「うひゃぁーさぶーい!」
「そんなカッコしてるからだろ」
「だってこのスカート気に入ってるんだもん」
「何もこんな寒い日に着なくたって良いのに…」
隣を歩くなまえは、丈の短いコートにマフラーを巻いていて、一見すればあったかそうだけど、足下に目を向ければ、一転して寒々しい。
丈の短い、裾がくるんって丸まってるスカート(バルーンスカートと言うらしい)に、膝上まである靴下(ニーハイソックスと言うらしい)、その上に膝より少し下ぐらいまでのブーツを履いている。
スカートと靴下の間、何にも守られていない、外気にさらされてる部分(絶対領域?と言うらしい)が特に寒そうだ。
男はスカートを履かないから、どれだけ寒いかなんて、分からないんだけど。
「可愛いんだから良いでしょー」
「…足、寒そう」
「なに?見たいの?」
「なっ…、何言ってんだよ!!」
「だーって金吾が足ばっかり見るからー」
「見てない!!」
「うっそだー金吾やらしー」
「だれがお前の足なんか…!」
「私は金吾になら見せても良いけど?」
「っ!?なっ、に、言って…!!」
「あはは金吾顔真っ赤!かーわいー♪」
「うるさいっ!!」
ぴらぴらと、只でさえ短いスカートの端を摘んで揺らすものだから、何だか見てはいけないものを見てしまいそうで、ひやひやした。
初めは、ただ、寒そうだなって、それだけだったけど、女子の、まして、気になる子の、その…あし、とか、そんなの、そこにあったら、男なら皆見てしまうものだと思う。
図星をさされたのが恥ずかしくてそっぽを向いていると、けらけらと楽しそうに笑っていたなまえの声が止んでいた。
「なまえ?」
「んー?なぁに?」
気のせいかもしれないけど、少し嬉しそうに、小さく首を傾げてこっちを見たなまえが、何だかいつもよりも可愛くて、ドキドキした。
さっきの、短いスカートから覗く足がどうとか言うドキドキじゃなくて、何て言うか、女としてのなまえを見たような気がして。
こんな、ふわっとした笑い方も出来るんだ、とか、普段よりも目元や口元がきらきらしてて綺麗だな、とか、そういえば良い匂いがするな、とか。
意識すればする程、何となくしか分かってなかった感情の輪郭がはっきりと見えてきて、どうして良いか分からず、狼狽えてしまう。
黙り込んで再び俯いた僕の態度が気に入らないのか、なまえが不満そうな声を零した。
「…はぁ、折角気合い入れて来たのに…これだもんなぁ」
「えっ…」
「気になる人に、二人で遊びに行こうなんて誘われたら、期待ぐらいするでしょ」
脳の情報処理がうまくいっていないのか、僕は混乱状態だ。
気になる人って?
期待って?
ふてくされたように、照れたように俯いたその顔がちょっと赤いのは、きっと寒さのせいだけじゃない。
『気になるんなら、映画でも遊園地でも何でも良いから、とりあえず二人で出掛けてみろ』
何だか適当に投げ返された団蔵の言葉が頭をよぎる。
素直に従ってみて良かった。
整理のついてない頭でも、それだけは分かった。
「…期待、しててよ」
「え…っ金吾!?」
頭で難しく考えるのは得意じゃない。
だったら、腹の底の方から溢れ出る衝動があるなら、素直に従ってみれば良い。
少し強引に掴んだなまえの手は、寒さで冷えていた筈なのに、あたたかい。
それは、なまえの熱なのか、僕の熱なのか、はたまた二人分の熱なのか。
何だって良いよ。
僕は今、なまえのことを、可愛いとか愛しいとかって感じることに忙しいんだから。
今日は良い日になるよ。
きっとね。
冬の日
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H23.12.27
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