ロックンロールシンドローム

 電子ドラムの拍動が脳を激しく揺すぶっている。重いベースが心臓を震わせ、高速のギターは外耳から内耳へと至り、やがて思考を攪拌した。
 何か考えていたような気がする。深く思い悩んでいたような、その挙句いっそ命をも捨ててしまいそうな、……。一体何を考えていたのだったか、と首を傾げてショットグラスを呷った。ロックのメロディに合わせてアルコールの毒が体内を駆け巡っていく。音楽に掻き回された脳内が、酒を受けて尚も乱れていく。
「これで良いのだ」と思って目を伏せた。
 ――ぼくは、これで。