胡乱ポップ

 よく晴れた朝だった。僕が死んだのは、うららかな春の日差しが窓から差し込む四月末のある日のこと、突然なようでいて薄々予感のあった終末だった。僕はその年、念願叶って大学入学を果たしたばかりで、これから始まる新生活とやらへの期待に胸を躍らせながら、少しの不安を手に、駅から徒歩十分の古びたアパートに転居した、その矢先のことである。
 僕は何となくどこかで——無意識にも近い領域で、自分の死を予感していたように思う。僕は今年死ぬ。少なくとも夏は越せないだろう。あるいは夏が来る前にそうなるかもしれない。そんな予感だ。そして僕はそれを悲観しなかった。ただ当然のものとして受け入れた。驚きも心配も存在しなかった。諦念——?それも少し違う。僕は本当に明るい、朗らかな気持ちでその日までを生きた。
 僕が死んだのは、弁当のおかずをランチボックスに詰めている最中だった。ぷつりと線が切れるような感覚が胸の内にあって、その瞬間菜箸が手から滑り落ちた。ただ立っているのも難しく、僕は瞬く間に床に膝をつく。
 「今日か」とそんな言葉が漏れた。




title:プラム