進級の条件は


「だから……留年した……」

 言葉が出なかった、意味がわからなさすぎて。だって高校生である私の仲間内から「留年」という単語を聞くのなら、まだ返せる言葉はあったかもしれないけど、目の前の彼はまだあどけなさの残る中学生。だから申し訳なさそうに、情けないのかちょっぴり恥ずかしそうにして言う圭介に、私はあんぐり口を開けて固まってしまった。

「……ン?……名前、話聞いてるか?留年したんだけど」

 私の反応を見て聞こえてないと判断したのか、圭介は再度とんでもないことを口にする。それをゆっくり咀嚼して受け入れると、今度は違う部分が目についた。
 恐る恐る視線をあげて話す彼には知る由もないだろうが、椅子に座った状態で立ち尽くした私を見上げる様子は、完全に上目遣いとかいうアレで。あまり見ることのできない萎れた不良に胸が張り裂けそうになった。

「名前?なぁ」
「あ、ごめん。留年したんだよね」
「ウン……でももう説教とかいらねーかんな、オフクロに死ぬほどされたし……」
「そっかぁ。なんで留年したか原因はわかってるの?」

 加虐心を擽ってくる圭介に、私は最低な嘘を思いついてしまい、雀の涙ほどの申し訳なさに目を瞑る。
 彼氏が中学校を留年、という衝撃を受けた後に、サラッと都合の良い流れを作ろうとする自分があまりにも天才で怖かった。

「あー、色々やらかしちまったし、バカだしさ……だからオレ勉強頑張ろうと思ってんだ。見ろよ、眼鏡も買った」

 瓶底の、眼鏡。救いようの馬鹿かな。眼鏡になんの力があると思ってるんだろう。それでもあんまり呆れた目で見ると、勘のいい彼は雰囲気で気づいて拗ねてしまうから、誤魔化すように顎と頬を撫でながら仕掛ける。

「ン……?」

 片目を瞑って気持ちよさそうに手を受け入れる仕草が猫みたくて可愛い。

「違うよけーちゃん、そんなんじゃ留年にはならないよ。もしかして誰にも教えてもらってない?」
「……まさか、オレなんか騙されてんのか」
「騙されてるって言うかさ、多分みんな言いづらかったんだと思う。留年の理由もそれじゃないかな」
「っ教えてくれ!オレもう留年できねんだ!」

 17歳が14歳に誤った性知識を植え付けるのは、お互いが未成年にしろアウトだと思う。でも後ほど弊害が出ることもないから心配ない。つまりは私ルールを展開させてもらうが、私が一生圭介の面倒を見るんだから誰にも迷惑なんてかからないし、そもそも圭介が嫌がらなければセーフ、ということである。

「けーちゃんさ、おしりでイったことある……?」
「んぁ?」

 圭介の膝の上に跨り尻を撫でる。距離感を遅れて理解した彼はそのあとぽぽぽっ、と顔を赤らめて、困惑の入り交じった声で「名前!」と叫んだ。

「はぁ……だからみんな圭介に教えなかったんだよ。そんな子どもみたいな反応するから」

 年下の彼氏に一番効くのは年齢を出すことだと思う。現に今彼は、必死に大人ぶろうと一瞬で澄まし顔を作ったのだし。だけど頬の赤みが引いていない所はやっぱりガキくさかった。

「でも尻でって……無理だろ。つーかオレが知らねーだけでアイツらも全員ヤってたのかよ……」
「デリケートなことだからあんまり人に言わないんだよ」
「そーか……」

 有り得ない知識を必死に噛み砕き、飲み込もうとしている圭介に私は勝利を確信した。これで合法、いや合法かは知らないが、なんの不便もなく圭介の体を開発できると。

「これ、まじでやんのか……?」

 私が浣腸のキットを用意すると、無理やりトイレに座らされた圭介は眉を下げてそう聞く。

「これ見た事ない?」

 答えは無言。ただ目だけは食い入るように見つめてくるので、顔がうるさいことこの上ない。

「知らないか、学校で配られるはずなのにね。圭介休んでばっかだからそうなるんだよ」

 嘘に嘘を重ねすぎてもう戻れないところまで来てしまったような気もするが、これから見れる圭介を想像すると、例えジョーカーになったとしたってどうでもいいと思えた。今謝罪を口にしたところで感情はミリ単位すら乗らないし。

