宣言通り、ローが妙な真似をすることは無かった。
囚人達に足をくれてやったり、彼らとも上手くやっているようだった。研究所の主であるシーザーは全く信用していなかったし、その秘書であるモネは穏やかに接してはいるが、処世術だろう。あれは多分信用していない。
モネもローのよく分からない能力で腕と足を鳥のように人体改造されているようで、モネの羽はふかふかと柔らかい。空も飛べるようになっているとか。飛んでるところをちゃんと見た事ないけど。
「うわ〜、すご〜い、どうなってるのこれ?感覚とか、ちゃんとあるの?」
「ええ、あるわよ」
そう言ってモネは手を差し出した。確かに感触はあるようでモネは顔を逸らして、それよりも、と切り出した。
「あなたは良かったの?」
「興味はあったけど…」
そう、興味はあったが、ローにはお前は専門外だ、と一刀両断され、シーザーはお前は命知らずなのか、と小馬鹿にするように鼻で笑っていた。
なにが命知らずなのかさっぱり分からないし、専門外というのもよく分からない。互いにそれの意味は理解しているようだったが、私にはさっぱりだった。
一緒に話を聞いていたモネもさぁ、と返答したあたり理解しているのは2人だけのようだ。
「でもその体で飲み物淹られるの?」
ここでの楽しみの大半はモネの淹れる美味しいお茶やお菓子だ。しかも日替わりでいつも違うものを用意してくれる。そしてとても美味しい。
だというのにその体でモネがお茶や珈琲を淹れることが出来ないとなると人類の損失。いや、損失があるの主に私の娯楽なんだけど、とにかくただでさえ少ない娯楽が無くなるわけだ。モチベーション的な意味でそれは大変困る。
「心配いらないわ。はい、いつものよ」
モネはそう言って湯気の立つマグカップを私に差し出した。息を飲み、口につける。
「……!いつものモネの味!」
「慣れもあるでしょうけど、まるで長年連れ添ってきたように自由に動かせるわ」
「良かった〜。モネの淹れる飲み物も用意してくれるお菓子も美味しいから、これが食べられなくなったら仕事のモチベーションが無くなっちゃうよ」
「うふふ……冥利に尽きるわ」
そしてカウンターに置かれたチョコレートを手に取ろうとしたところで、隣から腕が伸びて来る。
そう、これは戦争。どちらがより多く、より早くこのお菓子を手に入れることが出来るかという戦争だ。とはいえ、普通の人間でしかない私が悪魔の実の能力者に機動力に勝てるはずもなく、最初にチョコレートに手を付けたのはシーザーだった。悔しい。
シーザーはニンマリと笑って、目の前でチョコレートを口に入れた。許せない。
「シュロロロロ……モネに餌付けされて食いつくとは……相変わらずお前はお子ちゃまだな、ロア」
「もしかして馬鹿にしてるの?そういうシーザーだってモネの用意したお菓子食べてるよね」
「おれはモネの上司であり、モネはおれの秘書だそ……!!ならモネが用意したものはおれのものだし、これは当然の仕事だろう!!」
「ええ、そうね」
モネは呆れたようにシーザーに珈琲を差し出した。
vita