオイルなのだろうとあたりをつける。
まるでローションのようなそれを晶は十分に掌に馴染ませた後、失礼いたしますという言葉と共に私の手をとり施術を開始した。
掌をくすぐるように撫でたかと思うと指先を一本一本丁寧にオイルを馴染ませる手つきは非常に慣れていると言っていい。
そのまま手首から肘へとあがっていきながら、しっかりとオイルを身体に馴染ませていく。
その手つきは性感エステの何ふさわしく、アロマオイルを肌へしっかり塗りこんだ後触れるか触れないかのぎりぎりのラインで肌を撫でられたり肘の内側をくすぐられたりと私の情欲を煽るには十分すぎるものだった。

やがて肩に辿り着き、首筋へといたる。たっぷりとしたアロマオイルが胸元へと垂らされる。
しかし晶の掌は乳房に触れることなく脇へと至り、そのまま腹部へと移動していった。
問題はそれらが全て服の上から行われていたということだ。オイルを吸って色を変えた衣服はその薄さもあいまって、今ではぴったりと肌に張り付いている。
しかし未だオイルを塗られていないにもかかわらず、胸の部分では期待に硬くとがっている乳首が丸見えで、少し恥ずかしかった。

「ぁ、あの、服は脱がないんですか?」

「はい。ご安心ください。このオイルは服の上からでも十分効果が御座いますので」

そうじゃないと言いたかったが、晶はそのまま腹部のマッサージへと移った。
わき腹を擽りつつ脂肪を絞り上げるように動く掌。力強いマッサージとと繊細なタッチが順番に繰り出される。
掌は腰へと至り、またアロマオイルを足しながら太ももへと至る。期待に胸が高鳴ったが、内腿に触れることなく掌は膝へと移動した。
既に期待で濡れていることが自分でも解っていたため、肝心な場所に触れてもらえないことが少しだけ不満だ。

「幸枝様、ご気分はいかがですか?身体の血行が良くなり、ほぐれていく感覚は御座いますか?」

「ぁ、はい。ぽかぽか、します」

「ではもっと温かくなるように致しましょう」

ふくらはぎを絞るようにマッサージされ、続けて足の甲や裏にもオイルにてらてらと濡れた掌が触れる。
親指、人差し指、中指と足の指の間まで丁寧に塗りこまれ、くすぐったいような期待を持たせるような手つきで私の身体はどんどん昂ぶっていった。

「ぁ……ふ、ぅ」

「温まってまいりましたか?」

「あ、はい……」

「熱く、なってまいりましたか?」

「……ぁ」

その言葉が皮切りだった。今までのような口調から、まるで睦言のように甘く、同時にどこか熱を孕んだ一段低い声。
オイル塗れになり緊張を解すという名目の元じっくりと昂ぶらされた身体がずくりと疼く。
再度オイルを手に取った晶が、掌で包み込むようにして私の乳房に優しく触れた。
どきどきとうるさい自分の心臓の音がばれてしまうのではないかという私の思いを余所に、オイルに濡れてらてらと光る掌が私の乳房をゆっくりともみしだき始める。
決して乳首に触れることはなく、それでもゆるゆるともみしだきながらオイルをしみこませていくのだ。
この時点で施術服に濡れていない場所は内腿の周囲のみで、薄い布地は私の肌を透けさせながら身体にぴったりと張り付いていた。

「声を我慢してはいけませんよ。感じるままに喉を鳴らし、身悶えて下さい。幸枝様の全てを曝け出すのです」

ただ乳房を揉まれているだけ。にもかかわらず過去味わったことのないじんわりとした快楽が身体を火照らせる。
それはシャワーを浴びて体が温められ、その上でアロマオイルを使ってじっくりと昂ぶらされたからこそだ。
キスの後すぐに愛撫に走る彼氏との性交では決して味わえない、丁寧すぎる下準備のおかげだった。

「ぁ、ん……っふ、ぅ」

「服の上からでも解るでしょう?私の掌が幸枝様の乳房を包み込んでいるのが。私からもよく見えますよ。熱く火照り、うっすらと桃色に染まった肌が濡れた服越しに透けて見えて、今の幸枝様はとても扇情的でいらっしゃる」

どこかうっとりとした口調で言われ、ぞくぞくとしたものが背中を駆け上がる。
まだ肝心なところには何一つ触れていないのに、こんなにも感じている自分がいる。
早くもっと気持ちよくして欲しいと本能が叫んでいて、思わず懇願するように晶を見れば彼はくすりと笑った。

「足りませんか?」

「ぅ……はい」

「素直な幸枝様は大変可愛らしゅう御座いますね」

そう言って彼はにっこりと笑い、乳房を揉むのを止めないまま親指でぐっと乳首を押しつぶした。

「ぁん!」

「おや、まだ少し触れただけなのですが……そんなに刺激が強すぎましたか?」

人差し指と中指の間に乳首を挟み、乳房を揉み続ける。
待ち望んでいた刺激に私の身体はぴくぴくと跳ね、もっととねだるように胸を逸らせて晶の掌に押し付ける。
そうすればぬるりとした手が乳房から離れたかと思うと、親指と人差し指で乳首を摘まれ優しく引っ張られる。
突然与えられ始めた直接的な刺激に私は息を荒くしながら身悶えた。

