女々しさを掻き抱く

あぁ馬鹿だな、と嘆息する。
こういうのは、割り切りが一番大事なのだ。お遊びはお遊び、本命は本命と、きちんと線引きしてしっかり分けておかなければならない。
「後腐れのない関係」を求めて、ただひとつ、決して本気にならないことだけを約束事に恋人ごっこをする――私と彼女とは、そういう関係だ。……そういう関係だったのだ。

相性は良いけれど、君のことは愛せそうにない。

そんな話をしていたのがいやに懐かしい。我ながら「愛せない」と宣言するだなんてどうかしていると思うのだけれど、あれは今思うと自分への牽制だったのかしらと、愚かな考えにたどり着く。
最初から惹かれていたのだろうか、だからあんなことを――わざわざ言わずともいい、余計なことを、口走ったのだろうか。
彼女は私の言葉に、一切の不快感を示さなかった。ただふっと紫煙を吐き出して、
「それは結構」
と端的な答えを返した。……それっきり、その話題はしまいになった。

それがどうして、と髪を掻き乱す。
私が彼女に本気になったのが当人に知られたのは、ほんの数日前のことである。
「あんた、あたしが好きなんだね」
つまらなくなったね、これで最後にしよう。
彼女はそう言って、熱を覚ますのもそこそこに、シャワーを浴びて部屋を後にしてしまった。
あの時追いかけていればとあらぬことを考えて、大馬鹿だ、と口元が歪む。溜息に乗せて、彼女が喫っていた重たい煙をゆっくり吐き出して。
「……不味い」
こんなものが好きだなんて、どうかしている。
そうして、どうかしている彼女に惚れ込んだ私の方が、ずっとどうかしているのだ。