アゼムとヒュトロダエウスが眠らないと出られない部屋で生き延びる話
ヒュが生贄になる日、アゼはアーモロートへ帰ってきていた。終末を迎えた世界を巡り、全ての真実を携えて。終末を抑え込んでも、あれらをどうにかしなければこの星の未来はない。そう、委員会に告げようと戻ってきていたのだ。乱れた理を正すため、ゾディアークは今日召喚される。生き残った半数の命を以て。アーモロートにも獣が溢れ、崩壊しないはずの美しい都は今は見る影もない。ヒュをはじめ命を捧げる者たちはゾディアーク召喚のため、核たるエリと召喚者たる十四人委員会の元へと向かっていた。
ふと、目の前を何かがよぎったのに気づいた瞬間、ヒュは体を強く壁に打ち付けていた。
「ぅ……何……」
厄災が生み出した獣が、獰猛な牙を剥いて唸り声を上げている。悲しいまでに醜悪なその姿は、人々の恐怖の象徴のようである。
ヒュがその獣を追い払おうと魔法を詠唱すると、放たれた魔法で轟音が鳴り響く。夜空からは自身のものではない閃光が迸り、一瞬で辺りの獣が一掃された。目の前には、見慣れた魂の持ち主。……アゼがいた。
「ヒュロダエウス!無事か!」
「アゼム!?」
どうしてキミがここに…。
アゼムはヒュの元へと駆け寄った。しかしその足は唐突に止まる。足元にあったイデアを封じ込めるクリスタルを踏み抜いたのだ。……そして偶然にも、そのイデアは作動してしまった。
「……あ、やべ」
「……え?」
ヒュ共々閃光に呑まれるアゼ。次に目を開けたとき、視界に入ったのは……
「「1000年寝ないとでられない部屋???」」
例のアレである。真っ白な部屋に2つ、ふかふかそうなベッドが置かれ、快眠に良いとされるアイマスクやサウンドなどが配置されており、いかにも寝てください!といわんばかりであった。ヒュは心当たりがあったのか、顔を引きつらせる。
「……これ、前に申請が来てたイデアだ……」
「へ?」
「何しても壊れないんだよね……上司があまりにも社畜で見てられないから、休んでもらいたくって開発したんだって」
「どっかのハーデスか?」
「また別の人みたい」
「へぇ」
局長お墨付きではあるが、一旦破壊を試みるためにアゼは転身をし、ヒュは全力で自身が持つ最高火力の魔法を叩き込む。……しかし、何度やろうと破壊することはできなかった。この大事な時に!と憤るアゼムと脱力するヒュであったが、ふと、最高品質と名高いそのイデアのベッドへと足を向ける。
快眠に特化しているというそれは、乗り上げた瞬間からふわっと体から負荷を抜き、雲のような感触を提供する。アゼは、ぼふりと勢いよく寝転がった。
「いまエメトセルク喚ぶわけにもいかないしな……」
「うん、正直万事休すだね……」
遠い目をするヒュ。しばらく考え込んでいた2人であるが、急にスイッチが切れたように倒れ込んだ。
そして世界は分かたれた。……3人のオリジナルと、影響の届かない次元の狭間にあるこの空間の2人を残して、全ての魂は14に分割された。
そこからきっちり1000年が経ったある日のこと。ヒュとアゼはぱっちりと目を覚ました。
「……おはよう……」
「おはようアゼム……ずいぶんとねていた気がするけれど……体がすごく軽いね」
「快適だった……あ、入り口空いてる」
「外に出てみようか?」
「一体どうなっているんだろうな……」
「少なくとも無事ではないだろうね」
外に出たヒュとアゼは、目にした光景に絶句する。かつての人々が、ただうめき声をあげるだけの知性なき存在となっていた。あの輝しい人々は、星は、どこに行ってしまったのか。けれどもアゼは、眼を一度閉ざし「もう一度眠ろう」とだけ言って部屋に戻る。
ソウルシーアであるヒュは、しばらくの間その薄くなった魂たちを見つめやがて部屋に戻りもう一度永い眠りについた。
その次に起きたのは、そこから数千年が経ちいくつかの鏡像世界が統合された後の世界であった。今度は知性があり、人の形をしたそれを見てアゼとヒュは部屋を飛び出して世界を駆け巡ることになる。
ーーー
メモ
休息しないとでられない部屋はアゼとヒュの本拠地みたいな感じになる。次元の狭間にあるから、霊災の影響は受けない。たびたびそこで眠っては起きるを繰り返している。
アゼとヒュ生存if
アゼはせっかく終末の真実を掴んでもそれを報告すべき相手はもういない。ヒュとアゼは「世界が分かたれた」ことを知ってエメたちももういないんじゃないかと思っている。(エメがなりそこないに紛れてた時、2人を見つけてそのうち2人のところに押しかけてくるし、生きてたんかってなる…多分)
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