「ぁ、ぁあ……っ、ん……ふ、ぅっ」

「幸枝様のここは随分と敏感でいらっしゃるようで。服の上からでも解るほどこんなに固くなられて……幸枝様、幸枝様が宜しければ施術服越しではなくここもじっくりと解させていただきたいのですが、宜しいですか?それとも、次のステップに移りますか?」

そう言って晶は乳首を押しつぶす。
次のステップという言葉も魅力的だったが、待ち望んでいた胸への愛撫だ。
固唾を呑んだ後、私は自分の胸に触れながらこっちで、と短く告げた。

「畏まりました。それでは僭越ながら施術服をすこぅしはだけさせていただきますね」

そう言って彼は鎖骨の横の辺りにあったリボンを解くと、中途半端に前を開き胸だけを露にする。
本格的に肌を曝け出すことに羞恥心が煽られ、そしてそれ以上の期待が胸がはちきれんばかりに膨らんでいた。
ぷるんと揺れる乳房は、既にアロマオイルがしっとりとしみこんでいる。
しかしそれでは足りないと思ったのか、晶はアロマオイルを手に取ったかと思うと乳房の上で直接伸ばし始めた。
今までは晶の掌で伸ばされた上で身体に塗りこまれていたので、これもまた快感を煽る一手となる。
しっかりと指先で乳首を捕らえながら、べたべたになるくらいアロマオイルを塗りこまれる。これではもうローションと言っていいだろう。

「んっ……ぁ、ふ……うぁ」

「リクエストがありましたらいつでも仰ってくださいね。ご希望に添えるよう、精一杯ご奉仕させていただきますので」

「うぁ、は、はいぃ……」

「そうそう、幸枝様、ご存知ですか?マッサージは軽く痛みが走る程度が一番効くそうですよ。ほら、いかがですか?気持ちいいですか?」

「ひぁ、ぁ……ん、気持ちいい……ですっ」

少し痛みが走る程度に乳首を摘み上げられる。しかしオイルでぬるぬるとした手ではそれも維持できず、つるんと指の間をすり抜けていってしまう。
それを何度も何度も繰り返され、軽く爪を立てられれば晶の言うとおり軽い痛みは快楽へと変換されて私の脳味噌を溶かしていった。
そうして指で摘みあげられ、かと思うと同じ刺激を単調に繰り返すだけではないと主張するように指の腹でもみくちゃに転がされ、時折スパイスのように爪を立てられる。
ただ胸をいじっているだけなのに、私の密壷からは洪水の如く愛液がほとばしっているのが自分でも解った。
だって内腿や足の付け根にはまだマッサージを受けていないのだ。それならばこの足の間をぬらすものの正体など決まっている。

「は……ん、ぅ……っく、んン」

「そんなに蕩けたお顔をされて……私の指はそんなに気持ちがいいですか?」

「あ、はい……とても」

「ではそろそろ次のステップに移ろうかと思っていたのですが、まだまだ此方を続けましょうか。とても気に入られたようですし」

そう言ってぎりぎり先端に触れる程度の位置で、何度も乳首を弾かれる。それもまた気持ちいい。
快感に身体をくねらせても指先はついてきて、私を逃してなどくれやしない。
けどこれだけじゃ足りない。熱く火照った身体はもっと鮮烈な快感を求めていて、晶の言葉に嫌々と首を振った。

「おや、このマッサージはお気に召しませんでしたか?」

「ぁ、ちがう……そうじゃ、なくて」

「私の指は気持ちよくありませんか?」

「気持ちよくないわけじゃない、です。ただ、その」

内腿をすり合わせる。欲に浮かされた頭でも、もっと欲しいと直接ねだることに対する羞恥心はいまだに持っていた。
その間にも乳首の先端をつま先で擽られ、じらすようなその愛撫に泣きそうになってしまう。
すぐに涙が溢れそうになるほど感情の箍が緩み頭がぼうとするのは快楽のせいか、それとも部屋中に立ち込める甘いアロマの香りのせいか、判断がつかない。

「次の、ステップに……うつって、ほしくて」

それでも何とかそれだけを告げた。
直接的な言葉を使わずとも通じるよう、予め晶が言葉を選んでくれていることだけが救いだった。
晶は然様でしたかと言って笑うと、最後の悪戯とでも言うように両方の乳首を爪先で摘みあげる。
それが痛くて気持ちよくて、私は肩を跳ねさせて悦ぶことしかできなかった。

「お気づきできず申し訳御座いません。それでは次のステップに移らせていただきます」

そう言って晶は、それはそれは綺麗に微笑んだ。

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