「優しい人ですよ」
問いに対する答えの第一声が、後輩らしいと思った。
「そうか…、ちょっと、曖昧な表現だな」
「あ…、そうですね、すみません」
「いや。他には、何かあるか?」
みょうじなまえとは。
どんな人物であるのか、確かめる必要がある気がした。
あまり口にはしないが、三郎次のあの様子は、かなり引きずってる。
まぁ、無理もないだろうが…。
これは、友人の欲目かもしれないが、三郎次程の男が、そこまでして欲しがって、いざ手放したとなると、あんなに尾を引くなんて。
言っては悪いが、今の自分の中の印象では、それ程の相手だとは思えない。
実態を知らずしては判断出来ないし、下手な言葉を三郎次にかける訳にはいかない。
繋がりがあったと言う後輩なら、話も聞きやすい。
「なまえさんは、真面目な方です」
「あれっ、能勢先輩じゃないスか!何してんスかこんなトコで!」
「きり丸…声が大きい」
「あ、スイマセン。で?何の話ッスか?儲かってます?」
「ちょっとな。ぼちぼちだ」
「隠すことないじゃないスか〜僕と能勢先輩の仲でしょ」
「気持ち悪い言い方するな…!怪士丸に聞きたいことがあっただけだ」
「へぇ〜なまえさんのことッスか?」
「…お前、聞いてたんなら訊くな」
「いや〜可愛い後輩と先輩のコミニュケーションじゃないッスか〜嬉しいくせに〜あでっ」
相変わらず怒りっぽいんだから…とか何とか呟くきり丸を無視して、視線を怪士丸に向ける。
話を逸らされては、わざわざここに足を運んだ甲斐がない。
苦笑しながら穏やかに佇んでいる姿に、変わってないな、そう思う。
「真面目で、少し、不器用な方です」
「なまえさんだろ?手抜くとすぐバレるんだよなぁ。でもあの人、人の分の穴埋めは自分でやっちゃうんスよ。最低限しか言わないっつーか」
バイト先の先輩だと言っていたから、当時の飲食店を思い浮かべているんだろう。
真面目、は、何となく分かるな。
少しカタイ雰囲気を持っていた気がする。
「よく、見ていて下さいました」
「怒らすと怖いけど、仕事も出来るし、良い人ッスよ。ちょっとどんくさいけど」
「なまえさん、おっちょこちょいだから」
「マジ照れしてる時、可愛かったよな」
二人の会話が弾んでいると言うことは、イメージが一致している、と言うことだろう。
おぼろ気に、みょうじの人物像が出来上がって来た。
…が、まだ、三郎次があんなに固執する動機には繋がらないな。
「…そうか、ありがとう。助かった」
「いーえ。で、お駄賃のほどは…」
「…飲みにでも行くか?」
「奢り?」
「じゃないとお前は来ないだろ」
「さっすが能勢先輩!お供しまーす!」
「怪士丸はどうだ?」
「はい、是非。嬉しいです」
久しぶりに、後輩とゆっくり話すのも悪くない。
でこぼこなこの二人が、今も仲良くしているようで安心した。
「…あ、能勢先輩、」
「何だ」
「なまえさんのことなんスけど、あの人、何つーか、下手くそなんスよ」
「言葉が、少し、足りないんです」
「自分の中にはちゃんと持ってんのに、周りのこと気にしすぎるっていうか…」
「自分の優先順位を、下げてしまうんです」
「誤解されやすいけど、可愛い人なんスよ」
どこか嬉しそうに話す後輩たちが、少し意外で。
一度、話してみたい。
何となく、そう思った。
***
H26.6.28
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