「じゃあ脱いでね。いつまでも隠してらんないから」

 最初は苦虫を噛み潰したような顔で話を聞いていた圭介だが、「やっぱりこわいよね。やめる?まだ中学生だもんね」なんて続ければ、彼は霧が晴れたかのように恥じらいを消し、教科書に挑む時と同じ顔でキットを使い始めた。このポンコツ具合ではいつか襲われてしまわないかと不安である。絶対ないけど。

「う、ぁ……」
「だめだよ、今出したら意味ないから。これ入れて7分くらいは我慢ね。便意感じたらにして」
「べん、い?」
「うんちしたくなってからしてね」
「オウ……おまえいつまでここにいんだよ……」
「見ちゃダメ?」
「ダメに決まってんだろ……」

 扉を閉じきった後、私はにやけた顔を戻すことが出来なかった。
 たしかに恋人の排便行為を見たいなんていうやつは変態かもしれない。だけど、だけど圭介だっておかしいのだ。普通はドン引きした目で「気持ちわりぃ」くらいは言ってのけるものなのに。圭介は弱々しい声で、涙目で、顔中林檎みたいにして「ダメ」と言ったのだ。アレはゴリ押しすれば見せてくれるタイプに違いない。私にだけはかっこ悪いとこ見せたくない、なんて言うくせに。
 それから程なくしてトイレからウォシュレットの音が聞こえたので、頬が痛くなるほど口が曲がった。こんなに可愛い彼氏がこの地球上に他にいるだろうか。

「おかえりー。大丈夫そう?」
「……みんなスゲぇんだな……。ナヨナヨして弱っそうな同い年の野郎共もこれ耐えたんだもんな……」

 トイレで人格まで排泄したのか、顔を上げると前には限界不良学生ができあがっていた。圭介はお腹が弱いのかもしれない。
 落ち込んだ彼が丸まった猫みたく私の横に腰を下ろしたので、暫く抱き抱える形で褒め続けたら「一応洗ってくるな!」と普段の顔つきで風呂場へ向かっていった。できた彼氏だ。

 ところ変わって圭介の寝床、押し入れにて。彼は下だけでいいはずなのに全ての服を脱ぎ払い、私の準備を座って待っている。裸を見られることはなんの苦でもないようだ。というのも私が毎回彼の体をかっこいいと褒めるからだろう。私のせいで自信に溢れていく圭介はかわいい。

「なんでゴム使うんだ?名前チンコねーだろ」
「ここほぐさないとだから、指と圭介のお尻守るために使うの」
「へぇ」
「よし、じゃあ四つん這いね」
「はっ?」
「じゃないと触れない」
「他にやり方ねえの?」
「もう!義務なんだから恥ずかしいとか言ってらんないでしょ!」

 唇をきゅっと結ぶ圭介を見て思う。義務とは一体なんだろうか。私は言ってて自分でもわからなかった。もう男のアナル開発は国の義務だとパチをこいていいだろうか。歴史の教材にそれとなく混ぜて教えてもいいだろうか。

「じゃあローション使って最初指一本でやるから。あ、けーちゃん今腰くねった」
「うるせえだまれ……っ」

 勿論人によるが中学生はまだ尻に毛が生える時期ではないようで、圭介の体はすべすべだった。怒らないで、の意を込めて小さく硬い尻に唇を落とすと、足の間から見えるそれはピクっと上に持ち上がる。指摘したら今度こそ彼がへそを曲げてしまう未来がくるはずだ。こういうのは事前に回避するに限る。

「あ、その前にここマッサージするんだ」

 読んだ記事によると会陰という部位を刺激するのがいいらしい。会陰?と思ったが蟻の門渡りと言われればなるほど理解した。なんかふにふにしてて可愛いかもしれない。まあけーちゃんに可愛くない場所なんてないけど!

