素直じゃないと言うのが、彼のアイデンティティなのかもしれない。
そんな彼でも、三ちゃんにはとっても素直で純粋だ。
小手先の小さな意地やら見栄なんて、彼には全く通用しないのが、よーっく分かっているから。

私の前では、カッコつけるのが好きみたい。
大人なフリしてみたり、私を馬鹿にしてみたり。

私のことを、こどもっぽいと言う。
彼だって、とってもこどもっぽいのにね。
おかしくって笑っちゃいそうになるけど、ちょっと我慢。
だって、笑うと怒るんだもの。
ほぉら、こどもっぽいでしょう?


「…何笑ってんの」

「べつに?」

「ムカつく。なまえのくせに」


ほら出た。
お得意の、"なまえのくせに"
ジャイアンかスネ夫じゃあるまいし。
だっさい口癖だよね。

そんなの口にしようものなら、盛大に拗ねて、数日は口をきいてくれないだろう。
別にそれはそれで良いけど、不機嫌ですって態度を隠しもせずに、周りに当たり散らされたのではたまらない。
苦情が私に来てしまう。
そうなると非常にめんどくさいので、お口にチャック。
はいはい、と流してあげましょうね。


「なまえ、お前今、僕に対して失礼なこと考えてただろ」

「べっつにー?私がいつでも兵ちゃんのこと考えてると思ったら大間違いだよ」

「…なにそれ」


ほら、また拗ねる。
ぶすっとしちゃってさ。
こどもっぽいって、自ら公言してるみたい。
兵ちゃんって、頭は良いのに馬鹿だよね。


「なぁに、兵ちゃん、寂しいの?」

「…はぁ?何馬鹿なこと言ってんの?ついに脳味噌溶けた?」


整った顔を歪めて悪態をつくけど、耳が紅いの、気付いてないのかな。
教えてあげても良いけど、やっぱりやめよう。
きっと、頬まで紅くして怒り出すから。

まったく、世話が焼けるよね。


「脳味噌溶けて私が死んだら、兵ちゃんどうするの?」

「なっ…何でそうなるわけ…?」

「だって、本当に脳がおかしかったら、死んじゃうかもしれないでしょ?」

「有り得ない」

「分かんないじゃん。そうなってからじゃ遅いじゃん」

「…万が一、そうなったとしても、どうもしないよ。どうしようもないだろ」

「ふぅん。そっかぁ」

「…それだけ?」

「え、何が?」

「…もういい」


再び、ふてくされた顔を見せる彼は、女の子の私よりも繊細で、ちょっとめんどくさい。
だけど、別に嫌とかじゃなくって、面白いなって思う。

自分の思い通りにいかないのが、きっと歯がゆいんだろうなぁ。


「ねぇねぇ、兵ちゃん」

「…なに」

「兵ちゃんが死ぬ時は、私が最期まで見届けてあげるからね」

「…は?勝手に殺さないでくれる?」

「だけど、ずーっと兵ちゃんを想っていられるかは分からないから、簡単に死んじゃ駄目だよ」

「………なにそれ」

「だって兵ちゃん、私が傍にいないと駄目でしょ?」


かあぁって、音が聞こえてきそうなくらい顔を真っ赤にするから、つい、笑っちゃった。

赤みの増した顔で、私の手を掴んだと思ったら、蚊の鳴くような声で

「馬鹿…」

だなんて言うものだから。


こんな可愛い人、放っておけないよね。





ディア・マイハニー





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H23.10.25

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