…また、だ。
また、続かなかった。
こんなに、難しいもんだっけ…?
もっと、気楽に、すんなり出来てた気がするのに。
取っ替え引っ替え、なんてタイプでもなかったし。
でも、なんか、違う。
…アイツと比べれば、ずっと、求めてるものを与えてくれる筈なのに。
前よりずっと、満たされてる筈なのに。
俺の為に着飾ってみたりとか、気を引こうとしてるのが分かるし、俺がしてやること全部に、嬉しそうにするし。
ちょっとした独占欲も、度が過ぎなければ心地良い。
好かれてるって感じるし。
…そうか、アイツから感じられなかったのは、それだ。
普通、彼氏に対してなら、言動の端々に、何かしら『好き』ってサインがある筈なのに。
アイツには、それがない。
俺が何をしても、興味があるのかないのか分かんないし、にこりともしない。
表情がほとんど動かない。
そのくせ、偶に動いたと思ったら、今にも泣き出しそうな顔するから。
…俺、よく付き合ってたよな。
一応、一年は続いた。
一年と三ヶ月。
記念日は一日。
覚えやすかったのか、流石に忘れてはなかったみたいだけど。
俺が言わなかったら、祝うこともしなかっただろうな。
そもそも、アイツから話かけられることが、ほとんどなかった。
俺が一人でべらべら喋るだけ。
相槌も、声で、って言うより、首から上の動作、って感じ。
頷く、首を振る、首を傾げる、俯く。
最後のが一番困る。
何が言いたいのか、表情じゃ全く分からないのに、なかなか口を割らないし。
あんまり詰めて嫌われても困るし、最終的にはこっちが折れるんだけど。
…何であんなに、嫌われたくないって、思ってたんだっけ?
もう、分からない。
何が好きだったのか。
ちゃんと、好きだったかどうかさえも。
「三郎次せんぱーい?」
はっと、後輩の声で今に返る。
一番新しい元カノの怒り方と、コイツの怒り方は、少し似てる。
「また自分の世界入ってたでしょう?そっちから呼び出しといて、それはないんじゃないですか?」
「あー、悪い。ちょっと考え事」
「…回想、じゃなくて?」
じっと、含みを持った言い方をして俺を見る伊助は、元カノを思い出させた。
彼女にも、こんな風に、バレていたのかもしれない。
「…どっちでも良いだろ」
「まぁ、僕は良いですけど。もやもやしたままで困るのは三郎次先輩ですよ?」
聞いてほしい事、あるんじゃないんですか?
確信を持って放たれた声に、勝てる気がしない。
…これは、似てないな。
彼女が同じように持っていたら、また違ったのかもしれない。
***
H26.6.21
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