神様の思考回路
僕が初めてあいつにあったのは5歳のときだった。僕の公園は人がいなかった。遊具はブランコしかなかったが、それでも僕はそこが好きだった。その公園には蛇の親子がいたからだ。いつも一つしかないブランコに乗って蛇と話した。
でも、その日は違った。透き通るような金髪と吸い込まれそうな青い瞳。僕と同い年くらいの女の子がつまらなそうに僕のブランコを揺らしていた。

「あなたはだれ?」

ブランコから飛び降りて、問いかける少女に僕は不機嫌になって「それは僕のブランコだ」と言い返した。少女は「おかしいわ」と僕に意見した。孤児院で僕の言うとおりにならない人はいなかった。だからは初めて会うそんな少女に腹立たしくなった。
少し痛めつければこいつも逃げて行く。そう思って、僕は‘力’を使った。僕だけの僕だけの特別な力。それなのに、こいつは笑った。

「わたしもできるよ。ふしぎなこと」

そういった途端、空気が変わる。気付けば周りには季節外れのピンクの花。少女は僕を見て「一緒だね」と嬉しそうに言った。

それから僕らはその公園で会うようになった。少女とは意見があった試しがなかったけれど、少女だけは僕を怖がらずにいてくれた。名前も知らない。僕が教えないなら、私も教えない!と意地を張るそいつが少しおかしかった。

11歳のある日。孤児院に変な奴が来た。ダンブルドアと名乗ったそいつは、僕が魔法遣いだと言った。僕に命令するのは気に食わなかったが、様々な魔法を教えてくれるという。もちろん僕は条件をのんだ。
そして思った。僕が魔法遣いなら、あいつもきっとそうだ。孤児院から飛び出そうとする僕をダンブルドアは止めて手を掴んだ。その瞬間歪む視界。今思えば姿現しだったが、当時の僕は学べば僕にもできるのかとあの狸に聞くことしかできなかった。
それから入学式までは漏れ鍋というところで過ごした。漏れ鍋から孤児院への行き方は教えてはもらったが、余分なお金はなく少女に会うことはできなくなった。あいつがなんだ、僕が不愉快な思いをするだけだったじゃないかと。それでも少女の事を考えてしまう自身に戸惑い、そして考えない為に買ったばかりの教科書を隅々まで読んだ。そのおかげか入学までに教科書に乗っているほとんどの魔法は使えるようになった。入学式までに随分身長も伸びた。

入学式。
「名前=苗字!」
ダンブルドアが名前を呼ぶ。そして僕は目を疑った。金髪と青い瞳。あいつがいた。
「ハッフルパフ!」と帽子は叫び、僕とは違う寮になったあいつを気付けば僕はずっと目でおっていた。
初めて箒に乗った時に、あいつはそれはそれはマヌケだった。それを見て笑った同級生に思わず魔法をかけたのは誰にもばれていない。魔法薬学では茹で蛞蝓を死にそうになって作っていたし、魔法史では毎回ぐっすりだ。
それなのに成績はよかった。僕の下をウロチョロしている名前に、順位を見るたびに笑いそうになった。
しかし、僕はあいつと一つも会話ができていなかった。僕の噂は耳に入っていたはずなのに、あいつは僕に話しかけなかった。低学年があっという間に終わり、中学年になっても。高学年になって選択教科が全て一緒でも、少女は僕に話しかけなかった。7年生になってようやく、僕は折れた。僕から話しかけてやろう、と。しかし、ただ話すのでは割に合わない。だから決めた。

「僕と付き合ってくれないかな」

某然とする顔に笑いそうになった。久し振りにあってこいつは何というのだろう。そう思っていたのに。

「リドルくん!私!イケメンと天才って爆発すればいいと思うんだ!」

こいつは僕のことを覚えていないらしい。だから目的を嫌がらせに変更した。常に側をうろついた。そうすれば、流石にそのうち思い出すだろうと思っていた。
しかしこいつは思いの外鈍いらしい。僕を目の前に昔話を始めたのは誰だって頭を抱えたくなるだろう?

「まったく。いつになったら気づいてくれるのかな、君は」

必要の部屋で本を読む僕に背を任せ、いつの間にか眠っている名前に溜息をつく。顔にかかっている髪を流してやれば、ぼそりと彼女は呟く。

「ぶら、く。」

本当にこいつは。僕は彼女を抱き上げ、いつの間にか現れていたベッドに向かう。ベッドに寝かせ、僕も横になる。

はやく気付いてよ。

額に口づければ少女はくすぐったそうに笑った。



彼の思考
(な、なななんでリドルくんが隣で寝てるの!????)
(…うるさい)
katharsis