縊死

「首を吊ったところで死ねるものか」
 男はそう言って唾を吐き、忌々しげに舌打ちした。
「どうせ見つかって降ろされるか、死ぬまで苦しむかのどっちかさ。死ぬってのも難しいもんだね」
 まるで経験者のような言い草だった。貴方は首を吊ったことがあるのかと問いかけると、彼は目を丸くして「死ぬとなると遠慮も何も無くなるのかい」と口にして、ついでからりと笑ってみせる。
「あるよ。今も諦めちゃいない」