ニカは、淡い色の澄んだ海が望める砂浜に倒れていた。
ゼンが駆け寄ってもちっとも反応しなかった。
「ニカ、僕だよ、ゼンだよ」
引き起こすと、首が重力に従ってがくりと揺れた。ギィと錆びついて軋む音がした。砂が内部に入りこんでいるのか、動きが鈍い。
「約束したから、会いにきたんだ。クドリャフカも連れてきた」
ゼンはふと、ニカが握りしめている手紙に気づいた。異様な力で握られたそれを四苦八苦して取り、開く。
待っていられなくてごめん
震える字で、ただそれだけ書いてあった。
「潮風が体によくなかったんだろうなあ。ロボットだって、死ぬんだよ、お前はわかっていなかったけど。壊れたら、それは死なんだ」
ゼンはニカを抱きしめた。
「来るときに丘があった。そこにお前の墓を作るよ。隣にクドリャフカのも。それから、千里のも。なあ、素敵だろう」
抱え上げ、丘へと歩を進める。
「きっと夜には満天の星が見えるから。クドリャフカにはいろいろと星を教えたからきっとわかるはずだ」
頬を伝う涙は無視した。
「僕はずっと一緒にはいられない。春が来たことを伝えてまわらなくちゃいけないから。けれど絶対また会いに来るよ」
ニカの体と、クドリャフカとセンリを埋め終えたのはすっかり日が暮れた後だった。
「そうして、いつか僕は夢を叶えるだろう。何百年あとになるかわからないけど、どうか待っててくれよ」
ゼンは三つの墓に手を合わせて、ひとりぼっちで歩き出した。
読んだよ