「あっ、うっ、んっ」
「ごめん強い?」
「へーき、っ」

 これだけで既にひと仕事した気分なのに、未だ私の指は目的地へ到達していない。道のりは予想より長かった。そして逸る気持ちを無視しきれず、私は彼に断って挿入を開始する。ようやくスタート地点にきた。

「ぅ、……うぁ……やべぇきもちわりぃ」
「だいじょうぶだよ。すぐ慣れるから、まず一本で頑張ろう」
「おー……。なぁ名前」
「ん?」
「わりーけど、今日はイけねーと思う」

 挿れたばっかでイくなんてプロでも至難の業なんじゃないのかな。とはいえ今感じてる不快感を想像すればそう言うのも無理はない。
 早い段階で"気持ちいいこと"とアナルをリンクさせる作業に入った方がいいのか、このままあーあー喚かせたまま続行するべきか。五分弱ほぐしながら悩んだ末、上を向かせて座らせることにした。足はM字というか三角座りのような体勢で開脚させ、背中に手を回してもらっている。手、大きいな。14歳のくせして手が"男"って感じなのズルいなぁ。

「ちゅー好き?」
「……オマエも好きだろ」

 曲がりくねった返しをするのはいつものことだけど、やっぱりおバカな圭介はオマエ"も"なんて言って自分が好きなことをバラしてしまっている。
 鼻を優しく噛んでから下にズレると、圭介は少しだけ口を開けた。喧嘩のスタイルと言い普段の彼と言い、なんでもガッツいてきそうなくせ、キスは意外と受け身だったりするからギャップを感じざるを得ない。数回したセックスだって、私はちんこがついてる側だったかと疑うほど可愛いことばっかするし。

「んー、二本、いけそう」
「あ、っおい、そっちもいいけど、ちゅー忘れてんぞ……っ」
「ごめん」

 圭介がたどたどしく出した長い舌をチロチロ舐めたり吸ったりして、そんな間で私は圭介の"前立腺"とかいうやつを発見した。少し膨らんでいると聞いたので、スリスリなぞって確かめると圭介が足を閉じかける。舌を噛んで「ダメ」と目で伝えると、瞳が許しを乞うように潤んだ。

「あっ、ぁっ、なんだこれっ……名前、おれっ」
「どう?」
「ちんこ、あつい、し、んっ!……とんとっ、んっ、すんの、やめろっ」
「はあい」

 単調に母音を繰り返し発して、私の指を何度も何度もしめる圭介をもう何十分見ただろう。
 私たちのえっちはムード作りを長く取るため元々時間がかかるせいか、キスしながら何分も尻を弄り続けるのは全く苦じゃなかった。ベッドに入ってからのカウントでも、とっくのとうに長い針は逆さを超え元に戻ろうとしてるくらいだ。

それなのにオーガズムに達するとまではいかなそうな圭介に、私は苦肉の策を出すしかなかった。策といえば聞こえはいいけど要は諦めである。

「うーん、今日始めてその日にお尻だけでイくの、やっぱ難しそうかも。とりあえずこの一年間は一年生やるしかないし、進級前までに極めればいいよね?」

 自分勝手なことを言いつつ手は止めない。感じやすい圭介なら今日でワンチャン……!そんな甘い考えは粉々に砕けたが、最初の一歩が大事なのはこの十七年間でなんとなく学んだ。自分のことはともかく圭介のことは大事にしよう。三本入っただけでも大きな成果じゃないか。

「い、けど……あっ、あー♡♡…けどっおれいくかも……ッ♡」
「うそ、こっち扱かなくてもイけそうってこと?」
「そー♡あ〜やべ、もっとこいよっ、あ、んぁッ♡あWーーー♡♡♡きもち、っ♡」

 艶艶しい黒を気にもせず靡かせて、だらんと空いた口からはチャームポイントの犬歯が見えて。堪え性のない私はたまらず体重を乗せて彼を押し倒し、興奮を隠しもせず前立腺を突く。

「あ♡やべ、っ♡♡こーふんすんなばかっ♡♡」
「はぁぁっ、けーすけかわいいっ」
「んんっ♡♡♡ぁ、あっなんか、かなしっ♡おくきゅんってして、さみし、ぃっ!やべぇ、オレへんになってる……っ!あっ♡♡」
「寂しいの〜?私がいるんだからいっぱいぎゅうしてよ♡」

