「いやいや、それは流石に…」
「え〜、そうかなぁ」
「でも、だったら、何で僕ら呼ばれたんだ?」
「あー、日頃の感謝、とか?」
「それ、逆ならともかく、久作がするのはおかしくないか?」
「そっ…、そんなことない、だろ…」
「間があったねぇ」
「タカ丸さんまで…!」
「悪い、待たせた、」
散々、…って程は待ってないけど、待たせていた張本人が、ご登場だ。
隣に、件の彼女を連れて。
なんとなく、ただの一度会った時の印象と、違って見える。
まぁ、一筋縄ではいかなかった訳だし。
そこは、そっとしておくとして。
「久作、三郎次が文句言ってたぞ」
「なっ、文句は言ってねぇだろ!」
「え、そうだっけ?」
「どんだけ大雑把だよ!」
「斉藤さん、お呼び立てしてすみません」
「ううん、呼んでくれて嬉しかったよ〜。なまえちゃん、久しぶりだね〜」
「あ、お久しぶりです、タカ丸さん」
俺らはほったらかしのまま、和やかに話を進めようとするのが、気に入らないと言えばそうだが、いつも通りで、安心する。
もう、大丈夫そうだな。
心なしか、二人の空気に、花が飛んでるような気もするし。
「あれ、なまえちゃん、それ…」
「あっ、その、」
「それは俺から言う。三郎次、左近も、聞いてくれ――」
「…なんつってさ、あん時は驚いたよなぁ」
「そうか?僕はそんな気がしてたけど」
「なっ、左近、おまっ…!」
「うるさい。起きるだろ」
「あ…、悪い、」
「久作によく似てるよな、この子。目元とか、鼻筋とか」
「俺はもっとなまえに似てほしかったんだけどな」
一歳にも満たない我が子の頭を撫でながら、こんなことを言う久作を、昔の俺は予測出来ただろうか。
きっと、想像するだけで吹き出してただろうな。
変わったと言えば変わったけど、それなりに、相変わらずだ。
「なんか、懐かしいなー…」
「左近トコは二人とも、結構大きいもんな」
「女の子だからか、ませてるよ。二人とも」
「ウチのも、やっぱ女の子はませてる。いつまで風呂入ってくれっかなー…」
「ウチは一緒に入ってるぞ」
「えっ、今いくつ!?」
「えーっと…上が八つで、下が七つ、だったかな」
「パパとは嫌!とか言わねぇの!?」
「あー、言われたことないな。あっちから入ろうって引っ張られるから」
「左近、お前、幸せだな…」
「え、うん。お前らもだろ?」
左近の言葉に、思わず顔を見合わせる。
あぁ、確かにそうだ。
今更何言ってんだ、って顔した左近も、
目を細めて笑う久作も、
顔ぐっしゃぐしゃにして、声を挙げる俺も。
「久作さん、」
「あぁ、悪いな」
「いえ…。川西さん、池田さん、ごゆっくり」
「……なんか、雰囲気変わったな」
「…俺もそう思った」
「母親になったからな。そりゃ変わるよ」
「なんつーか、女はどんどん大人になるけど、男ってあんま変わんないよな」
「確かに…生活もそう変わらないしな」
「久作もきっと、これから頭上がんなくなるぜ」
「三郎次はともかく、久作は大丈夫なんじゃないか?」
「おい左近、」
「いや、そうでもないよ。もうあんまり頭上がんないし」
「えっ、マジ!?」
「意外だな」
「子煩悩って言うか…、アイツも可愛いし」
「惚気かよ…」
「でも、分かる。娘も可愛いけど、やっぱり自分の奥さんが一番可愛いって思う」
「左近…お前まで…」
「三郎次もそうだろ?」
「…そりゃ、まぁ…」
「…あ、悪い、なまえに預けてくる」
「あぁ、お腹空いてるのか」
そんなはっきり、素直に惚気られると、困る。
ウチだって、うまくいってない訳じゃないし、俺の息子も娘も嫁さんも、どこよりも可愛いって思ってるけどさ…。
まぁ、俺たち皆、それなりに色々あったけど、落ち着いたから、こんな風に言い合えるんだよな。
「…久作、良かったよな。一時はどうなることかと思ったけど」
「そうだな。お前の時もヒヤヒヤしたけどな、全然俺らに言わねぇし」
「それはまぁ…うん。悪かったって」
「結果的にうまくいったし、良いけどな」
「三郎次だって、あんまり言わなかっただろ。長かったよなぁ」
「あれは…まぁ、色々あったんだよ」
「…そうだな、」
「久作んトコがもーちょい大きくなったらさ、俺たち家族皆で旅行しようぜ。キャンプでも良いし」
「良いな、それ。ウチは気を付けないとな…僕の不運がうつってきてるから」
「俺らもいるし大丈夫だろ」
「そうだな。…あ、でも、もーちょい先になるかも」
「ん?」
「女の子二人だからさ、やっぱり男の子ほしくて。でも、高齢出産になるからなぁ…」
「まじか!まぁ…大丈夫じゃね?左近の嫁さん、いくつか分かんねぇし」
「それ、今度言ってやって。喜ぶから」
そして、また同じように笑い合うのは、川西家長男誕生を祝う席になるわけだ。
軌跡
***
H26.6.17
お付き合い、ありがとうございました◎
ALICE+