「――ねぇ、なまえちゃんはどう思う?」
 
「えっ…と…わた、しは…」




目を開けると、そこは、"私"の生きる今だった。

以前に何度も見ていたような、そんな夢じゃない。

何の変哲もない、昔の、私がもっと幼かった頃の、夢。

何だか、もやがかかる心の内に、やんわり追い討ちをかけるような。


そういえば、そうだった。

たった一人の元彼と別れた時も。

『無理に合わせてくれなくて良い』

それがかえって、しんどいんだって。

そう言われた時、ドキッとした。

好きだったし、一緒にいたかったし、嫌われたくないのも確かだったけど、

思ったことを素直に言えないのは、もっと、それこそもっと小さな、子供の頃からだったのかもしれない。





「―ッ!!」



スマホの画面が光る。

そして震える。

画面には、"能勢さん"の文字。

…どうしよう、とらないと。

だけど、何だか、ぐらぐらと揺らぐ心のままでは、彼と向き合える気がしなくて。

大事な時なのに。
離れてしまいかねないのに。

考えられない。
もう、能勢さんなしの生活なんて、考えたくもない。

どうしても、
どうしても、離したくない。



着信が途切れて、静寂がやけに耳につく。


…何となく、気づいてはいたけど、もう、隠しきれないみたい。

私は、どうしても、彼が良い。

どうして、なんて問われても、どうしても、としか言いようがない。

嫌われたくない、
好きって言ってほしい、
抱きしめて、
キスして、
離さないでいてほしい。

こんな強い想いを抱いていたことに、頬が熱くなるのを感じる。

会いたい。
今すぐにだって、飛んで行きたいくらいに。


ずっと、ずっと逃げてきたけど、彼にだけは、偽りたくない。

初めて出会った日のように、体の芯の部分は燃え上がるのに、その周りは、妙な緊張感で満ちてくる。


だけど、それだけに、怖い。

このまま私は、私たちは、どうなってしまうのか。

血がぎゅっと濃くなって、目元に集まってくるようで、零れ落ちるのをぐっと堪える。


…綺麗な人だった。

きっと、愛嬌があって、お喋りが上手で、…きっと、甘えるのも上手で。

電話がかかってきた時、知り得なかった過去に、少しだけ触れて、ひやりとした。

いけないと分かっていて、会うことを選んでしまった。

彼に、会わせたくなくて。

…どうしても、渡したくなくて。

こんな私、自分でも知らないのに、彼に、見せられる筈がない。

…どうしよう。

それなのに、もう、離す気は、少しもないなんて。


昔の私が見たら、どう思うかな。

彼が、能勢さんが知ったら…、



そっと息を吐いてから、再び震え出したスマホに、ゆっくり手を伸ばした。





そして確信





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H26.2.23
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