『なまえちゃんのアド&番号☆許可もとってるよ〜(*^▽^)b』


流石、仕事早いなー…

ここ最近、マメに連絡を取っていた先輩からのメールを、素早く転送する。



「…っと、お前まで早いのかよ」



転送先からのリターンの早さに、笑みがこぼれるのは仕方ないだろう。


珍しいこともあるものだ。
久作が、あの久作が、自分から、連絡先を知りたがるなんて。

まして、飲み会で初めて会った女の子の、なんて。





「…あ、タカ丸さん、メールありがとうございます」

『全然良いよ〜。こっちこそありがとね。男の子集まんなくて困ってたから』



電話口から零れる声は、相変わらずで、何だか少し、気が抜ける。

人が足らないから、と誘われることはちらほらあるが、最近は、どれも断ってた。

それでも、何とかしようとか、自分まで参加しようとか思うのは、この人だからだろうな。

タカ丸さんは、そういう人だ。



「いえいえ、久作も気になる子いたみたいですし。みょうじさんって、タカ丸さんの後輩、ですよね?」

『そうそう。前の美容院のね。素直で、可愛くって良い子だよ〜』

「俺はあんまり喋ってないんですけど、大人しそうな子でしたね。結構若そうでしたけど…」

『なまえちゃんはねぇ、たしか、25歳、だったかな?』

「えっ、若っ!?他の子も…?」

『ううん、他の子は、28、9とか30ちょいとかだよ』

「はー…若いとは思ってましたけど、そこまでとは…」

『三郎次くんたちも、十分若いでしょ〜』

「いや、言っても俺ら、31ですよ?自分の年齢考えてみて下さいよ」

『あ、そっか。35になるんだっけ』

「…タカ丸さん、結婚は?」

『んー…そろそろしたいなぁとは思ってるんだけどねー…』

「…結構良いもんですよ」

『そうだなぁ…センパイのありがたーいお言葉、信じてみようかな?』

「タカ丸さんさえその気になれば、すぐですよ、きっと」

『だと良いんだけどねー。…あ、ごめん、仕事戻らなきゃだ』

「あ、お時間取らせてすみません。また報告しますね」

『いえいえ、久作くんにもよろしく言っといて!じゃあね〜』

「はい、失礼します、」



…結婚、なぁ。

するまでは、めんどくさそうとか、縛られるんじゃないかとか、色々思うこともあったけど。

いざ、してみれば、何てことはない。
今までと、特別変わりゃしないし、楽しくやってる。

家に帰った時、出迎えてくれる相手がいることが幸せなんだって、気付けるくらいには丸くなった、とは思うけど。

だからこそ、タカ丸さんにも、久作にも、早く感じてほしいって思うんだよな。





「三郎次ー」

「お、上がれよ」

「ん。あ、これ、」



響くインターホンに導かれた先には、よく見知った顔があって、安心する。

…やっぱ、俺も、歳とったなぁ。



「…アジ?」

「そ。南蛮漬け。昨日のだけど。三郎次ん家行くって言ったら、持ってけって」

「すげーうまそうじゃん。流石だな。左近、良い嫁さん貰ったよな〜」

「まぁ…。三郎次だってそうだろ」

「まぁな」



お互い、変わんないけど、変わったなぁ。

左近と会うと、よく、そう感じるようになった。

あの左近が、二児の父親だなんて。

あの頃は、想像もつかなかった。



「そうだ、聞けよ左近。久作も、俺らに続くかもだぜ?」

「おっ、めでたいじゃないか。彼女出来たのか」

「いや、まだ。でも、本気っぽい」

「へぇ…うまくいくと良いな。久作なら、大丈夫だろうけど」

「たぶん、な。今回は年下だしな」

「いくつぐらいなんだ?」

「25、だってよ」

「若っ!?」

「左近、お前は人のこと言えないだろ」

「う…まぁ、そうだけど…。でも、良いんじゃないか?年上相手だと、アイツ、頑張り過ぎるから」

「だよなぁ。結婚するもんだと思ってたけど…、何があるか分かんないよな」



実際には、左近が一番に、次に俺が結婚した訳だけど、初めに話が出たのは、久作だった。

…まぁ、色々あって、別れたんだけど。

アイツはたぶん、引きずってないと思うけど、同じようなことにならなければ良いと、切に思う。

やっぱさ、大事なダチだから、幸せになってほしいって思うもんだよな。



「久作も、早く落ち着くと良いな」

「だな」



思うことは、やっぱり同じ。
歳をとるのも悪くないと、感じさせてくれるのも。

実際、自分と左近がこんな感じだし、たぶん、久作も似たような感じだろう。

皆、妻子持ちになったとしても、またすぐ集まるんだろうな。

そんな未来を想像すると、口元がゆるむ。

そんな俺を見て、気持ち悪いと言う左近が、あまりにいつも通りで。
思わず吹き出してしまった。











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H25.6.25
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