情操

淑やかな絶望を舐める。舌先がぴりりと痺れたのに思わず顔をしかめた。
隣で激烈な失意を屠っていた男が呵々と声をあげて、
「それはあんたには早いだろう」
そんな物を喰っちゃあ駄目だ、あと5年は待たにゃならんよと男が此方に皿を寄越す。
真っ白なさらに、刹那の衝動を煮詰めたスープが注がれていた。「これは?」行儀が悪いと知りながら、スープを指さして尋ねた。
「――目映い憂鬱。美味いよ」
銀のスプーンで掬って一口含んでみると、それは脳を侵すように甘かった。