比翼連理

比翼連理の言葉は二人の為に用意されているようだった。幼少の頃より二人は一本ずつしかない手を固く結び、何処で何をするにも共にあった。

ニコラは、己の妹の背に純白の翼があるのを視た。不完全な翼である。自分たちの隻腕と同様に、彼女の背のそれも片翼であった。だが両翼であったなら、最愛の天使はいつまでも自分の隣に留まってはくれなかったろう——。そう思えば、彼女が完全でないのを神に感謝する他なかった。
アンリもまた、姉の背に翼が生えているのを視た。月夜を落としたような黒翼は、大層立派で美しいが片方しか生えていなかった。彼女はそれを人知れず喜んだ。両翼でないから姉は地上に在ってくれるのだ、誰に攫われることもなく己の隣にいてくれるのだ。と考えれば考えるほどに、天に向かって跪く他なかった。

互いの背に一翼を視て、そうして「失われたのを捥いだのが自分であったなら」と考える。
生まれてくる時に、無理やり剥いでしまったのだ。彼女の隣に収まるのは、我が身でなければ赦せぬが故、何処へも飛び立たぬように捥ぎ取ってしまったのだ。
もし、——もし飛び立つのであれば、それは自分とでなければならなかった。そうでなければ、いっそ世界ごと滅んでしまえば良いのである。

互いの背に回していた腕に、どちらからともなく力を込める。
それは自分と瓜二つの、けれども全く違う、高尚な愛すべき存在を、自分の隣にくくりつけておく為の鎖であった。