 事前に、"ドライでイく前は腹の奥からか中からか切ない何かを感じることがある"という情報を得ていたため、初めての感覚に怖がる圭介を乳児に見立てて母親みたくあやすことができた。言った通りに私にしがみつく圭介は、母に掴まって運ばれる動物の赤ちゃんみたい。

「んっ♡ん、ぁっ♡♡なぁおれ、おんなみてぇ、でっ♡はずい、あWっ♡♡」
「そんなことないよ、圭介は強くてかっこよくてえっちの時もすっごい男の子♡って感じだよ♡」

 半分嘘だけど。私は圭介を雄のまま落としたいから執拗に「私のかっこいい彼氏♡」「世界でいちばん強い子♡♡」「漢の中の漢♡」なんて洗脳に近い形で言い聞かせる。嬉しいのか圭介の腰はガクガク揺れ始めた。

「イっ、♡♡やぇWっ、いくW♡♡♡もれるっ♡なまえのかれしなのに♡♡おれつよいのに、しりでイくっ♡♡あっ、あぅッ♡♡きす、きすっ、!ん!ん"〜〜〜♡♡♡っは、ぁっ♡イッ…………───ぁ、〜〜〜〜〜あWWッ♡♡♡…はぁっ♡ぁえっ?♡♡とまんな、あ、あっ♡あぁぁッ♡♡♡なまえたしゅけ、ぇっ♡♡んぅ"〜〜〜♡こわれ、たっ♡♡おれこわれたッ♡♡♡ひっ、ん……♡」
「ここコリコリする限りずーっと気持ちいの続くからね。射精とはまた違うの」
「ふーっ♡……ん、っはぁ……♡♡」
「上手にイけてえらいね♡かっこよかった。ご褒美にもっとしてあげる」

 汗が腹の割れ目を伝い、今回触れもしなかった乳首すらピンと立って、無理にしがみついている手はまだ少し震えている。とっくにキャパオーバーだろうが、欲張りな私はもうあと3時間くらいはこんな風な圭介を見てたかった。

「は、いい、いらねっ──ぉWっ♡♡♡なまえWっ!♡♡ぁ、ぁぁあっ♡またいく"っ♡♡イッ……っあW、はぁッ♡♡あぁぁあっ♡♡♡とま、っれ!やめれ、ぁWッ♡♡あWっ♡♡♡」

 こんなことをこの後何度かしてしまったわけだから、怒られないはずもなく。圭介は水を持ってきた私を無視して好きなだけ補給したのち、あからさまな態度でそっぽを向いた。

「ごめんね?かっこよくて我慢できなかった。圭介大好きすぎてやっちゃった」
「……バカか」
「ごめん〜!圭介が相手してくれないの寂しくて泣きそう……」

 後ろから抱きついて擦り寄るとおっきい手が乱雑に私の頭を撫でた。ちょろい。あまりにもちょろくて圭介が一人の時どう生きてるのか気になってくる。

「はぁ……風呂入んぞ一緒に。……あ、あとこれって先生に言えばいいのか?オレが尻でイけたってこと」
「ばっ……」
「ば?」
「場地君のことは私に任せて!」
「は?なんで急にそんな呼び方すんだよ」

 思わず出かけた馬鹿を飲み込んだが結局圭介を苛立たせる結果に落ち着いた。ダメだ、このままだと圭介がとんでもないド変態キャラになってしまう。そんなこと知ってるのなんて私だけでいい。

「圭介は報告しなくていいんだよ。イかせた側が言わないと証拠にならないから」
「確かにそうだな。じゃあ名前頼んだ」
「ウン。でも勉強もしないとダメだからね」
「……おー。まあ一旦風呂行こうぜ」

 この日が原因かこれから事ある毎に「かっけーだろ?」「今のどうだった?」と褒め待ちすることになる圭介だが、言われた後の心底嬉しそうな笑顔見たさに、私も負けないくらい褒めてしまうのは似た者同士だからだろうか。

2021/8/27

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